糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―
facebook
メールマガジン
糖尿病3分間ラーニング
男性医学と泌尿器科専門医の立場から

1. 男の人生の活力と性

熊本 悦明

A. 中高年男性はもっと男らしく生き生きと!

a. はじめに

 多くの男性方は、齢を重ねていくうちに、いつとはなしにまじめに仕事に打ち込み、まさに仕事人間に成り切って頑張るようになっていませんか? 自分が“生き物”であることをすっかり忘れてしまっていて、体調不調に悩んでいても、仕事疲れだから仕方ない、酒でも飲んで気晴らししながら頑張れば、そのうちに何とかなるさ、などと、何となく“生き生きさ”を感じない日々を過ごしておられませんか? どうも男の覇気が感ぜられない!

 ほとんどの中高年の男性方は、全力投球で日々の社会生活に励んでいるうちに、あたかも“立派な衣を身につけたロボット”のような機械人間になってしまっているように見えます。

 たとえ仕事以外の趣味も楽しんでいる方でさえも、何となく文化的になり過ぎていて、“男らしい生き物としての感覚”が抜けてきています。よく「等身大に生きよ」と言われますが、中高年男性は“社会的な背伸び過ぎ”で、“自らが生き物であるという感覚を見失っている人”が少なくありません。日々の社会生活の仕事の上で大層頑張り、頭脳中心人間に成り切ってしまっていて、女性に比べると、生き物としての意識や勢いはかなり見劣りしています。

 もっと生き生きと元気溌剌と暮らしたいものです。

 同年代の女性方のほうが、よりしっかりと女を意識し、生き物らしく暮らしていると言えませんか?

 では男らしい生き方とは何か、ということになります。

b. 性の意味するもの

 人間・生き物、図1のように、生物学的に(神から与えられた?)三つの本能が与えられております。

図1

 個々の人それぞれの生命を維持するために、まず (1) “食本能”があります。そしてもう一つ、その個々人々が厳しい自然の生活環境に対応して生きていくために集まり、群れて生活し、自分たちの種族を維持できるような(2)“群本能・集団形成本能”も与えられているのです。我々人間はそれらの二つの本能を、上手に文化的に修飾して、日々のQOL(生活の質)の糧とし、楽しみつつ暮らしているのです。

 この“群本能・集団形成本能”の存在と意義について、あまり気づかれていないのですが、人とのコミュニケーションをもつことは、生き物にとって極めて重要な基本的な本能なのです。特に定年後の方々などで、社会生活の範囲が急に狭くなり、しばしばこの本能が十分満たされなくなってくるようになります。すると、その孤独感のために心理・情動的なかなり大きな乱れを抱えるようになってくることが少なくありません。

 そこでその両本能を繋がなければ、生き物としては生きていけないわけです。その繋ぎの重要な本能として、生き物として本質的な“性本能”が与えられているのです。その性本能により、男として女として、相手を選び pair couple を創り、最低の生活グループを築いているわけです。その男女の性的な交流の中で、生殖も行われ、次世代を生み育て、“個”を“群・集団”に大きく拡げていき、"生命の伝承"という生き物としての最大の命題をはたしているのです。

 ただこの性本能の意義は、一般的に単に子供を創るだけでのようにも受け取られやすいのですが、もう一つ、couple による最低の生活集団を形成し、前述の基本的な群・集団形成本能の充足することにあり、生き物として高いQOLで暮らすための極めて重要な因子なのです。

 男女の skin ship やコミュニケーションによる生活上の楽しい“展開”こそが、我々人間生活の意義を高める心理的・情動的な安定感を生み出し、最も基本的な生活の要素となっているのです。それにより、我々の人生が文化的にも豊かになり、QOLを高まると言って良いでしょう。人生を楽しむ基本的な生活基盤を形成しているのです。

 生き物にとって、この群・集団形成本能を skin ship により充足することは、まさに体温動物における最も基本的な生存の確認としての意義を持ってくるのです。これは、前述した性の歓びも伴う生殖年代を終えて、定年期を迎えるようになると社会生活環境が狭くなってくるのですが、そのような中高年者にとっても、性は性の喜びというよりは生き物としての生存感覚を満たす、極めて意味深いものになってくるのです。ここに生殖を終えたあとの熟年 couple の生活の意義が注目されてくる理由があるのです。

 どこまで個々の方々が、このことを意識しているかどうかは判りませんが、この“性”とそれによる群本能・集団形成本能の充足こそが、生き物としての本質であり、また基礎的な生き甲斐なのです。

c. 性は人生のゆとりの場

 黄身のない卵がないように、生き甲斐のある生活の中に、広い意味での“性の香り”がないことはないと言えませんか? その性とは、性の喜びの意味よりも、まさに立心偏『』に、『生』きる、『心ある生』の意味の『性』なのです。その性を含めた“食・性・群の三位一体の本能”のしっかりした充足ができると、その脳の視床下部にある本能中枢と隣り合わせに存在する大脳辺縁系にある情動中枢も安定し、生物的表現でいう“情動の心”が満たされてくるのです。それが個々人の人間生活の高いQOLを約束し、またさらに豊かな生活文化を創る根源・活力にもなっていると言っても過言ではありません。

 Couple 形成、すなわち男女の共生を支える愛・愛情と言われるものは、一緒に生活したいと願う心であり、生理学的に言えば群・集団形成本能の終局的欲求と言えるのではないでしょうか? ちょうど図2のように、あらゆる設備が整った家が並んでいても、無味乾燥の町であり、文化都市にはなりません。そのような家々の集まりに加えて図3のような、森・池のある公園や劇場・美術館などが加わり、住民が連れ添ってゆとりを楽しむことができる環境ができてこそ、文化都市が初めて完成するのです。

図2

図3

 人間においても、個々人の身体機能・健康 が一応それなりに元気に管理され、調整されたとしても、人間生活の中身を豊かにしてくれる要素として、ゆとりの場として、最低の群形成・couple 人間的なつながりの存在意義は極めて重いものがあるのです。

 このように、性は異性を求め、性交渉し、単に子を創るためだけのものでなく、個々人を集団・群れへ繋ぐ生物学的本能であり、男として女としての立場に立って最小の集団・群れを創り、心身のコミュニケーションをつける本能でもなければ、意味がないことになります。

 やはり、図4のように具体的な男女のpairとしての心、さらには身体的な skin ship にまで広がらねばならないと言えます。

図4

d. Skin shipとしての性

 Skin ship がいわゆる性生活にまで進められることの重要さは、日ごろの臨床診療中、患者さんとの会話の中で強く感じているところです。ことに、中高年男性にとっての具体的な性生活復活の意義は、若い年代とは違って、まさに“男性の生物としての生存の確認”のようなものではないかとの印象さえもっております。それだけ生物学的性行為が、深層心理に強くかかわっていることが証明されているわけです。女性側の受け取り方とは、やや違った意義があるように思います。

 性的交渉は、その年齢の couple にとって、何も頻回にある必要はなく単に一度でも二度でもよい。そのような生き物としての能力・活力を自ら確認することは、自分はまだそれを維持しているという自信を復活させ、心理的に計り知れない日常生活上の活力となってくるようです。それはまた同時に、群れ本能の満足感が、より生き物としての生存の確認的感覚の充実を与えてくれているのです。それがさらに若いときに経験している性の喜びの復活に繋がれば、より幸せと言えましょう。

 もちろんそれはパートナーとの関係のあることであるので、パートナーの協力が必要ですが、お互いの性的な関係の復活は何となく“生き物復活”のニュアンスとして、その pair の間に再びあたらしい雰囲気が醸しだされてくることを、臨床上少なからず経験しております。

 男性たるもの、何も働き盛りの若い年代ばかりでなく、人生80年代の中高年男性も含めての全年代を通じて、可能な限り、男性が男らしく、生き物としての男の機能維持の意義と必要性を認識すべきではないでしょうか?心身ともに“いくつになっても男と女”でありたいものです。

 生き物としての活力の維持またはそれを復活させることが求められていると言えます。やはり生き物としての食・性・群れの三本能が一応満たされることが、生殖年代を終えても、なお、QOLの基本として必要なのではないかと感じています。

 ただ加齢とともに、その三つの本能の質や求められる内容が少しずつ変貌してくることは否めないことでしょう。しかしそうではあっても、どのような形・レベルであれ、“三位一体”の実現が人間として強く求められていることは、生き物としての宿命とでも言えるかも知れません。

図5

 図5のように、ベットの上に寝ている動かない個体ではなく、行動する人間として、“いくつになっても男と女”として生きることが、生き物としての幸せ、高いQOLを味わえる基本のように感じております。

 長寿化社会になって、中高年者が急増する社会環境の中で、医学が、どこまでその“生き物人間の生物の本能”を満たし、情動を安定させつつ、バランス良く、具体的に支えられるかが、いまや問われていると感じているところです。いくつまでも男らしく生きる(図6)という望みをかなえること、そこに21世紀における新しい医学としての男性活性医学、Medicine for Men's Health の役割があると肝に銘じているところです。

図6

 そのように考えると、生活の中の広い意味での“性”というもの意義は極めて重要であることが理解できます。

 わが国の一般的常識として“高齢者には、性は無用、中性化するのは当然”のように認知されているようですが、それが誤りであることが、説明できると思います まさに何度も言いますが“いくつになっても、男と女”という言葉が人生の真理であると言えないでしょうか?

©熊本 悦明

もくじ

2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した
「NGSP値」で表わされるようになりました。過去の記事はこの変更に未対応の部分があります。

Copyright ©1996-2019 soshinsha. 掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
治療や療養についてかかりつけの医師や医療スタッフにご相談ください。

EDネットクリニック.com
このページの
TOPへ ▲
このコーナーの
TOPへ ▶