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2012年09月06日

糖尿病予防 効果的な運動は筋力トレーニング

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運動療法
 運動や身体活動を続けると糖尿病の発症を予防できたり進展を抑制できることは広く知られている。しかし、実際にどれだけ運動すればよいのか、また具体的にどんな運動をすればよいのかはよくわかっていない。そこで米ハーバード大学の研究チームが、大規模研究のデータをもとに、筋力トレーニングが効果的であることを解明した。週150分の筋力トレーニングだけで、糖尿病リスクは34%も低減するという。
筋力トレーニングだけで糖尿病リスク34%減
 米ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員のAnders Grontved氏らの研究チームは、男性医療従事者(40〜75歳)およそ5万人を対象とした追跡研究のデータから、1986年の登録時から1990年までに糖尿病、がん、心筋梗塞、脳卒中などにかかったことがない3万2,002人を対象に調査した。

 1週間あたりの筋力トレーニング量および歩行や水泳などの有酸素運動量を1990年から2008年まで解析した。18年にわたって追跡したところ、2,278人が糖尿病を発症した。

 解析した結果、日常的に筋力トレーニングを行う群ではそうでない群に比べ、2型糖尿病発症リスクが34%低下することがわかった。筋力トレーニングは有酸素運動とは独立した2型糖尿病予防の因子になっていた。

 運動量別にみると、週150分以上の筋力トレーニングを行う群では2型糖尿病発症リスクは34%、60〜149分間行う群では同25%それぞれ低下し、運動時間の増えるほど減っていった。

 筋力トレーニング量が週に59分未満と少ない群でもリスクは12%低下しており、少ない運動量でも効果が得られることが明らかになった。また、筋トレをする時間が1週間当たり60分増えるごとに、糖尿病発症リスクは13%減少することもわかった。

 一方、有酸素運動を週に59分未満行う群では2型糖尿病のリスク低下は7%だった。60〜149分間の群では31%、150分以上の群では52%のリスク低下となっていた。

 「これまで2型糖尿病予防には有酸素運動が重要とされてきた。しかし、いきなり有酸素運動をはじめるのに難しいという人は多く、継続するのも困難だ。しかし今回の研究で、2型糖尿病を予防するためには、筋力トレーニングは有酸素運動の代替手段になりうることがわかった」とGrontved氏は説明する。

 ウォーキング、ランニング、ジョギング、サイクリング、水泳、テニス、体操などの有酸素運動も効果的だ。有酸素運動でも同様の検討を行ったところ、運動時間が週59分未満のグループで7%減、60〜149分で31%減、150分以上では52%減と、筋トレ以上の効果が認められた。

 ハーバード大学教授のFrank Hu氏(栄養・疫学)もまた、「適度の筋力トレーニングは糖尿病リスクを低減することがあきらかになった。トレーニングによる筋肉量の増加と、インスリン感受性の改善によって得られる効果だろう」と説明する。

 有酸素運動と筋力トレーニングをそれぞれ週に150分以上行った群では2型糖尿病発症リスクが59%低下していたことから、同氏は「こうした筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせるともっとも効果的だ」と強調している。

Weight Training Associated With Reduced Risk of Type 2 Diabetes(ハーバード大学 2012年8月6日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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