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2013年01月24日
糖尿病遺伝子にうち勝つ秘策は野菜のβ-カロテン
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2型糖尿病の発症と関連の深い栄養成分として、緑黄色野菜や果物に多く含まれるβ-カロテンと、植物油などに含まれるγ-トコフェロールが注目されている。
スタンフォード大学医学部のチラグ パテール氏とビュート アトゥール氏ら研究チームは、米国健康・栄養調査(NHANES)で得られた遺伝子データをともに、2型糖尿病の発症との関連が深い栄養成分を調べた。
その結果、2型糖尿病の発症と特に関連の深いのは、β-カロテンとγ-トコフェロールであることを突き止めた。
特にβ-カロテンは、血中濃度が高い人では、糖尿病のリスク(HbA1cが6.5%以上)が低いことが分かった。逆に血中濃度が低いと、2型糖尿病や耐糖能異常が高い割合でみつかった。
β-カロテンは、野菜や果物に含まれるオレンジ色や黄色の色素成分のひとつ。ニンジン、カボチャ、ホウレンソウなど色の濃い野菜、緑黄色野菜に多く含まれる。
β-カロテンは、体内に入ると必要な量だけビタミンAに変わり、残りは蓄積される。ビタミンAに変換されるカロチノイド(色素成分)は、β-カロテンの他にもα-カロテンやγ-カロテンがあるが、β-カロテンの変換率は特に高いことから注目を浴びている。
一方、γ-トコフェロールは大豆油や菜種油などの植物油に含まれる天然のビタミンE。ビタミンEにはトコフェノールとトコトリエノールがあり、それぞれα、β、γ、δの4種類がある。γ-トコフェロールは、植物油の中ではもっとも多く存在している。
これらの栄養成分が注目されるようになったのは、活性酸素の働きを抑える抗酸化作用をもつ成分だからだ。活性酸素は、動脈硬化を起こしやすくする過酸化脂質を作り出したり、がん、老化、免疫機能の低下などを引き起こす。
人間の身体は本来、酵素によって活性酸素を抑える働きが備わっているが、年齢を重ねるとともに体内で作られる酵素の量は減少していく。抗酸化ビタミンには、酵素によって処理しきれない活性酸素の働きを抑える作用がある。
β-カロテンとγ-トコフェロールの効果は、共通の遺伝的要因のある人でより大きくなることも分かった。
糖尿病の発症しやすさに、遺伝的要因が関与していることが分かっている。近年では、どのような遺伝子における違い(多型)が関与しているかが研究されており、今後、遺伝子タイプによる治療法の選択や、個人に適した食事療法などが提供されることができるようになると期待されている。
今回の研究では、研究者らは「SLC30A4」という遺伝子多型に着目した。米国人の50〜60%が SLC30A4をもっており、2型糖尿病の発症リスクに関連することが、これまでの研究で確かめられている。SLC30A4をもつ人では、β-カロテンの血中濃度が高いと、糖尿病を発症するリスクが低下することが分かった。
「あなたの遺伝子を調べておき、特定の遺伝子マーカーがあることを確かめることができれば、2型糖尿病の治療をより効果的に行えるようになる可能性があります。例えば、β-カロテンの量を増やすために、ニンジンやホウレンソウなど緑黄色野菜をなるべく食べるようにするといった、オーダーメードの食事療法が実現します」と、ビュート氏は説明している。
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