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2012年04月20日
足の血管再生を大幅に高める技術 下肢切断危機の患者に希望
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大阪市立大学大学院医学研究科の福本真也 講師らの研究グループは、注射針で細胞といっしょに筋肉注射できるタイプの細胞足場粒子を開発したことを発表した。末梢動脈疾患の患者に対して行われる血管新生療法の効果を高めるほか、治療法としての応用範囲の拡大も期待できるという。同成果は、4月19日発行の米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気で、手足にさまざまな障害があらわれる。 日本の患者数は、無症候のものを含めると100万人以上いると推定されており、中でも下肢切断の危機に瀕している重症下肢虚血の患者は10万〜20万人と言われている。高齢者に多い疾患で、主な原因は糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病だ。 末梢動脈疾患患者に対する治療法としては、患者本人から採取した骨髄幹細胞などを患部に注射して移植する血管新生療法がある。しかしこの治療法は、特に糖尿病患者や透析患者では有効性が低下し、十分な治療効果を発揮しているとはいえないという。移植した細胞が移植した場所からすぐに拡散してしまい、移植2日後には30%未満の細胞しかとどまっていないことが原因と考えられている。 福本講師らが開発したのは、細胞を接着できる直径50〜100マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の細胞足場粒子(ナノスキャフォールド)。細胞と混ぜて筋肉注射すると、注射した部分に細胞をとどめ、治療効果を高める。 超微細な粒子を扱うナノテクノロジーによって、生物分解性高分子に医療用研磨剤や充填剤に使われる「ハイドロキシアパタイト」という素材を均一にコーティングする。ハイドロキシアパタイトは、歯科分野で骨や歯の成分として使われており、良好な細胞接着性および組織親和性をもっている。 この粒子を移植細胞とともに筋肉注射を行うと、粒子は細胞足場(スキャフォールド)として、細胞の表面に結合しておもしのような役割を果たし、移植細胞を局所に生きたまま長期間維持することができる。この結果、血管新生効果が約7倍高まり、救肢効果は約4倍となることが判明した。 研究グループでは、平成25年までに前臨床試験を行い製造技術を確立し、平成27年から臨床試験を開始する計画。福本講師は「これまでよりもずっと多くの患者が足を切断せずに済む可能性がある。実用化を急ぎたい」と話している。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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