3. 運動療法のコツ(1) [基礎]

1997年5月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
  阿部隆三先生
 太田西ノ内病院運動指導室長
  藤沼宏彰先生


運動療法とは

 運動療法は、食事療法、薬物療法と並んで、糖尿病治療の有力な手段です。とくに、日本人の糖尿病の 95% を占める、2型糖尿病の患者さんで、血糖コントロールが安定している人の場合は、食事療法とともに運動療法を行うと、血糖が下がるだけでなく、糖尿病のさまざまな症状が改善され、さらには、動脈硬化の予防、老化防止といった点でも効果があることが実証されています。
 しかし、進行した合併症がある時には、運動がかえって病状を悪化させることもあります。何をどの程度行うのが効果的なのかを正しく理解し、適度な運動を上手に生活に取り入れて、糖尿病をよくし、快適な毎日に変えていきましょう。

どんな効果が得られるのでしょうか?

 運動はみなさんの最大の悩みである高い血糖値を低下させると同時に、肥満の解消に大きな効果があります。また、糖尿病の患者さんがかかりやすい血管合併症などの予防や進行を抑える効果もあります。さらに、体を動かすのが楽になり、日常生活も快適になります。そうした効果を、以下にまとめてみました。

(1) 血糖を下げる効果
 運動時のエネルギー源として、血中のブドウ糖(血糖)を使うため、運動すると血糖が下がり、その効果は翌日まで持続します。また、定期的に続けることで、筋肉や脂肪など各組織の細胞がもつ、ブドウ糖や脂肪をエネルギーに変える能力も一段と高まるため、その分インスリン量を節約でき、膵臓の負担を軽減できます。
(2) 体重を減らす効果
 運動時のエネルギー源として、脂肪(遊離脂肪酸)も使うので、運動を定期的に続けると、体重を減らすことができます。また、血液中の中性脂肪や動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールを減らし、かわって動脈硬化を予防する善玉コレステロールが増えてきます。
(3) 心臓や肺の働きを強化する効果
(4) 血圧を下げる効果
(5) 足腰など下肢の筋力を強くして、老化を予防する効果
(6) 血液の循環をよくする効果
(7) ストレス解消など気分転換の効果
(8) 体力がついて動きが楽になるため、日常生活が快適になる効果

 などがあります。


やっていい人、いけない人

 運動は、さまざまな治療効果を高めることができる反面、病状によっては逆に高血糖や低血糖を引き起こす原因になったり、病状を悪化させてしまう場合があります。2型糖尿病で、合併症がなく血糖コントロールが安定している人や、合併症があっても程度が軽ければ、運動は大層効果があります。
 しかし、糖尿病のさまざまな合併症、とくに増殖網膜症など進行性の網膜症、血清クリアチニンが高いなど進行した腎症、自律神経障害がある場合には、運動がかえって症状を悪化させることがあるので、病状が安定するまで運動はお勧めできません。また、血糖が安定していた人でも何らかの原因で血糖が高くなり、尿ケトン体の出現や、血中ケトン体の上昇が認められた時をはじめ、感染症で高熱が出るなど急性の変化があった時も、病状が落ちつくまでは運動は控えてください。
 また、1型糖尿病の人、糖尿病性以外の合併症のある人、たとえば、血圧がいちじるしく高かったり、心臓や肺の病気があったり、腰や膝の関節が悪い場合なども、運動内容に注意や制限が必要ですから、主治医の判断と指示に従ってください。

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