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2008年09月12日

地中海諸国で「地中海料理」離れ 日本食は海外で人気

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食事療法

 「もっとも健康的な食生活」と評された地中海料理の本場で、肥満が急増している。一方で欧米では、日本料理の人気が高まっている。

 この40年間に伝統的な食生活が減り、短時間で作れ食べられる手軽なファーストフードの利用が増えた。日本だけでなく世界中で食生活が変化している。
地中海料理の本場でも食事が変化
 新鮮な野菜や果物、オリーブ油やナッツ類などをふんだんに使う「地中海料理」が好まれていた地中海地域で、食生活が変化し、脂肪、塩分、糖分の多い食品の摂取が増えていることが、国連の食糧農業機関(FAO)が発表した報告書であきらかになった

 地中海料理はギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインなどの地中海諸国で発達した、飽和脂肪酸の豊富なオリーブ油やナッツ類、野菜、果物をたくさんとるスタイルの食事。地中海地域で心疾患の死亡率が少ないのは、こうした伝統的な食習慣がいかされているからだと考えられてきた。

 しかし報告書では、南ヨーロッパや北アフリカ、地中海沿岸の食生活がこの45年で変わってきていると指摘。所得が増え、南欧、北アフリカ、地中海沿岸の諸国で肉製品や高脂肪食品の摂取が増加し、エネルギー摂取量も増えているという。

 2002年までの40年間に、欧州15ヵ国の1日のエネルギー摂取量は2960kcalから3340kcalに増えた。特にギリシア、イタリア、スペイン、ポルトガル、キプロス、マルタでは、食べすぎが増えた結果、肥満の割合が高くなっている。これらの国の肥満の割合は人口の半分以上だという。

 例えば、ギリシアではエネルギー摂取が増えた一方で消費エネルギーは減っており、肥満指数(BMI)はEU加盟国でもっとも高く、肥満や過体重も急速に増えている。全人口に占める肥満の割合は4人中3人に上る。

 肥満は高血圧や2型糖尿病につながる。かつては世界中で「もっとも健康的な食事スタイル」と評されていたこれらの地域は、いまや健康不安を呈するようになっている。

 調査では、ほとんどのEU加盟国は、「脂肪からのエネルギー摂取を1日のエネルギー摂取量の30%内にとどめる」というFAOや世界保健機関(WHO)の推奨に適合していないことが示された。

 スペインでは、40年前は脂肪からのエネルギー摂取が25%程度だったが、現在は40%に増え、もっとも劇的に変化した国として挙げられている。

 FAOはこうした食生活の変化の要因として、ファーストフードやレストラン、スーパーに行く機会が増えたことや、仕事をもつ女性が増え、家庭での食事が減り外食が増えたこと、運動をしなくなったことなどを挙げている。

日本食は世界中で脚光を浴びている
     日本人の供給純食料(1人1日当たり)
農林水産省「食料需給表」より
供給純食料は、国民に供給され消費に直接利用できる食料をいう。1人1日当たりの供給純食料は、供給純食料(1年)を総人口と日数で割った数値。
 一方で、日本食は健康的な食生活スタイルとして、海外での関心を集めている。

 米国では、20年ほど前から心疾患など動脈硬化と関連の深い病気が急増した。危機感をつのらせた米国では、食生活に関する見直しが行われ、「もっとも好ましいのは日本型食生活」とする報告も発表された

 現在では「寿司バー」などに代表される日本食は米国では一般化している。伝統的な日本食が健康食として注目されたのは、摂取エネルギーの50%から60%を炭水化物からとり、エネルギー配分を行いやすい点だ。

 欧米では、肉類の脂肪の摂取が多いので、血中脂質が高くなり動脈硬化を招きやすい。また、パンやパスタなどは米と同じ穀類からつくられるが、穀類を粉にして調理した加工食品なので、バターや油で味付けを加え、食卓の主役は肉類になりやすい。

 日本型食事はご飯(米)を主食として中心にすえ、主菜、副菜の三本柱で構成される。主食のご飯には味がついていないので、どんな食材とも合うという利点がある。米を中心にさまざまな食材を摂取するのでエネルギーや栄養バランスの調整をしやすい

 その他にも、大豆など植物性蛋白質を摂取できる食品が多い、魚介や根菜類を常食にしている、海藻やキノコ類をよく食べるといった、欧米には見られない特徴が日本人の食生活にはある。

 しかし皮肉なことに、日本では1960年代頃から主食である米や大豆、みその消費が減り、肉類や小麦などが好まれるようになった。食生活が欧米式に変化するにつれ、肥満や2型糖尿病も増えている。

食糧農業機関(FAO):地中海諸国で地中海料理が避けられ過体重が増加(英語)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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