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2024年04月25日

日本人はやせていても糖尿病に 「肥満」と「やせ」の両方が課題に 「やせることだけが健康的」は誤解

 日本人を含むアジア人は、それほど太っていなくとも、2型糖尿病のリスクが高いことが分かっている。

 糖尿病の人は、太りすぎていても、やせすぎていても、死亡リスクは上昇することが、日本人を対象とした調査で明らかになっている。

 「太りすぎ」と「やせすぎ」の両方がリスクになるという、「栄養不良の二重負荷」への対策も提唱されている。

 「やせることだけが健康的であるというのは一方的な誤解です」と、研究者は指摘している。

糖尿病の人は「太りすぎ」と「やせすぎ」の両方がリスクに

 日本人を含むアジア人は、それほど太っていなくとも、2型糖尿病のリスクが高い場合があることが知られている。

 糖尿病ともに生きる人は、太りすぎや、やせすぎであると、死亡リスクが上昇することが、糖尿病の既往歴のある日本人4,600人以上を約20年間追跡した調査でも明らかになっている。

 これは日本の「JPHC研究」によるもの。JPHC研究は、日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で、国立がん研究センターを中心に実施されている多目的コホート研究。

 研究グループは、調査開始時のBMIにより、参加者を7つのグループに分けて比較した。BMIが23.0~24.9の普通体重の人と比べたときの死亡リスクを算出した。

 その結果、糖尿病の人ではとくに男性で、肥満(BMI 30以上)の人で死亡リスクは1.36倍に上昇した。死亡原因ごとにみると、肥満の人ではがんによる死亡リスクが、BMIが25以上で1.42倍に、30以上で1.66倍に増加した。心疾患による死亡リスクも、BMIが30以上で1.86倍に上昇した。

 一方、やせすぎ(BMI 19未満)の人でも、死亡リスクは1.25倍に上昇することが明らかになった。糖尿病の人では、太りすぎていても、やせすぎていても、死亡リスクは上昇することが明らかになった。

なぜ日本人はやせていても糖尿病になりやすい?

 日本人を含むアジア人は、それほど太っていなくとも、血糖値を下げるインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすいことが知られている。

 順天堂大学の研究では、やせている人は食事量が少なく、運動量も少ないと、筋肉量が低下していたり、筋肉などに脂肪がたまりやすくなっており、血糖値が高くなる場合があることが示されている。

 脂肪は主に中性脂肪として、皮下脂肪や内臓脂肪といった脂肪組織に蓄えられ、空腹時には脂肪をエネルギーとして利用するために、ためられた中性脂肪が分解され、遊離脂肪酸となって放出される。

 一方で、皮下脂肪や内臓脂肪ではなく、それ以外の肝臓や骨格筋などの別の場所(異所)にも蓄積される脂肪もある。そうした脂肪は「異所性脂肪」と呼ばれている。

 異所性脂肪がたまり脂肪肝や脂肪筋になると、肝臓や骨格筋に作用して、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が生じやすいという。

 実際にアジア人では、体格指数(BMI)が25未満で肥満でなくとも、2型糖尿病や脂質異常症などを発症する人が少なくない。その原因として、アジア人は欧米人に比べ、脂肪組織の貯蔵能力が低下している人が多いからだと考えられている。

関連情報

「肥満」だけでなく「やせ」も課題に やせている人は身体活動量が少ない

 BMI(体格指数)は、体重と身長から算出される肥満度をあらわす指数。日本では、BMI 18.5〜25未満は普通体重(適正体重)、BMI 25以上は肥満、18.5未満は低体重(やせ)と判定される。BMIを日頃からチェックすることは、健康を維持するために重要だ。

 「国民健康・栄養調査」によると、BMIが25以上の肥満のある日本人の割合は、男性で33.0%、女性で22.3%に上る。一方で、BMIが18.5未満のやせの人の割合は、男性で3.9%、女性で11.5%となっており、とくに20歳代の女性でやせの割合が20.7%と高い。

 2000年に開始された国民健康づくり運動である「健康日本21」でも、目標のひとつに、肥満だけでなくやせの割合を減らすことを掲げている。

 BMIが低くやせている人のなかには、食事量や身体活動量が少なく、体の代謝が低下している人が多いことが、中国の深圳先進技術研究院や英国のアバディーン大学の調査でも示されている。

 研究グループは、BMIが21.5~25で正常体重の男女173人と、BMIが18.5未満で低体重の男女150人を対象に調査した。

 その結果、低体重の人は正常体重の人に比べ、食事の摂取量が12%少なく、身体活動量も23%少ないことが分かった。低体重の人の多くは、体の代謝も低下していた。

日本人は「過栄養」と「低栄養」の2つの課題を抱えている

 日本栄養士会は、日本人は2つの栄養課題を抱えているとして、「栄養不良の二重負荷」への対策を提言している。「過栄養」だけを問題するのではなく、「低栄養」も課題にするべきだとしている。

 過栄養は、エネルギーや糖質などが過剰している状態のことで、肥満や2型糖尿病などを引き起こす原因になる。逆に低栄養は、エネルギーやタンパク質などが不足した状態であり、心身の活力や筋力が低下する「フレイル」や、免疫力の低下などを引き起こす。

 個人のライフステージをみると、中高年までは肥満や2型糖尿病などを心配していたのに、高齢になると低栄養にかたむき、フレイルのリスクが高くなるといったケースがあるという。

「やせることだけが健康的」というのは誤解

 確かに、2型糖尿病などに対策するため、エネルギーの過剰摂取が内臓脂肪を増やし肥満の原因になるため、「食べ過ぎない」ようにすることは大切だ。

 また、食事では、脂質や糖質のみを制限するなど、栄養素を限定して制限してしまうと、栄養バランスが崩れてしまう。

 しかし、とくに高齢者や女性にとって低体重は、さまざまな健康障害につながる危険性があるので、注意が必要になる。

 日本栄養士会は、「栄養不良の二重負荷」に対策するために、ライフステージに合わせた生活改善が必要としている。

 「65歳以上になったらフレイル対策に重点をおき、やせの人はエネルギーと良質なタンパク質の摂取を増やし、筋力低下がみられる場合には筋トレを含めた運動に取り組み、やせと筋力低下の予防をはかる対策が必要です」としている。

 「メタボ対策とフレイル対策の両方が必要ですが、やせることだけが健康的であるという一方的な誤解が生じてしまっています」としている。

公益社団法人 日本栄養士会
誰一人取り残さない日本の栄養政策~持続可能な社会の実現のために~ (厚生労働省)
誰一人取り残さない日本の栄養政策~持続可能な社会の実現のために~先駆的事例 (厚生労働省)
多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト
Body Mass Index and Mortality Among Middle-Aged Japanese Individuals With Diagnosed Diabetes: The Japan Public Health Center-based Prospective Study (JPHC Study)(Diabetes Research and Clinical Practice 2020年6月)
Higher than predicted resting energy expenditure and lower physical activity in healthy underweight Chinese adults (Cell Metabolism 2022年7月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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