ニュース
2013年11月01日
アディポネクチン受容体を強める内服薬を発見 日本発の新薬開発へ
肥満や2型糖尿病を改善するホルモンの働きを活発にする物質を、東京大学病院の門脇孝教授(糖尿病・代謝内科)らの研究チームが発見した。科学誌「ネイチャー」電子版に10月31日付で発表した。
アディポロンが血糖値を下げ、インスリン抵抗性を改善
東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授、山内敏正講師らの研究グループは、運動ができない場合でも、肥満が土台となるメタボリックシンドロームや2型糖尿病を効果的に治療する内服薬の候補物質を、マウスを用いた実験により発見することに成功した。
研究チームは、運動不足などから肥満になった人や、2型糖尿病の人では、脂肪細胞から分泌される善玉ホルモンである「アディポネクチン」が低下することを、過去の研究で突き止めていた。
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンで、インスリン感受性の亢進、動脈硬化の抑制、抗炎症の抑制などの作用がある。脂肪細胞が肥大化すると分泌量が少なくなるので、肥満から引き起こされるインスリン抵抗性に関わる因子として注目されている。
アディポネクチンの作用を細胞内に伝える分子である「アディポネクチン受容体」の作用を強めることが新たな治療法となり、肥満や2型糖尿病の人でみられる寿命の短縮を改善させられる可能性がある。
この点に着目した研究グループは、東大の化合物ライブラリーなどに蓄積された614万種類の化合物の中から、アディポネクチン受容体を活性化する「アディポロン(AdipoRon)」(アディポネクチン受容体活性化低分子化合物)を発見した。

A small-molecule AdipoR agonist for type 2 diabetes and short life in obesity(Nature 2013年10月30日) 関連情報
運動・食事に取組むと善玉のコレステロールとアディポネクチンが増える
「アディポネクチン」が運動と同じ効果をもたらす 東大チームが解明
コーヒーが2型糖尿病発症リスクを低減 最新のエビデンスを検証
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
医療の進歩の関連記事
- 世界初の週1回投与の持効型溶解インスリン製剤 注射回数を減らし糖尿病患者の負担を軽減
- 腎不全の患者さんを透析から解放 腎臓の新しい移植医療が成功 「異種移植」とは?
- 【1型糖尿病の最新情報】幹細胞由来の膵島細胞を移植する治療法の開発 危険な低血糖を防ぐ新しい方法も
- 糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬が腎臓病のリスクを大幅に低下 認知症も減少
- JADEC(日本糖尿病協会)の活動 「さかえ」がWebページで閲覧できるなど「最新のお知らせ」からご紹介
- 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も
- 「スマートインスリン」の開発が前進 血糖値が高いときだけ作用する新タイプのインスリン製剤 1型糖尿病の負担を軽減
- 糖尿病の医療はここまで進歩している 合併症を予防するための戦略が必要 糖尿病の最新情報
- 【1型糖尿病の最新情報】1型糖尿病を根治する新しい治療法の開発 幹細胞由来の膵島細胞を移植
- 【1型糖尿病の最新情報】1型糖尿病の人の寿命は延びている 精神的負担を軽減し血糖管理を改善 針を使わずにインスリンを投与