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2005年08月26日

メタボリックシンドロームを重視した生活習慣病健診・保健指導へ

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 厚生労働省は「生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会」の第3回会合を開き、「生活習慣病健診・保健指導」を推進する方策を示した。

 国民の健康づくりの意識を高めるとともに、それをどのように具体的な行動変動へつなげていくかが課題。「メタボリックシンドローム」の考え方を取り入れ、科学的根拠に基づく予防対策の実施へとつなげていく。

 また、予防では「健診による早期発見と早期治療」が重要と理解されることが多いが、健診は疾病の発見だけでなく備軍のリスク発見の手段でもあることを確認し、治療が必要となる前の段階で生活習慣の改善を促し保健指導を充実させることが必要とされた。

生活習慣病対策の充実が急がれる

 国民医療費約4割が生活習慣病で占められる(がんが約1割、糖尿病、脳卒中、心疾患などの循環器系疾患が3割)。特に糖尿病は増加傾向にある。また、虚血性心疾患や脳卒中の重要なリスクファクターとされる糖尿病、高血圧症、高脂血症の患者と、その一歩手前の状態にある予備群が増加している

 これらに対する対策を充実させることが、中長期的に国民の健康寿命を伸ばし、医療費の適正化につながる。

生活習慣の改善支援を継続して行える体系づくり

 糖尿病、高血圧症、高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病において、発症予防や治療のために生活習慣を改善していくことが必要。国民に正しい知識をもってもらい、実際に行動してもらうことが、糖尿病の発症防、良好な治療、さらに虚血性心疾患や脳卒中などの予防につながる

 そのために健診や保健指導を、特に予備群に対する指導の徹底と生活習慣の改善を目指したサービスとして体系化することが求められている

健診機会の重層化

 健診は病気を早期に発見し治療する機会としては認知されているが、予備群や健康な人に適切な生活習慣を続けてもらう動機付けの機会としては十分に機能していない

 現状では、地域での健診の受診率が低く、健診の必要がある人が受けていない傾向がある。また、大部分が健診機関や医療機関などで保健師など限られた医療スタッフによっと行われている。健診を行うことに重点がおかれ、健診結果に基づく保健指導が不十分と考えられる。

 健診等を受けなかった人は、その理由として過半数が「時間をとれない」、「めんどう」、「必要性を感じない」などを挙げる。個々の多様なライフスタイルや考え方に合わせて、関心のない人や予備群に対しても適切な生活習慣改善への支援を行うことも必要

 健診を受ける人には過度の負担をかけず、これまで受けていない人も受けやすく、さらに保健指導等が必要な人を見落とさない手法として、簡便な健診(健康チェック)を詳細な健診の前に行い、その結果に応じて詳細な健診を受ける「健診機会の重層化」を図ることが有効。

メタボリックシンドロームの概念を取り入れ、健診・保健指導の対象と目的を明確にする

 内臓脂肪の蓄積が糖尿病、高血圧症、高脂血症の発症に深く関わり、これらが重なるほど心疾患や脳血管疾患の発症リスクが高くなるというメタボリックシンドロームの概念が受け入れられつつある。

 こうした考え方を健診・保健指導に取り入れ、臓脂肪の減量を目的とした保健指導の対象者の明確化や指導の内容を充実することが必要。

保健指導対象者の階層化

 保健指導については、健診を受けたすべての人に、個人の状況や必要性に応じた医療サービスを提供することが必要であり、メタボリックシンドロームの概念を取り入れた病態の重複状況、行動変容の困難さの度合いなどを指標にし、「保健指導対象者の階層化」を図ることが有効である。

 個人のニーズに対応した保健指導が提供される体制を整備するため、関係機関の連携を図るとともに、民間事業者を含めたサービス提供者間に質で選ばれるための競争原理を働かせることも必要。

 さらに、多数の関係者間の役割分担と連携を進めていくためには、各関係者の協議の場を設ける必要性がある。総合調整を行う主体として都道府県が挙げられている。

第3回生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会 [資料]

  1. 今後の生活習慣改善支援サービスについて メタボリックシンドロームの概念を導入した生活習慣病健診・保健指導への転換(中間とりまとめ(案))
  2. 今後の生活習慣病改善支援サービス全体のイメージ(中間とりまとめ)
  3. 効果的な健診・保健指導の事例等について(中間とりまとめ)
資料 「メタボリックシンドロームの考え方〜判定と生活習慣支援のイメージ〜」
平成17年度厚生労働科学研究「地域保健における健康診査の効果的なプロトコールに関する研究(主任研究者:水嶋春朔 国立保健医療科学院)」 健康対策指標検討研究班(班長:渡邊 昌 国立健康栄養研究所)検討資料より
●詳細は厚生労働省のサイトへ
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/08/s0826-9.html
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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