糖尿病セミナー
2. 食事療法のコツ(1) [基礎]
2014年2月 改訂
ステップ3 あなたにあった栄養(単位)の配分を知る
栄養素の働き
- 炭水化物
- エネルギーとして使われる主要な栄養素です(正確には食物繊維を除く炭水化物=糖質がエネルギー源です)。消化吸収されてブドウ糖となり、血液中に供給されます。食後に血糖値が上がるのはこのためです。1gで約4kcalのエネルギーになります。
- たんぱく質
- 筋肉や血液となります。炭水化物や脂質の摂取量が少ないときには、エネルギーとしても使われます。炭水化物と同じく1gで約4kcalあります。腎臓の病気がある場合、治療のためにたんぱく質の摂取量を減らすことがあります。
- 脂質
- エネルギーとして利用されるほか、ホルモンや細胞膜に使われる栄養素です。1gあたり約9kcalあるので、とり過ぎると体重が増えやすくなります。また、動脈硬化の進行が速まります。
- ビタミン、ミネラル
- からだの諸機能を整えます。ミネラルのうち、カルシウムは骨や歯の材料となります。
- 食物繊維
- 炭水化物のうちエネルギーにならない栄養素が食物繊維です。食物繊維は食べても血糖値が上がらないばかりか、血糖値の上昇を抑えたり、おなかの調子を整えてくれます。
理想的な栄養バランスとは、1日の摂取エネルギー量の50〜60%を炭水化物でとり、たんぱく質は体重1kgあたり1.0〜1.2g、そして残りのエネルギー量を脂質でとるのがよいとされています。下に具体的を挙げますが、例えば指示エネルギー量1600kcal(指示単位20単位)で炭水化物55%の場合、表1が9単位、表2が1単位、表3が5単位、表4が1.5単位、表5が1.5単位、表6が1.2単位、調味量が0.8単位で、計20単位となります。
下の表は、栄養学的に計算した場合の、単位の配分表の一例です。通常は、あなたに合った単位の配分を記した「単位配分表」が医師や栄養士から渡されることが多いので、それに従って食品を組み合わせます。
配分で大事なことは、栄養のバランスが偏らないようにすること、また食事の回数は3食以上にし、単位数をなるべく均等に配分することです。朝食を抜いて、その分、夕食をたっぷりとるような配分は、血糖のコントロールを乱し、好ましくありません。また、炭水化物の割合が55%、50%の場合、たんぱく質や脂質が増え過ぎないように注意しましょう。
1日に必要な単位配分表と、単位配分例
〔日本糖尿病学会編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」、28〜33頁、日本糖尿病協会/文光堂 2013年発行より引用改変〕
転用などを行う場合は必ず、該当する部分のデータあるいはプリントアウトを添付するなどして、同学会の引用許可を得てください。
ステップ4 交換のルールを知る
食事療法を守りながら、毎日の献立に楽しみや変化をつけるには、交換の可能性と限界を知ることです。交換の原則は、同じ表の食品同士なら、自由に交換(取り替え)がきくということです。表1の御飯を、同じ表1に分類されているうどん、あるいはじゃがいもと交換したり、表3の肉のかわりに同じ表3の魚にしたりということは、まったく自由です。しかし、違う表との交換は原則としてできません。表1の御飯を、表3の肉と交換したり、表3の魚を表6の野菜と交換することは、できないのです。
砂糖やみそ、みりんなどの調味量は、1日あわせて0.8単位とします。しょうゆなど、エネルギー量が少ないため単位を計算せすに使用できるものもありますが、調味量は塩分をたくさん含んでいるものが多いので、できるだけ控え目にしましょう。
菓子などのし好食品はエネルギー量が多く、コントロールを乱しやすいので交換の対象にはなりません。例えば、御飯(表1)とフランスパン(表1)は交換できますが、御飯をあんパンなどの菓子パン(し好食品)に変えることの可否は、主治医や管理栄養士の指導を受けてください。
交換できるもの、できないもの
ステップ5 自分の食事をチェックする
献立をつくる前段階として、まず今食べているもののチェックをしてみましょう。食べたものの量を全部書き出し、それを表に配分してみて、1日の単位内で収まっているか、栄養のバランスはどうかを細かくチェックしてみます。自分で食べたものを記録することで、何を何単位食べたか、何が問題かがみえてくるようになり、また交換表の使い方もわかってきます。よく使う食品の1単位の重さを書き出し、一覧表にしておくと便利です。コンテンツのトップへ戻る ▶
糖尿病3分間ラーニング 関連動画
糖尿病3分間ラーニングは、糖尿病患者さんがマスターしておきたい糖尿病の知識を、 テーマ別に約3分にまとめた新しいタイプの糖尿病学習用動画です。
- 01. 糖尿病とは「基礎編」
- 02. 食事療法のコツ(1) 基礎
- 03. 運動療法のコツ(1) 基礎
- 04. 高齢者の糖尿病
- 05. インスリン療法(2型糖尿病)
- 06. 血糖自己測定とは
- 06_1. 生活の中にどう生かす血糖自己測定 『生活エンジョイ物語』より
- 07. 肥満と糖尿病
- 08. 小児の糖尿病(1) 基礎
- 09. 薬物療法(経口薬)
- 10. 糖尿病生活Q&A
- 11. 糖尿病用語辞典(より簡潔に)
- 12. 病気になった時の対策 シックデイ・ルール
- 13. 結婚から、妊娠・出産
- 14. 糖尿病による腎臓の病気
- 15. 糖尿病による失明・網膜症
- 15_1. 眼科医からみた失明しないためのアドバイス 『生活エンジョイ物語』より
- 16. 糖尿病と脳梗塞・心筋梗塞
- 17. 足の手入れ
- 18. 糖尿病による神経障害
- 18_1. 糖尿病からの危険信号神経障害 『生活エンジョイ物語』より
- 19. 糖尿病の検査
- 20. 低血糖
- 21. 食事療法のコツ(2) 外食
- 22. 糖尿病の人の性
- 23. 口の中の健康
- 24. 動脈硬化と糖尿病 メタボリック シンドローム(代謝症候群)
- 25. 糖尿病と感染症
- 26. 食事療法のコツ(3) 腎症のある人の食事
- 27. 糖尿病と高血圧
- 28. 小児の糖尿病(2) 日常生活Q&A
- 29. 運動療法のコツ(2) 合併症のある人の運動
- 30. 骨を丈夫に保つには
- 31. 痛風・高尿酸血症と糖尿病
- 32. 糖尿病予備群
- 33. 小児2型糖尿病
- 34. 糖尿病とストレス うつとの関連、QOLの障害