糖尿病アジアネットワーク
2008年04月30日
インスリンを使用する2型糖尿病の患者さん
2008年3月15日と22日に国立内分泌病院内で、ベトナム糖尿病教育者協会(VADE)と同病院が患者さんに糖尿病に関する情報を普及させるセミナーを開催しました。多くの患者さんが集まったこの機会を利用してインスリン治療をしている2型糖尿病の患者さんにインタビューしました。
ハノイのBa Dinnに住んでおられ、16年間糖尿病を患っている61歳の女性(Nさん)です。
1:自分が糖尿病であることをどのようにして気づかれましたか?
Nさん それは16年前のことです。私はひどい疲れと喉の渇きを感じ、尿がたくさんでました。そこで私は健康チェックのために国立内分泌病院へ行き、ドクターから2型糖尿病に罹っていると告げられました。
2:この16年間どのような治療をしてこられましたか?
Nさん 医師に糖尿病に罹っていると説明されるまで、糖尿病について何も聞いたことがありませんでした。
医師ははじめに使う薬の説明書と、インスリン治療になるまで変更していく薬のリストをくれました。私ははじめにメトフォルミンを使い、それからグリクラジドを使い、そしてインスリン注射になりました。
3:いつごろからインスリンを使用していますか?インスリンはどのようなタイプを使っていますか?
Nさん この4年間インスリンを使用しています。私は何人かのドクターに、食事療法と運動療法をしないで薬物療法だけしていると、血糖値がだんだん高い状態になってしまうと言われました。 今はインスリンを1日2回注射しています。どんな種類のインスリンか正確にはわかりませんが、私のメディシンバックにありますよ。(30R混合製剤と脂質異常症の薬を見せてくれました)
4:ご家庭でもご自分で注射しておられますね。在宅のインスリン注射には、どんな難しさがありますか? インスリン注射後血糖値が低くなりすぎたことはありますか? しばしばありましたか?
Nさん まったく問題なく自分で注射できます。夜に血糖値が少し下がったことがありますが、そのときはケーキを食べ過ぎたためだったと思います。
私にとって最も困難なことは、インスリンにお金がかかることです。一週間で1ボトル12万ドン(約750円)、1ヶ月で4ボトルですからとても高額になります。
私は1日2回、朝18単位午後に14単位注射しています。この4年間インスリンを使うことが大きな経済負担になっています。また残りの人生にインスリンを使い続けなければならないことをとても心配しています。
5:治療費を払うためにどのようなやり繰りをしておられますか?保険に加入されるか、その他の支援源をお持ちですか?
Nさん 子供たちが時々くれる心づけにも頼っていますが、もうみんな結婚していますから決して多いとはいえません。
私はナースをしていましたが、若いうちに健康上の理由から働くのをやめました。このことが年金も健康保険もないという問題につながりました。今この病院で健康保険を申請していますが、まだ認められてはいません。治療代のほとんどは私が在宅の患者さんのところへ行き注射や輸液をする仕事で得ています。
しかし、私の治療代にはいつも十分ではありませんから、治療を続けるためにあらゆる資金をやりくりしなければなりません。でも、この16年間いつもドクターの指示を守ってきました。
私は血糖レベルのコントロールが悪いので通常の健康チェックに行かず、血糖値がとても高いときだけドクターのところへいきます。これもインスリンへの変更を余儀なくした原因でもあるでしょう。
6:インスリン治療の他に、治療されているものはありますか?
Nさん ドクターから血糖値が高いだけでなく、血液中の脂質も多いと言われ、1日2錠の脂質異常症の薬を食後に飲んでいます。
私は血糖値のコントロールが保てないことはいかに危険なことかを理解しています。医師の指示に従って、よりよい食事療法を心がけています。砂糖、脂肪をとらないようにして、1日30分から60分のジョギングもしています。血糖測定器を買い自宅で血糖値をモニターし、毎週分析しています。
このごろはとてもいいと感じています。そして、血糖値はより安定し、とても高いということはなくなりました。
7:今日のセミナーをどうやって知られましたか? それから、Dr. Hoang Kim Uocの、糖尿病治療のモニタリングでは自己血糖測定による血糖値とHbA1c値が重要であるというお話からどんなことを学ばれましたか?
Nさん 私は、ヘルスチェックのために国立内分泌病院に来て、このプログラムのリーフレットをみました。糖尿病についてもっと知りたかったし、私の問題をドクターに相談したいと思って出席することにしました。
Dr. uocのお話を通して、在宅での血糖コントロールの重要性を強調されたのはよくわかりました。ともかく、病院へ行かなければならないほど高い血糖値を知ることだと思いますが、私の治療においてどのように重要なのかはよくわかりません。このセミナーはとても有意義です、これからも患者のためにこのような活動を催してくださるよう希望します。
8:このたびベトナム教育者協会(VADE)が結成した糖尿病クラブへの参加を考えておられますか?
Nさん もちろんそうします。このクラブがどのような活動をするか知りませんが、私も含めて糖尿病患者に役立つことしてくれると信じています。私は是非会員登録をするつもりです。
このようなクラブでともに活動していくことはわれわれのような患者に非常に役立つと思います。この活動からより多くの情報や知識を得ることができますし、病気と闘うための確信も強化されます。
9:この国立内分泌病院で、次の土曜日に、自己血糖測定器のチェック、テスト、そしてドクターによるセミナーと相談が無償で行われますが、相談に来られますか?
Nさん それは素晴らしいです。私の問題についてぜひ相談してみます。
ただ、Dr. uocは、いろいろお答えになると思いますが、あまりにも多くの患者さんが居られるので時間の制限もあり、すべてに対応することはできないでしょう。
これからさらにこの集まりが催され多くの情報が得られるようになること、そして、私のような患者が出席できるセミナーがますます多く開催されることを希望します。
レポーター このようなセミナーはこれから確実に増えると思います。それらにどんどん参加できるといいですね。どうぞより健康になられて、糖尿病を克服され幸せな人生を得られますように。
インタビューを終えて
今回はセミナーに参加された100人以上の患者さんの中から、2型糖尿病の女性にインタビューしました。彼女はインスリン注射を必要とする糖尿病患者さんの中でたくましい闘病ぶりを象徴する例といえます。
糖尿病の患者さんには、糖尿病とそしてどうように対処すればいいという知識と情報が極端に不足しているということを改めて強く印象づけられました。それは血糖と合併症のコントロール、患者さんが利用できるサービスやサポート、健康保険、国や国際機関、特に様々な事情を持つひとびとの資金不足の支援などです。これらのなかには我々の以前のレポートで触れたものもあります。
ベトナムは糖尿病にその努力のすべてを傾け、多くの組織、国のプログラム、地域や政府機関などの多く事業などがフォーメイションを組んで進めれば、「糖尿病患者の生活環境の改善」と「地域での糖尿病の抑制」という目標は近い将来に現実のものとなると信じています。
以下の写真はセミナー会場で撮影したものです。
Dr. Hoang Kim Uocの話に聞き入る参加者
主要テーマであり注目を集めた家庭での自己血糖測定の行い方
参加した患者さんに配られた糖尿病に関する情報、グッズなど
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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