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2015年03月12日
スローカロリー研究会が発足 ゆっくり吸収されるカロリーに注目
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「一般社団法人スローカロリー研究会」(理事長:結核予防会新山手病院生活習慣病センターセンター長・宮崎滋氏)が3月4日に東京で、「第1回講演会」を開催した。

日本では「肥満やメタボリックシンドローム」「2型糖尿病などの生活習慣病」「高齢者の低栄養やサルコペニア」「若年女性の不健康な痩せと低体重児」などの増加が公衆衛生上の課題になっている。これらを防ぐポイントとなるのは適切なエネルギー(カロリー)の摂取と、食品の組み合わせを考慮することだ。腹八分と運動により適正体重を維持し、炭水化物を量的・質的に調整し、食後の急激な血糖値の上昇を防ぐことが重要になる。
3大栄養素については、各栄養素の過不足が起きないよう注意することも重要だ。糖質制限ダイエットを行う人もいるが、糖質制限によって、必要な栄養素の一つを極端に減らすと栄養バランスを欠くことになる。また、急な食事制限をすると、タンパク質がエネルギー源として分解されるようになり、筋肉量が減ってしまい、その結果、かえって代謝が低下して太りやすい体質になるおそれがある。
「現在われわれが住んでいる社会では、食べ物には不自由しない。至る所にコンビニエンスストアや自動販売機があり、簡単に食べ物が手に入り、食欲に対して誘惑も受けやすい。また、運動面でも私たちは身体活動をしなくて済むようになりました。職場や家庭で1日ほとんど座ったままで過ごしているという状況です。エネルギーを使わず、反対にためこみやすい生活になったといえます」(宮崎氏)。
「人はそれぞれの生活環境の中で、年齢や体調、趣向に合った食を選択しなくてはなりません。中でも、糖質は私たちが生きるために必要なエネルギー源であり、思考や活動のために中心的な役割を果たしています。糖質摂取量が極端に落ちると、思考力や活動力も落ち、栄養バランスが崩れてきます。むしろ、糖質を適切に摂取しなくてはいけない人がいます」(宮崎氏)。

食事の量を「腹七〜八分目」、つまり適度に制限した方が長生きすることを示した研究がいくつか公表されている。加えて重要なのは食事の質で、消化吸収が低いグリセミック指数(GI)の低い玄米や全粒粉などの食材は、腸でゆっくり消化吸収されるため、肝臓への糖流入速度が遅く、血糖値の急速な上昇を抑えられると注目されている。ごはんを中心とし食物繊維が多くとれる和食は理にかなっているといえる。


国際糖尿病連合(IDF)のガイドイランでは「食後およびブドウ糖負荷後の高血糖は、動脈硬化や心筋梗塞などの独立した危険因子」であり、「食後高血糖は有害であり、対処すべきである」と勧告されている。
「食後高血糖を是正するために“スローカロリー”は有用。同じ炭水化物で、同じカロリーであっても、吸収・消化のされ方によって、“食後血糖やインスリン”“内臓脂肪の蓄積”“運動時の燃焼性”“満腹感の持続性”など、体に与える影響は異なります」と、一般社団法人日本生活習慣病予防協会理事長でタニタ体重科学研究所所長であり、同研究会顧問を務める池田義雄氏は説明した。

「パラチノース」摂取による血糖値およびインスリン分泌の変化は2型糖尿病でも緩徐であり、健常者のインスリン抵抗性を軽減させることが研究で確かめられている。また、肥満者にパラチノースを長期摂取させた研究では、内臓脂肪面積を有意に減少することが示された。さらに、「パラチノース」を摂取すると、血糖値を下げるホルモンである「グルカゴン様ペプチド(GLP)-1」の分泌が促進されたことが報告されている。

同研究会は3月4日にホームページの公開を開始し、今後メールマガジンの配信なども予定している。
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