糖尿病からの危険信号「神経障害」

『生活エンジョイ物語 Vol.6-No.1(平成6年5月10日発行)』より

サインを見逃さず、
回復のチャンスをつかもう

 三大合併症のひとつにあげられる神経障害は、ごく初期の軽度のものも含めれば、多くの患者さんにみられる糖尿病の合併症です。初期症状である痛みやしびれは、軽くみられがちですが、病状の進行とともに激痛へ、そして、神経の壊死を示す無感覚へと、変貌する恐ろしさをもっています。
 また、最近では突然死との関連も指摘され、軽視できない病気として、再認識されつつあります。ただ、幸いなことに、比較的早期に自覚症状が出やすいため、さのサインを見逃さず治療に専念すれば、完治させることができます。治療の基本は、よい血糖コントロールを継続させること、これのみ。
 つまり、予防も治療も、患者さんの日頃の自己管理にかかっているといえるでしょう。今回は、この神経障害の病気の実態と、早期発見のポイント、治療上の注意点についてご紹介します。
※神経障害については 18. 糖尿病による神経障害 のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
拷問のような痛みが何か月も続く

コントロールの改善が最高の特効薬

知覚神経と自律神経が侵されやすい

自覚症状を逃さず、早期発見につとめよう
神経障害の早期発見と治療のポイント

足に出る障害が最も多い
こんなとき、神経障害が始まっている

からだの警報器が壊されてしまう怖さ
予防と治療のポイント

時期を逃すと血糖コントロールも効かない
神経障害と診断されたら、怪我や事故に気をつけよう


拷問のような痛みが何か月も続く

 千葉県に住む歯科医師の菊池俊矢さん(仮名、45歳)は、9年前、神経障害で1年間苦しんだ経験をもつ。仕事に追われ、糖尿病の治療が思うようにできずにいたころ、ついに糖尿病昏睡を起こして入院。そのときに神経障害が出始めたのだ。当時、血糖値は450〜500だった。
「最初は足の裏が分厚くなった感じで、感覚がなくなり、何だろうと思っているうち、その異常な感じが両足に広がって、足首、すね、膝、ももと、上にあがってきた。そして、膝を超えたあたりで、今度は強烈な痛みに変わったんです」。痛みを感じてから約2か月後のことだ。
 痛みはとくに足首から下がひどく、ちょっと触れられただけでも飛び上がるくらい痛かった。安静にしても夜になっても、少しもよくならない。「眠るどころじゃない。もう拷問ですよ」。痛み止めを飲んで、それが効くころようやく眠って、朝、目が覚めると、また痛みと格闘する日々が始まった。
 主治医の「回復には早くても2、3か月。とにかく血糖コントロールをよくして、それを継続すれば必ず治る」という言葉を支えに、ひたすら食事療法、インスリン療法に専念。とくに運動療法は、毎日20分の歩行がノルマ。痛みどめで感覚が麻痺した足を踏みしめ、がんばる。だが、努力もむなしく、痛みのゾーンは膝から20cm上まで進行してきた。

コントロールの改善が最高の特効薬

「痛み出して4か月に入ったころは、いつになったらよくなるのか、さすがに不安になりました。激痛は相変わらずで、仕事に復帰するめどもたたず、このころが一番苦しかった」。
 そんなある日、新しい痛みに気づく。膝上の痛みで、しかも、みみずがはうように移動する。主治医に報告すると。「それが、神経が回復してきた証拠ですよ」という返事が返ってきたのだ。
 事実、それを機に、徐々にではあるが痛みが減り始め、まず膝上部分が、次にすねの上半分の痛みがとれた。後戻りする方向で痛みのゾーンが下がりだした。約6か月かかって、全部の痛みがようやくとれた。
「痛みがとくに強かった4か月間は、本当に長かった。でも、なんとかがまんできたのは、主治医の先生の的確なアドバイスがあったからです。病状に応じて、うるさがらずにきちっと説明してくれたので、納得できたし、回復を信じることができた。
 今は月2回のゴルフもできるし、自転車にも乗れる。なんでもできるということが、とてもうれしい。近所の人だって、私が糖尿病だなんて知らないんですから(笑)」。  現在の菊池さんのHbA1cは6.7%。このコントロールが神経障害を克服したのだ。

知覚神経と自律神経が侵されやすい

「神経障害は、コントロールが悪い人に出てくる合併症です。高すぎる血糖が、じわじわと神経をむしばんで、その組織の本来の機能を奪っていくもので、HbA1cが7%以下ならまず発症しませんが、8%以上の方は要注意ですよ」。こう語るのは、菊池さんの主治医、東京都済生会中央病院内科の渥美義仁先生だ。
 人体の神経は、中枢神経(脳・脊髄)と末梢神経(からだの各所に張り巡らされている神経の伝達網)とで成り立っているが、糖尿病で侵されやすいのは後者。その末梢神経には知覚神経、自律神経、運動神経の三種があるが、神経障害はおもに知覚神経と自律神経に出る。知覚神経は、冷たい、熱い、痛いなど、あらゆる感覚を感じとる神経。自律神経は、生命保持に必要な心肺や消化器官などを、脳の命令に頼らず独力で動かす神経だ。

自覚症状を逃さず、早期発見につとめよう

「両方とも、私たちが生きていく上で、また生活していく上で、重要な役目を果たす神経ですから、これらがダメージを受ければ体調も悪化し、行動の範囲も縮小せざるを得なくなります。また、感覚が鈍るので、危険を察知する能力も落ちて、怪我など日常生活の中での危険性も倍増します。
 ただ、神経障害は比較的、自覚症状が出やすく、初期なら完治しますから、そのサインを見逃さないよう、おかしいと思ったら、すぐ主治医に報告してください」と、渥美先生はいう。

神経障害の早期発見と治療のポイント

神経障害についての知識をもつ

自分の現状をチェックする

なんらかの自覚症状がでたら、早めに主治医に報告し、検査する

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