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2016年08月01日
カロリー制限はやはり体に良い 慢性炎症を防ぎ若く保てることが判明
「どうしたら健康に長生きできるのか?」と多くの人が悩んでいる。新たな研究で、健康に齢を重ねるための秘訣は「10~20%の適度なカロリー制限」をすることだと確かめられた。「カロリー制限をすることで、全身で起こる慢性炎症を抑えられる」という。
慢性炎症が老化を早める 肥満が慢性炎症の原因に
炎症というと一般に、傷や感染などで患部が赤くなったり、腫れたり、痛くなったり、熱をもつことがイメージされるが、それらは急性の炎症だ。これに対して慢性炎症は、自覚症状がないまま全身で徐々に進行し、さまざまな病気を引き起こす。
肥満は慢性炎症の原因となる。内臓脂肪が蓄積すると、内臓脂肪から「TNF-α」「レプチン」「IL-6」といった炎症を引き起こす物質が分泌されるようになる。そうした物質が血管、心臓、肝臓、腎臓などに運ばれると動脈硬化を起こし、心筋梗塞や腎臓病などを発症しやすくなる。
慢性炎症は糖尿病や高血圧にも影響する。炎症物質が多く分泌されるようになると、免疫の働きも低下する。最近では慢性炎症はがんやアルツハイマー病にも関係していると考えられている。
「食事で適度なカロリー制限をすることで、肥満を解消でき、体のコンディションを良好にするだけでなく、慢性炎症も抑えられることが確かめられました。齢をとっても健康でいるために、カロリー制限は必要です。医師や管理栄養士、保健師の指導があれば、食事の摂取カロリーを10~15%減らすことは難しくありません」と、米国のタフツ大学の人間・栄養・加齢研究センターのディレクターであるシミン ニクベン メイドニー氏は言う。
カロリー制限をすると慢性炎症のマーカーが減少
研究に参加したのは平均年齢が38歳で、体格指数(BMI)は25で標準体重と判定された男女220人。タフツ大学の研究チームは、参加者を2つのグループに分け、片方には食事で25%のカロリー制限を行い、もう片方にはふだん通りの食事を続けてもらった。
カロリー制限をするグループは、ビタミンやミネラルを過不足なく摂取するよう調整し、食事の量が減っても苦にならないように満足感を得やすい食事をとってもらった。カロリー制限をしないグループはビタミンやミネラルのサプリメントを服用した。
研究チームは12ヵ月後と24ヵ月後に採血検査を行い、「C反応性蛋白」「TNF-α」「レプチン」といった慢性炎症に関わるマーカーを測定した。カロリー制限をしたグループでは、これらのマーカーとなる物質が減少することが確かめられた。カロリー制限をしたグループでは、インフルエンザなどのワクチン接種後に発熱などの副反応が起こりにくいことも判明した。
研究チームが昨年発表した研究では、カロリー制限をすることで、内臓脂肪の蓄積が減り、血圧値やコレステロール値が低下し、心臓病のリスクも低下することが示された。カロリー制限をしていても、適度や運動をしていれば筋肉量が減ることはなく、安静時のエネルギー消費量が低下することはないという。
「糖尿病や高血圧などは、遺伝的な要因が影響して老化に伴い発症が増えていきます。体の老化を防ぎ、特に血管を若々しくたもつために、慢性炎症を防ぐのは効果的である可能性があります。食べ過ぎを防ぎ、ウォーキングなどの適度な運動を習慣として続けることが、健康的に齢を重ねるために必要です」と、メイドニー氏は述べている。
慢性炎症を抑えれば100歳を超えても若々しくいられる
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターなどの研究チームが100歳以上の高齢者を対象に行った研究でも、炎症の程度が低いほど寿命が長いことが明らかになった。炎症の程度の違いで生存率に差が生じ、炎症の程度が低いほうが長生きするだけでなく、日常生活の自立度が高く、認知機能も良い状態を保てるという。
ただし、過度のカロリー制限は栄養不良を引き起こす原因になる。毎日の食事で、炭水化物やタンパク質、脂肪を過不足なく摂取することが必要だ。「カロリー制限を始める前に、医師と管理栄養士に相談し、体に必要な栄養素について教えてもらうことをお勧めします」と、研究者は指摘している。
Moderately reducing calories in non-obese people reduces inflammation(タフツ大学 2016年7月14日)Long-term moderate calorie restriction inhibits inflammation without impairing cell-mediated immunity: a randomized controlled trial in non-obese humans(Aging 2016年7月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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