高齢者は筋肉量と筋力を維持するために、食事でタンパク質を十分に摂取することが必要との調査結果が発表された。動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランス良く摂ることが重要だという。
毎日の食事でタンパク質を十分に摂取することが重要
筋力は、運動をしないでいると加齢とともに衰える。50歳を過ぎると筋肉量は毎年1~3%ずつ低下する。筋力は毎年1.5%ずつ低下し、60歳を過ぎると低下率は3%に上昇するという。
筋肉量と筋力を喪失すると、運動能力や日常活動能力に影響する。疾病管理予防センター(CDC)によると、65歳以上の高齢者の30%が毎年、転倒しており、打撲、切り傷、ねんざ、脱臼、大腿骨などの骨折などの原因になっている。
筋肉が減少し、関節や筋肉の柔軟性が失われると、ちょっとしたことでバランスを崩しやすく、また転倒時の衝撃も大きくなる。特に高齢者が大腿骨頚部(太ももの付け根)を骨折すると、歩く能力を回復するのに時間がかかり、寝たきりの原因になる。
ハーバード大学医学部などの研究チームは、1971年に開始された3世代にわたる横断コホート研究である「フラミンガム子孫コホート」に参加した平均年齢60歳の男女2,636人を対象に、1998~2001年に数回の調査を行った。参加者のタンパク質の摂取量、足の除脂肪筋肉量、大腿部の筋肉などを測定した。
その結果、足の筋肉量と筋力を維持するために、1日に男性で約85g、女性で約75gのタンパク質が必要であることが判明した。タンパク質の摂取量が多ければ良いわけではなく、総タンパク質および動物性タンパク質をもっとも多く摂取している集団では、足の除脂肪筋肉量が多い傾向があることが分かった。
また、大豆、小麦、豆類などの植物性タンパク質の摂取量が多い集団では、少ない集団に比べ大腿部の筋力が高いことが判明した。植物性タンパク質を摂取することが、足の筋肉の量と質を高めるのに有用である可能性がある。
「足の筋肉の量と質を確保するために、高齢者はタンパク質を適切に摂取することが重要です。食事の改善は比較的容易に行えます。大腿部の筋肉を強めることが、高齢者の生活の質を高めるのに役立ちます」と、ハーバード大学高齢者研究所のシヴァーニ サーヘニー氏は言う。
高齢の人は動物性、植物性を問わず、毎日の食事でタンパク質を十分に摂取することが、足の筋肉を高めるのに必要と、研究者は指摘している。
この研究は、米国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて実施され、医学誌「Journal of Nutrition」オンライン版に発表された。
Eating a Protein-rich Diet Helps Older Adults Preserve Muscle Mass and Strength(ハーバード大学医学部 2015年6月3日)
[ Terahata ]