糖尿病臨床栄養1・2・3

2007年08月10日

食事のエネルギー密度

 食事療法を良好に行うために、“ゆっくり・よく噛む”食行動の実践は大切です。今回はその結果を高める方法として「エネルギー密度」を考えてみました。

食事療法の基本は「ゆっくり・よく噛む」

 “ゆっくり・よく噛む”食べ方は、2型糖尿病の食事療法のポイントの一つで、食行動を修正する方法です。この食事療法は、食後の過血糖の是正と満腹感を得る効果が期待できます。

 “ゆっくり・よく噛む”食事療法の実践では、

  • 料理の盛り付け方
  • 食物の大きさ・硬さなどの形態
  • 食物繊維の量を調整

などがポイントとなります。

摂取総エネルギー量の適正化と食事の「エネルギー密度」

 エネルギー量の適正化には、食品や料理のエネルギー量がどれくらいあるのかを覚えます。これには、よく食べる食品や料理を列挙して予めエネルギー量の確認をして記憶します。次に、エネルギー量の多いものは避けたり、減らしたりすることが求められます。

 同じエネルギー量であったら、どちらを食べたらよいのか“同じエネルギー量なら多いものを選ぶことができる”こんな患者心理とフィットし、“ゆっくり・よく噛む”食行動への実践を容易にしたら、きっと自己効力感も高まるのではないでしょうか。

 “同じエネルギー量なら多いものを選ぶことができる”食品や料理の「エネルギー密度」という尺度を紹介します。

「エネルギー密度」を考えよう

 「エネルギー密度」は、その食品が重量に対してどのくらいのエネルギーをもっているかということです。100kcalの食事であっても、ほんの1かけらにすぎないものもあれば、両手いっぱいになるものもあります。

 肥満者には、嵩(体積)があってもエネルギーが少ないエネルギー密度の低いものを選び、摂取エネルギー量の減少と満腹感を得ることができ、体重の是正を図ることができます。逆に太りたければエネルギー密度が高いものであれば効率よくエネルギー補給が可能となります。

食事例(一品料理を含む)にみるエネルギー密度(kcal/g)

脂肪分が多いと「エネルギー密度」は高くなる

調理法とエネルギー密度の変化

 食品のエネルギー密度は、糖質・たんぱく質・脂質の含有量により決定されます。糖質とたんぱく質はそれぞれ1グラムにつき4kcal、脂質は1グラムにつき9kcalですから脂肪分が多いことでエネルギー密度が高くなります。

 しかし、食品を料理して摂取する食事は、調理法によってもエネルギー密度が変わってきます。つまり、エネルギー密度を低く抑えられる調理法を選択することが必要になります。

 揚げ物料理、カレーライスのように油やルーを使う料理はエネルギー密度を高めます。調理方法は、焼く、蒸す、煮る、炒めるといった方法を上手に組み合わせましょう。

「エネルギー密度」をどのように利用するか

 実践的には、食事全体として考え、1品エネルギー密度の高い料理があったら他の1〜2品の料理は低いものにします。

 このようにして、摂取総エネルギー量の適正化とゆっくり・よく噛む食べ方の実践に、エネルギー密度の概念も活用してみましょう。

[ DM-NET ]

もくじ

  1. 食後の過血糖と食事にかける時間
  2. ソフトドリンクケトーシスとスポーツ飲料
  3. 簡単な食事療法でコントロールできた症例から、
    試みてみたい類似症例像を考える
  4. 患者さんが頻発する質問から
    食事療法の実践法を考える
  5. 患者さんが頻発する質問から
    食事療法の実践法を考える(続) 
  6. 食事のエネルギー密度
  7. チャレンジ!COOKING(1) スパゲッティ
  8. チャレンジ!COOKING(2) ハンバーグ
  9. チャレンジ!COOKING(3) チャーハン

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

Copyright ©1996-2024 soshinsha. 掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
治療や療養についてかかりつけの医師や医療スタッフにご相談ください。

このページの
TOPへ ▲