自転車や徒歩で通勤している人は、2型糖尿病などのリスクと関連のある、全身の慢性炎症が軽減されていることを示すデータが報告された。ただし、有意な影響は、少なくとも45分以上の"アクティブな通勤"をしている人に限り観察されたという。東フィンランド大学のSara Allaouat氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Public Health」に12月8日掲載された。
組織のダメージの治癒過程や感染症抑止のための反応として生じる短期間の炎症は、生体にとって正常なものであり欠かせない。しかし、何らかの原因で全身性の異常な炎症が続いている場合、がんや2型糖尿病、心臓病などのさまざまな疾患のリスクが上昇することが知られている。
全身の炎症反応の指標の一つに高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)があるが、このhs-CRPは適度な運動によって低下することが、以前の研究で明らかになっている。しかし、通勤での運動とhs-CRPの関連はよく分かっていない。Allaouat氏らはこの点について、フィンランドの一般住民対象疫学研究(FINRISK)のデータを用いた横断的な解析によって検討した。
解析対象は6,208人の成人(平均年齢44±11歳、女性53.6%、BMI26±4、hs-CRP2.02±4.32mg/L)。通勤を徒歩または自転車で行っている場合を"アクティブな通勤"と定義し、それらによらず自動車や公共交通機関を利用して通勤している群を基準として、hs-CRPの値を比較した。解析に際しては、年齢や性別、喫煙・飲酒習慣、職業上の身体活動量、婚姻状況、教育歴、世帯収入など、結果に影響を及ぼし得る因子を交絡因子として調整した。
解析の結果、アクティブな通勤を毎日45分以上行っている群(全体の7.7%)は、非アクティブな通勤者群(同34.8%)に比べてhs-CRPが有意に低いことが分かった〔-16.8%(95%信頼区間-25.6~-7.0)〕。また、アクティブな通勤時間が15~29分の群(24.9%)もhs-CRPが有意に低値だった〔-7.4%(-14.1~-0.2)〕。一方、アクティブな通勤時間が15分未満の群(20.8%)、および、30~44分の群(11.7%)のhs-CRPは、非アクティブ群と有意差がなかった。
次に、交絡因子としてBMI、心血管疾患や糖尿病の既往、前記以外の生活習慣(余暇時間の身体活動量や野菜・果物・肉・魚の摂取量)、大気汚染レベル、季節性などを追加した解析を施行。アクティブな通勤時間が45分以上の群では、それらのいずれの解析でも、非アクティブな通勤者群との差の有意性は保たれていた。それに対してアクティブな通勤時間が15~29分の群では、それらのいずれの解析でも有意性が消失していた。
なお、性別の解析では、女性についてはアクティブな通勤を毎日45分以上行っている群と非アクティブな通勤者群とで、hs-CRPの群間差がより顕著だった〔−23.1%(−33.6~−10.9)〕。それに対して男性では群間差が非有意となった〔−4.4%(−19.7〜13.8)〕。
Allaouat氏らはこれらの結果に基づき、「アクティブな通勤は公衆衛生上のメリットをもたらす可能性がある。さらに、自家用車やバスを使わずに通勤することは、地球にとって良いことであり、気候変動の緩和につながるのではないか」と述べている。また、女性でのみ有意な結果であったことに関連して、「女性は男性よりも頻繁にアクティブな通勤を行っていることを反映している可能性があり、さらに、そのような女性は余暇時間にも身体活動を積極的に行っていてBMIが低いという傾向が認められた」との考察を付け加えている。
[HealthDay News 2024年1月17日]
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