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2017年04月13日
SGLT2阻害薬 極端な「低炭水化物ダイエット」で重大な副作用が
SGLT2阻害薬で治療している患者では、極端な炭水化物制限を行っていると、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスを生じる「正常血糖糖尿病ケトアシドーシス」(eDKA)が引き起こされるおそれがあることが明らかになった。
炭水化物比率を40%に制限するとケトン体が有意に上昇
2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬のルセオグリフロジンは、毎日の食事の炭水化物比率が40〜55%であれば、炭水化物比率やグリセミック指数(GI)にかかわらず血糖値を改善することが、関西電力医学研究所の研究グループの検討でわかった。
しかし、炭水化物比率を40%に制限すると、比率が55%だった場合に比べて、同薬の使用により血中のケトン体が有意に上昇することも判明した。
これにより、極端な炭水化物制限を行うと「正常血糖糖尿病ケトアシドーシス」(eDKA)を引き起こす可能性があることが示唆された。
SGLT2阻害薬の適切な使用にあたっては、患者が日常的に摂取する食事の内容や量を把握することが重要であることが示された。
研究は、関西電力医学研究所の清野裕氏、矢部大介氏らの研究グループによるもの。詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」オンライン版に2月21日に掲載された。
「炭水化物比率」は、食事に含まれる総エネルギーに占める炭水化物の割合。日本糖尿病学会では、糖尿病患者の食事療法において、総エネルギーの50〜60%を炭水化物、20%以下をタンパク質、残りを脂質からとるように勧めていいる。ただし、身体活動量や合併症の状態、嗜好性などの条件に応じて、適宜、柔軟に対処するように推奨している。
SGLT2阻害薬の副作用「正常血糖糖尿病ケトアシドーシス」
2014年に日本でも治療に使われ始めたSGLT2阻害薬については、不適切な使用による副作用が報告されており、日本糖尿病学会などの「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、同薬の適正使用に関するRecommendationを公表している。
SGLT2阻害薬の副作用には、脱水や、発熱・下痢・嘔吐のほか、重症低血糖やケトアシドーシスなどが報告されているが、とくに血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスを生じる「正常血糖糖尿病ケトアシドーシス」(eDKA)は、症例数は少ないものの重要な課題とされている。
「糖尿病ケトアシドーシス」は、多くは急性の高血糖がきっかけで発症する。血糖値を下げるインスリンが不足すると、血糖をエネルギー源として利用できなくなり、体はエネルギー不足になる。そのため、かわりに脂肪がエネルギー源として分解されて、使われてしまう事態だ。
ケトアシドーシスになると、脂肪の分解によってケトン体という物質が血液中に増え、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、脱水状態になる。この症状が起きた場合、すぐに医療機関へ連絡し。一刻も早く治療する必要がある。
Recommendationでは、インスリン分泌能が低下している症例へのSGLT2阻害薬の投与では、ケトアシドーシスの発現に厳重な注意が必要として、「全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性があるので、血中ケトン体を確認すること」と記載されている。
炭水化物比率が40~55%ならSGLT2阻害薬を安全に使用できる
日本では、2型糖尿病でSGLT2阻害薬に関連したeDKAが報告されており、特に、厳格な炭水化物制限中の患者でSGLT2阻害薬を開始後にeDKAを発症した例が報告されている。
そこで研究グループは、日常的な食事の炭水化物比率別にルセオグリフロジンの有効性と安全性を比較検討した。
2型糖尿病患者23人を対象に、炭水化物比率とGIが異なる3群に割り付けた。(1)炭水化物比率55%+高GI、(2)炭水化物比率55%+低GI、(3)炭水化物比率40%+高GI――に無作為に割り付け、同じ内容の食事を2週間継続してもらった。対象患者には、後半の1週間にはルセオグリフロジンを服用してもらい、同薬の服用前後に持続血糖測定(CGM)を行った。
その結果、3群すべてにおいて、炭水化物比率やGIによらず、ルセオグリフロジンを服用するとCGMによる血糖の平均値および曲線下面積が有意に改善していた。
以上から、日本人2型糖尿病患者でらは、日常的に摂取する食事の炭水化物比率が40~55%であれば、炭水化物比率やGIによらず、SGLT2阻害薬が、安全かつ有効性に使用できることが分かった。
一方で、血中ケトン体は、炭水化物比率が40%だった群では、比率を55%とした2群に比べて、同薬を使用すると有意に上昇することも分かった。
以上から、厳格な炭水化物制限を行う患者ではSGLT2阻害薬の使用により、正常血糖糖尿病ケトアシドーシスを生じるおそれがあることが示唆された。
関西電力医学研究所SGLT2 inhibitor use and dietary carbohydrate intake in Japanese individuals with type 2 diabetes: a randomized, openlabel, 3-arm parallel comparative exploratory study(Diabetes, Obesity and Metabolism 2017年2月21日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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