ニュース
2015年03月24日
40歳時の体力低下が20年後の脳の老化を加速 「若い頃から運動を」
- キーワード
- 運動療法
40歳の時点で体力が低下している人は、60歳を過ぎると脳の老化が加速するおそれがあることが、米ボストン大学の研究で判明した。「若い頃から運動をすることが、脳の健康を保つために必要です」と研究者はアドバイスしている。
脳の老化は40歳代から始まっている
40歳代の時点で運動をする習慣をもたず、体力が低下していると、60歳を過ぎてから脳の容積が減少し、認知機能も低下しやすいという調査結果を、米ボストン大学が米国心臓学会(AHA)の会議で発表した。
「多くの人は年齢を重ねるまで、自分の脳の健康について気にかけない傾向がありますが、実は脳の老化は40歳代から始まっていることが、今回の調査で明らかなりました。若い頃から対策をする必要があります」と、ボストン大学医学大学院のニコール スパルターノ氏は言う。
研究チームは、米国で1970年代から行われている心血管系疾患リスクに関する研究である「フラミンガム子孫研究」に参加した1,271人の男女を対象に調査した。
参加者は、調査開始時点での平均年齢は41歳で、心臓病や認知症を発症していなかった。ウォーキングマシンで負荷の少ない遅めのウォーキングを行い、血圧値と脈拍数をはかった。
さらに、1999年に脳の磁気共鳴断層(MRI)検査を行った。参加者の平均年齢は59歳になっていた。
その結果、40歳代に受けた運動テストで、心拍数、拡張期血圧(最低血圧)が大幅に上昇していた、つまり体力のない人たちは、体力のある人たちに比べて、約20年後に大脳の容積が減少していることが分かった。
また、40歳代に運動テストの評価が低かった人は、記憶力や判断力をみる認知機能テストの成績も良くないことが判明した。
若い頃の体力低下が脳の老化を加速
具体的には、低負荷のウォーキングを行い、最低血圧が11.1mmHg上昇し、1分間の心拍数が10回増えるごとに、脳の年齢は0.5歳上昇する計算になるという。
「血圧の変動により高い負荷が加わると、脳の細い血管は損傷を受けやすいのです。血管のダメージは脳に構造的な変化をもたらし、認知機能にも影響します」と、スパルターノ氏は説明する。
今回の研究は、若い頃からの運動の継続が重要であることを裏付ける結果になった。40歳の頃にウォーキングをすると血圧値と脈拍数が上昇しやすいという人は注意が必要だ。
「運動を習慣として続けていれば、血圧値と脈拍数は上昇しにくくなります。運動をすることは、脳の健康にとっても良いことなのです」と、スパルターノ氏は述べている。
「60歳の時点で体力が低下していて、血圧値と脈拍数が上昇しやすい人は、さらに10年後に認知症を発症しやすい可能性があります。今後の研究で確かめる必要があります」としている。
Being Fit At 40 May Keep Brain Sharp At 60, BUSM Study(ボストン大学 2015年3月10日)Relations of Midlife Exercise Blood Pressure, Heart Rate and Fitness to Late Life Brain Structure and Function(米国心臓学会 2015年3月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
運動療法の関連記事
- 糖尿病の人のメンタルヘルスを改善 手軽にできる3つのストレス解消法 心と体をケア
- 夕方から夜のウォーキングが血糖値を下げる 糖尿病や肥満のある人に運動がおすすめ 睡眠も改善
- 暑い夏の水分補給 甘い飲み物を水に置き換えると糖尿病リスクは低下 食事改善にも役立つ「上手な水の飲み方」
- スマホで写真を撮ると食事改善がうまくいく 糖尿病の治療に活用 食事の振り返りができる
- 掃除や買い物などの家事も立派な運動? わずか20分の活動が糖尿病を改善 「座っている時間」を中断して体を動かす習慣を
- 楽しく歩きつづけるための「足のトリセツ検定」をスタート 糖尿病の人にとっても「足の健康」は大切
- 日本人がどれだけ運動・身体活動をしているかを調査 若年・中年・女性は運動不足が多い
- 糖尿病の人は細切れ時間に運動を 階段の上り下りが心筋梗塞や脳卒中のリスクを低下 エレベーターは寿命を短くする
- 糖尿病の人は「フレイル」のリスクが高い タンパク質を食べ筋肉を増やし対策 3つの質問でリスクが分かる
- 自然豊かな環境で運動すると糖尿病やうつ病のリスクが減少 緑の環境が運動を楽しくする