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2018年05月01日

朝型生活で糖尿病リスクが低下 連休の「社会的時差ぼけ」を解消

 土曜日や日曜日、連休にゆっくり休んだはずなのに、勤務日に体がだるいと感じることはないだろうか? それは「社会的時差ぼけ」のせいかもしれない。
 社会的時差ぼけがあり、生活が「夜型」になると、体調不良だけでなく、2型糖尿病や肥満、うつ病などの発症リスクも上昇する。解消するために日常生活で工夫することが大切だ。
週末のたった2日の朝寝坊が体調不良の原因に
 仕事のある平日は定刻に起きていても、休日には遅くまで寝ていると、疲れが思ったようにとれないという経験はないだろうか? 睡眠習慣の乱れによって体内時計が狂い、2型糖尿病や肥満、うつ病などの発症リスクが高まる危険性があるという研究が発表された。

 睡眠や体温、血圧、ホルモン分泌など体の基本的な機能はおよそ24時間のリズムを示す。この1日周期のリズムは「概日リズム」と呼ばれる。概日リズムを調整している「体内時計」は、生活習慣から大きな影響を受けている。

 不規則な生活などが原因で、体内時計と生活時間との間にずれが生じるのが「社会的時差ぼけ」(ソーシャル ジェットラグ)だ。

 平日は規則正しい生活をおくっていても、週末に夜更かしや朝寝坊をして就床時刻や起床時刻がずれると、それをきっかけに体内時計が乱れ、時差ボケのような症状が起こることがある。これが「社会的時差ぼけ」だ。週末だけの生活リズムの乱れと軽く考えがちだが、体への影響は決して少なくない。
生活が「夜型」になると糖尿病リスクが上昇
 生活が「朝型」の人は、「夜型」の人に比べ、健康状態が良い傾向があることが、英国人を対象とした研究で確かめられている。ノースウェスタン大学の研究チームは、約43万人の英国人を対象に6年半にわたり追跡して調査した。

 生活が夜型の人は朝型の人に比べ、死亡リスクが10%高く、糖尿病のリスクは1.3倍に、うつ病などの精神疾患のリスクが1.9倍にそれぞれ上昇した。生活が夜型になることで社会的時差ぼけが生じ、体内時計のリズムが乱れることが影響すると考えられている。
社会的時差ぼけはインスリンの効きを悪くする
 ピッツバーグ大学の研究チームは、自宅外で週25時間以上働く30〜54歳(平均年齢42.7歳)の男女447人を対象に実験を行った。参加者に腕時計型の活動量計を1日中身に付けてもらい、睡眠時間と活動時間を記録し、運動や食生活に関するアンケートにも回答してもらった。

 その結果、参加者のほとんど(85%)は、平日より休日の睡眠時間が長かった。平日と休日で睡眠時間の差が大きい人では、体格指数(BMI)が高く、ウエスト周囲径が大きく、コレステロール値も高い傾向がみられた。

 さらに糖尿病予備群と判定された人も多かった。血糖を下げるインスリンの空腹時の値が高く、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が起きている人の割合が高かった。
週末に朝寝坊をする子供は健康が損なわれやすい
 過去の研究では、社会的時差ぼけによって昼間の眠気が起こり、頭の働きの低下や抑うつを増やし、仕事のパフォーマンスも低下することが報告されている。「現代人の働き方が睡眠や健康にどういった影響を及ぼすのかを、社会全体で考える必要があります」と、ピッツバーグ大学心理学部のパトリシア ウォン氏は言う。

 社会的時差ぼけの問題は、大人だけに限ったことではない。日本で小学校5年生から高等学校3年生まで2万人を対象に行われた研究で、夜型で週末に朝寝坊をする生活パターンよって健康が損なわれやすいことが判明した。

 研究チームは、子供の睡眠や食事などの生活習慣、心身の症状などについて答えてもらい、生活パターンとの相関を調べた。子供の生活パターンを「夜型」「やや夜型」「早寝早起き」「週末朝寝坊」に分類した。

 もっとも健康的なのは「早寝早起き」の子供で、「夜型」の子供では体調不良、かぜの引きやすさ朝の不機嫌さなどの不調の度合いが大きかった。

 さらに、週末に朝寝坊をする子供は、平日は早寝早起きの生活をおくっているにもかかわらず、体の不調の程度が「やや夜型」の子供よりも高いことが判明した。
社会的時差ぼけを防ぐための5ヵ条
 社会的時差ぼけを防ぐために、概日リズム(体内時計)に狂いが生じないように生活スタイルを工夫することが必要だ。

 ピッツバーグ大学医学部によると、次のことを実行すると体内時計のずれを解消しやすいという――

1 快眠はまずは規則正しい生活から

 規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻にベッドに入ることが必要だ。

2 夜遅い時間に食事しない

 体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2〜3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられる。

3 適度な運動が良い睡眠をもたらす

 日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。1日30分のウォーキングなどの運動を続けよう。運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、2型糖尿病や肥満の対策・予防にもつながる。

4 入浴して深部体温を上げる

 寝る少し前に体の奥の体温である「深部体温」をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。入浴には加温効果があり、運動と同じように体温を一時的に上げる。就寝1〜2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。

5 光で体内時計を整える

 朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。

 反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。照度が100〜200ルクスの家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。

 スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するので特に影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしよう。

Associations between chronotype, morbidity and mortality in the UK Biobank cohort(Chronobiology International 2018年4月11日)
Weekday Sleep Changes May Raise Risk of Diabetes, Heart Disease(米国内分泌学会 2015年11月18日)
Social Jetlag, Chronotype, and Cardiometabolic Risk(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2015年12月1日)
睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査(文部科学省 2015年4月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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