IFLオーストラリアレポート「フィリピンの糖尿病患者ミラ・ジョイさん」
オーストラリアのインスリン・フォー・ライフ(IFL)では、フィリピン共和国の糖尿病患者さんへの支援活動を行っています。
この度、IFLのニール・ドナラン氏より、現地の糖尿病患者さん ミラ・ジョイ・D・ティナムバキャンさんからのお便りが届きましたので、ご紹介します。
国際糖尿病支援基金はこの活動に賛同し、インスリン・フォー・ライフ(IFL)を通じて、2013年よりフィリピンの糖尿病患者さんを支援をしています。
お元気ですか!ニールさん、IFLオーストラリアの皆さん ミラ・ジョイ・D・ティナムバキャンです。
13歳の時に1型糖尿病と診断され、現在23歳になりました。16歳の時からIFLの支援を受けています。今回はとても嬉しいことがあって、お便りしています。
ニールさんもご存知のように、私は学校で大変な思いをしてきました。
青白くやせ細り、歩くのもゆっくりで、やっと授業に出られるくらい精神的に不安定な状態を抱えていました。
学校では皆からジロジロ見られ、陰口を言われるだけではなく心無い言葉を直接言われたこともありました。「糖尿病」という皆と違う理由で注目を集めてしまう。あの独特な感覚に居心地に悪さを覚えていました。そのため、あの当時はいつも落ち込んでいたのです。身体にも痛みを感じただけではなく、精神的にも辛かったため「死んでしまおう」と思っていたのです。周りの人たちから「可哀そうな子」と思われたり、心無い言葉をかけられて傷ついていたのです。それでも、愛する人たちから励ましの言葉をかけられたことで、現実と戦う勇気を与えられたのです。
最初に糖尿病と診断されたとき、食事療法や血糖コントロールという言葉ですら簡単なことに思えたのですが、実際には大変であることに気づいたのです。糖尿病と診断されたのは、13歳の時でした。1日3回インスリン注射を打ち、血糖値を正常範囲内にし、合併症を防がなければなりません。
我が家にはインスリンを購入する経済的余裕が無く、両親はインスリンを手に入れるためにあらゆることをしてくれましたが、当時はまだインスリンを必要とする人たちを支援している団体の存在を知りませんでした。
インスリン治療を始めて1週間たっても私の血糖値は下げることができず、2週間後には失明状態になってしまいました。天地がひっくり返ったような衝撃を受け、ずっと泣き続け、神様に視力を奪った理由を問い続けましたが、それでも諦めることはありませんでした。神様は願いを聞いてくれたのです。
父の収入では学費や日々の生活費はおろか、治療費を支出することもできませんでしたので、インスリン注射を止めなければならず、母と共に街の診療所に行き、無料の経口治療薬を貰いました。しかし、血糖値が改善せず入退院を繰り返しました。学校を卒業するまで、私の健康状態は最悪でした。歩くと足に強い痛みを感じたため、叔父が私を背負って家から学校まで連れて行ってくれました。家から学校まで何キロも離れ、石でゴツゴツした道をあるかなければならないのです。糖尿病のために勉強も友人関係も上手くいかないことに涙したことも多々ありました。勉強に関しては、皆に負けたくないと頑張っていたのです。クラスメートの中には、私が糖尿病であることを理由に課外活動から締め出そうとする人もいました。
フィリピンでは学校行事でパーティーを開くことがあり、食事などが提供されますが、私だけ「たくさん食べちゃダメ」と言われ、過剰に行動をチェックされるたびに悲しくなりました。
私の入院中に、全校生徒から寄付が集められていることを知り、ある日、先生たちから通院費用を渡されたこともありました。このことは、ただただありがたく感謝するのみでした。しかし、その当時の私は、周りの人の善意に押しつぶされるほど苦しんで、自身を哀れみ、皆の寄付で生きていくとは、死んだものと同然と捉えてしまっていたのだと思います。情けなく思いながらも、家の事情を考えると受け入れるしかありませんでした。私の入院・通院費用、日々の薬代は予想以上に費用がかかり、寄付金から足りない分は公的支援を求めたり、他の人にも経済的支援を求めたこともあります。
退院後に学校に戻った時には、気分が悪くなった時に横になれるよう先生たちが折り畳み式のベッドを教室においてくれたのです。先生たちの配慮と理解に、とても感謝しています。また、親切にも学校の門までオートバイに乗せてくれたり、カバンを持って教室まで送ってもらったりしたこともありました。
ある日、医師のヒトシス先生から、シエラさんとシエラさんの運営する組織を紹介してもらいました。これを機に、糖尿病キャンプに何回か参加し、同じ病気を持つ他の子供たちや2型糖尿病の人たちと知り合うこととなったのです。糖尿病キャンプでは、とても幸せを感じました。様々な血糖値の管理方法や適切なインスリン注射、糖尿病患者がすべきこと・すべきではないことなど多くを学びました。新しい友達もでき、血糖値をコントロールするモチベーションも生まれました。2歳くらいの年齢で糖尿病と診断された子供たちを知ることになり、ある程度の年齢になってから糖尿病と診断された自分の境遇に感謝することにも繋がっています。
人生は生易しいものではありません。失敗続きです。それでも、失敗を受入れ、そこから学び、失敗を繰り返さないということを受け入れることです。挑戦しながら失敗することを私は選びます。なので、全ての失敗の後には成功があると信じています。失敗することで強くなる必要があるのです。人生の中で、生きるに値しない、成長に値しないときなど一秒たりとも無いのです。私は生きること=成長を選択しているのです。
私は奨学金を得て大学へ入学し、2019年に人材開発マネジメント専攻・経営学士号の栄誉を手にしました。
ミラ・ジョイさんの卒業写真と卒業証書
私は卒業を機に自分の体験記を書くことにしました。IFLオーストラリアとネグロス島糖尿病協会への謝辞も書かせていただいてます。
皆さんにお伝えしたいことは、皆が人生の主役ということです。我々に難題を与える人たちは悪役で、その難題にもがき苦しむことも物語の一部であり、主役を強く逞しく育てる存在なのです。
私の人生の物語はこれで終わらないと信じています。後々、血糖コントロールが上手くいかなければ、合併症にも直面するでしょう。1型、2型糖尿病患者が他界したことを耳にするたびに、いつか私にもその時がやって来ると思うと気分が滅入ります。その時には、再度、私の原動力である将来の夢や家族のことを思いながら気持ちを引き締めます。与えられた人生の時間は一秒たりとも無駄にできないことに気づかされました。何事にも全力で取り組み、助けが必要な人には出来る範囲で手を差し伸べたいと思っています。
糖尿病治療に必要なインスリンを全て提供してくださっているIFLオーストラリアに感謝申し上げます。神様の使徒として世界中の命を救ってくださっていることに感謝します。大学卒業の夢を叶えてくださったことに感謝します。
世界中のコロナ禍の中、皆が精神的、社会的、経済的に苦しんでいます。数か月間、インスリンを受け取ることができていない状態です。私よりも年下の子供たち、年長の2型糖尿病の方々を始めインスリンを必要とする人間がいます。我々の殆どは、薬局でインスリンを購入するための収入を得る方法を必死で探しています。大学を卒業し、それと同時に職には就いたものの、私の収入ではインスリンを購入し、家族を支えるには十分ではありません。両親の収入だけでは不十分なので、家族は私の収入も必要としています。私は昼間シフトで外部委託会社の仕事をしていますが、できるだけストレスをためないために毎日残業することは避けています。そのため最低賃金の収入です。雇用主は、私が糖尿病であることを知っています。以前参加した糖尿病キャンプで、急を要する必要がある時に周りの人たちが、どのように対処すべきか知ってもらうために、自分の健康状態を同僚たちに知らせることを恥じてはいけないと学んでいたからです。
先日、ペルフェクト・リムさんから、Iインスリンが届いたとメッセージを受け取りました。必要とするインスリンの種類が全て揃ってはいないものの、インスリンを受け取ることができました。これは大きな支援です。
ニールさん、全てのNIDAの皆さん、IFLオーストラリアの皆さんに心の底より感謝申し上げます。この支援が他の方々にも届きますように!神様のご加護が皆様に降り注ぎますように!
皆さんの健康と安全を祈念いたします。
■フィリピン共和国のリステルさんについて(IFLオーストラリアレポート)
https://dm-net.co.jp/idaf/act/update/ifl-7.php
https://dm-net.co.jp/idaf/act/update/1ifl.php
国際糖尿病支援基金は、この活動に賛同し、2013年よりインスリン・フォー・ライフ(IFL)を通じて支援をしています。
■関連記事
「2020年フィリピンでの支援活動について」 (IFLレポート)
2019年フィリピン・バコロド市での糖尿病キャンプについて(IFLレポート)
インスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)
国際糖尿病支援基金
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