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2017年04月19日
ウォーキングで街づくり 1500歩増えると医療費が3.5万円減少
国土交通省都市局は、「日常生活における歩行量(歩数)」に着目したガイドイランを策定した。
歩数を増やすことで健康増進の効果を得られことから、地方公共団体が立地適正化計画を策定する際に、歩いて暮らせるまちづくりを促すのが狙いだ。
研究・報告をもとに、歩行による医療費抑制の効果も算出した。
歩数を増やすことで健康増進の効果を得られことから、地方公共団体が立地適正化計画を策定する際に、歩いて暮らせるまちづくりを促すのが狙いだ。
研究・報告をもとに、歩行による医療費抑制の効果も算出した。
歩いて日常生活をおくれる
「コンパクトシティ」を推進
国土交通省都市局は、「まちづくりにおける健康増進効果を把握するための歩数調査のガイドライン」を策定した。地方公共団体で、健康増進効果に着目した立地適正化計画などの策定に活用してもらうことを目的としている。
ウォーキングは健康づくりの基本となる。歩くことで身体活動量を維持でき、健康増進の効果を得られることがさまざまな研究で示されており、医療費の抑制にもつながると報告されている。
ガイドイランでははじめに、国交省が2014年に策定した「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」で掲げたコンパクトシティ形成の施策にふれている。
コンパクトシティの形成に取組む目的のひとつに、都市機能や居住を計画的に誘導し、公共交通の利用環境を高め、「自動車」に必ずしも依存することなく、「歩く」ことを基本とした日常生活がおくれる都市構造への転換を目指すことが挙げられる。
このような都市構造は、コミュニティ活動にも適しており、地域における医療機関の連携体制の構築や地域包括ケアシステムの構築、地域における見守りや支え合いといった、自助・共助のまちづくりの力を高めることにも資するもので、高齢者はもとより、子育て世代など多様な世代が安心して暮らすことを可能にする。
「コンパクトシティ」を推進
ウォーキングは確実な健康増進効果をもたらす
2013年国民健康・栄養調査による歩数の平均値は、男性7,099歩、女性6,249歩だった。歩数の平均値は、男女ともに2008年以降は、ほぼ横ばいで推移している。健康日本21(第2次)では、20~50歳代の男性の歩数の目標を9,000歩と定めているが、これを達成している割合は34.3%となっている。
歩数を1日1,500歩増やすと、運動時間を約15分間増やすことができ、エネルギーを体重70kgの男性で50~70kcal、60kgの女性で45~60kcal、それぞれ消費できる。1年間継続すると食事の量(エネルギー摂取量)を変化させずに2.0~3.5kgの減量が可能になる。
「歩く」ことの心身に及ぼす影響はさまざまで、気分転換やストレス発散などのリラックス効果や、脳や免疫機能の活性化、体脂肪の低下や代謝の向上などのメタボ予防効果などがあることは多くの研究で報告されている。
1日1,500歩多く歩くと、年間医療費を3万5,000円減らせる
ガイドイランでは、ウォーキングによる健康増進効果を「見える化」するため、これまでの研究・報告をもとに、1日1歩あたりの医療費抑制効果を0.065~0.072円とした。1,500歩多く歩くことで、1人あたり年間約3万5,000円の医療費を抑制できるという。
宮城県大崎保健所管内での研究では、40~79歳の国民健康保険の加入者2万7,000人を対象に4年間の追跡調査が行われた。それによると、1ヵ月の平均医療費は、歩行時間が30分以下のグループでは2万100円だったのに対して、30分から1時間のウォーキングをしたグループでは1万9,400円、1時間のウォーキングをしたグループは1万7,500円となり、歩行時間が長いほど医療費が低く抑制されていた。
新潟県見附市での研究では、健康運動教室に参加している平均年齢70.2歳の145人をと、参加していない435人を対象に、4年間の追跡調査が行われた。1人あたり年間医療費は、4年目には運動群35万6,815円、対照群42万5,485円と有意な差がみられ、運動をすることで医療費が抑制されることが示された。
糖尿病を対象とした研究では、歩行による健康効果について定量的に評価した。主要な状態を「正常+境界型」「糖尿病」「透析」「死亡」とし、それぞれ状態において発症するイベントとして「心筋梗塞」と「脳卒中」と設定、各状態間の遷移確率およびイベントの発症確率を調査した。
このモデルにより、中年期の1,000人の集団をシミュレーションしたところ、現状より歩数が3,000歩増えることで、10年間の医療費が1,560万円、5,000歩ならば2,500万円減少し、これに死亡率を考慮して1歩あたりの医療費抑制効果を算出すると0.00146円となることが示された。
都市規模が小さいほど歩かない人が増える
ウォーキングが体に良いことは明らかだが、続けるためにはウォーキングに適した住環境が必要となる。国交省が生活に必要なさまざまな機能が近接した効率的で持続可能な都市であるコンパクトシティを推奨するのは、それがウォーキングをしやすい環境だからだ。
都市規模が大きくなるほど歩数が大きくなる傾向がみられる。年齢階層や性別の違いに着目して、都市規模別に集計したところ、年齢階層や性別に関わらず都市規模が大きくなるほど歩数が大きくなる傾向が示された。
都市規模別に歩数をみると、人口5万人未満の市では大都市(23区含む)に比べて15%以上も歩数が少なく、その分布を比較すると、都市規模が小さいほど歩かない人の層が厚くなっていることが分かった。
これは公共交通網の充実などの都市構造が日常生活の歩行行動に影響を与えていることを示している。
歩数の中央値を引き上げるという観点では、歩数の少ない層をいかに底上げするかがポイントとなる。これは公衆衛生分野で言われている「健康づくり無関心層を含む地域全体へのポピュレーションアプローチ」が必要であるとの指摘につながる。
歩数の調査手法には長所・短所がある
ウォーキングによる医療費抑制効果を把握するためには、都市全体の日常生活における歩数を簡便かつ低コストに調査する手法が求められる。
ガイドイランでは、多様な歩数調査手法の長所・短所をまとめた上で、市政アンケートなどを活用して、1日の歩行時間を質問項目に盛り込んだアンケート調査を推奨している。
たとえば、歩数計と行動日誌による調査は、歩数や歩行時間をかなり正確に把握できるというメリットがあるが、歩数計を装着し、行動日誌を記入してもらう必要があり、被験者の負担が大きく、大規模な調査が難しいというデメリットもある。
岐阜市と高石市では2015年に、歩数計と合わせてスマートフォンの歩数計アプリによる歩数調査を行った。外出日の総歩数の中央値は7,000歩で、外出しない日の歩数は1,717歩と、日によって差が大きいことが示された。
日本の公衆衛生分野で一般的に用いられているのは、身体活動量として歩行時間を把握するアンケート調査だ。運動習慣や歩行時間の把握について統一調査票によって行う調査で、比較的簡易に歩行時間を把握することができるが、時間から歩数への換算誤差がある。
ガイドイランでは、それぞれ調査には特徴があるので、目的に応じて使い分けること、必要に応じて組み合わせることが必要となると指摘している。
健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン(国土交通省 2014年8月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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