ネットワークアンケート
インスリン療法(BOT)についての不安と期待
※血糖値を下げる「血糖降下薬」を服用しながら、効果が長く続くインスリンを1日1回だけ注射する方法。
<ご報告>
今回のアンケートは、患者さん111名にご回答いただきました。糖尿病ネットワークより、国際糖尿病支援基金に お一人50円分、合計5,550円の寄付を行いましたのでご報告申し上げます。ご協力ありがとうございました。
アンケート調査結果のまとめ
インスリン療法(BOT)で治療中の患者さんの3割がCGMを利用
回答していただいたのは、インスリン療法(BOT)を続けている歴が1~2年の比較的短い方から、10年以上の長い方まで。服用中の「血糖降下薬」の数は、約8割の人が2種類以下。また、「血糖値の測定方法」は、CGMと答えた人と、SMBGとCGMを併用と答えた人が合計31.5%(35人)に。血糖自己測定(SMBG)のみの利用が62.2%(69人)と最も多い中、持続血糖モニター(CGM等)を利用している人が約3割いることがわかりました。
Q1. インスリン療法(BOT)を始められてからの、およその期間を教えてください。
- 1年未満
- 1~2年
- 3~5年
- 6~9年
- 10年以上
Q2. 現在服用中の血糖値を下げる「血糖降下薬」は、何種類ですか?
- 1種類
- 2種類
- 3種類
- 4種類以上
Q3. 血糖値※の測定方法を教えてください。
- SMBG(血糖自己測定)のみ
- CGM(フリースタイルリブレ、Dexcom G6、ガーディアンコネクトなど)のみ
- SMBGとCGMを併用
- その他
※CGMの場合はグルコース値
医師からインスリン注射量を自分の判断で調整するよう指導を受けたことがある人は半数
回答者の49.5%が、インスリン注射量を医師から自分の判断で調整するよう指導されたことがあると回答。これまでに「自分の判断で調整したいと感じたことはあるか」等、インスリン注射にまつわるいくつかの質問から、患者さんの治療への気持ちや向き合い方が見えてきます。
Q4. インスリン注射量(単位数)を医師から自分の判断で調整するよう指導をされたことはありますか?
- はい
- いいえ
インスリン注射量を医師から自分の判断で調整するよう指導されたことがある人は、ほぼ半々でした。「はい」と答えた人は、インスリン療法(BOT)歴が10年以上の人が56.1%と最も割合が多かったものの、10年以下の患者さんでも40~50%の間となっており、BOT歴の長さで医師の指導のある・なしに大きな偏りは見られませんでした。
Q5. インスリン注射量(単位数)を自分の判断で調整したいと感じたことはありますか?
- はい
- いいえ
自分の判断でインスリン注射量を調整したいと感じている患者さんは73.9%(82人)。その中で、実際に医師からインスリン注射量を調整するように指導をされている人は57.3%(47人)、されていない人は42.7%(35人)でした。医師に指導をされていないものの、自分の判断で調整したいと思う人が比較的多くいることがわかりました。
Q6. インスリン注射量(単位数)を、医師の指示に基づいて、自分の判断で調整したことはありますか?
- はい
- いいえ
インスリン注射量を医師から自分の判断で調整するよう指導されたことがある人(Q4で「はい」を選んだ人)のうち、9割もの患者さんが、実際に自分の判断でインスリンの注射量を調整しています。
Q7. 自分の判断で調整したときのきっかけは何ですか?(複数回答)
風邪や腹痛等で体調を崩したシックデイ(sick day)のとき
インスリンを打ち忘れたとき
その他
Q8. インスリン注射量(単位数)を調整したことを診察時などに医師やスタッフに相談・報告していますか?
- はい
- いいえ
インスリン注射量を自分の判断で調整することに不安がある人は46.8%
インスリン療法(BOT)を行っている111人の患者さんのうち、注射量を自分の判断で調整することに「不安を感じる」と回答した人は46.8%(52人)。そのうち、インスリン注射量を医師から自分の判断で調整するよう指導されたことがある人(Q4で「はい」を選んだ人)が28.8%(15人)、指導されたことがない人(Q4で「いいえ」を選んだ人)が77%(40人)という結果に。医師の指導のある・なしで、不安感に大きな違いが出ています。
Q9. インスリン注射量(単位数)を自分の判断で調整することに不安を感じますか?
- はい
- いいえ
インスリン注射量の調整について医師の指導があった人のほうが自身の血糖マネジメント改善への期待が大きい
医師によるインスリン注射の自己調整の指導のある・なしは、血糖マネジメント改善に対する期待値にも影響しています。「とても思う」「まあまあ思う」と思っている人は、医師の指導があった人(Q4で「はい」を選んだ人)の中では合わせて96.4%(53人)にのぼり、医師の指導がなかった人(Q4で「いいえ」を選んだ人)の中では73.2%(41人)でした。また、医師の指導があった人のほうが、「とても思う」を選んだ比率が高く、インスリン注射量の調整による自身の血糖マネジメント改善への期待をもつ方が多いことがわかりました。
Q10. インスリン注射量(単位数)を調整することでご自身の血糖マネジメントは改善すると思いますか?
- とても思う
- まあまあ思う
- あまり思わない
- 思わない
Q4の質問『インスリン注射量を医師から自分の判断で調整するよう指導されたことはありますか?』で「はい」と答えた人は、Q10の質問『インスリン注射量を調整することで自身の血糖マネジメントは改善すると思いますか?』で、「とても思う」「まあまあ思う」を選んだ人が多かった。医師の指導がある人は、血糖値の改善にポジティブ。
一方、Q4の質問『インスリン注射量を医師から自分の判断で調整するよう指導されたことはありますか?』で「いいえ」を選んだ回答者は、「はい」を選んだ人たち(左下グラフ)に比べて、ややネガティブな回答結果となった。医師の指導がなかった人たちは、自身の血糖値改善に懐疑的な面が見受けられる。
9割の人が「適切なインスリン注射量を表示するアプリ」の利用に前向き
血糖値を記録する方法としてスマートフォンアプリを使っている人は多くないものの、「適切なインスリン注射量を表示するアプリ」に対しては、あれば利用したいと考える人が9割にも。代替ツールが他になく、自分が行っている療法に必要と感じることを提供するアプリに対しては、大多数がその利用に積極的な意見をもっていることがわかりました。
Q11. 測定した血糖値を記録する主な方法を教えてください。
- 自己管理ノート(日本糖尿病協会 発行)
- 血糖記録シート(医療機関・かかりつけ医 提供)
- スマートフォンアプリ
- 記録していない
- その他
血糖値の記録法として、スマートフォンアプリを使っている人は3割以下。慣れや管理のしやすさといった点から、それぞれに合う方法を選んでいることが考えられます。
Q12. 測定した血糖値をもとに適切なインスリン注射量(単位数)を表示するアプリがあったら利用したいですか?
- はい
- いいえ
インスリン療法(BOT)を行っている回答者のうち、9割がアプリを利用したいという意見。糖尿病のある方のサポート役として、こうした、インスリン注射量を自分で調整する際の不安感を軽減してくれるアプリの開発が待たれます。
2型糖尿病の治療でインスリン療法(BOT)を行っている糖尿病のある方は、インスリン注射量を自分の判断で調整して打つことに不安をもっている人が多くいらっしゃることがわかりました。一方で、医師の指導がある人は、その不安が比較的少ないこと、また、血糖マネジメント改善の期待が大きいことも読み取れます。そして、自分の判断で注射量を調整するときの不安感を埋めてくれる可能性のあるサポートアプリへの期待の高さも感じられました。
不安を減らすためには、かかりつけの医師や医療スタッフとの細やかなコミュニケーションが欠かせません。また、こうしたアンケートなどを通して、他の人の状況や気持ちを共有することも、ひとつの安心材料に。同じ療法を行っている方や、同じ病気をもつ方に、もっといろいろと聞いてみたい、話してみたいという方は、積極的に情報交換の場に行ってみるのも良いかもしれません。
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調査概要
- 実施時期
- :
- 2023 年 11月
- 調査方法
- :
- インターネット調査
- 調査名
- :
- 「インスリン療法(BOT)についての実態調査」
- 対象
- :
- 2型糖尿病の治療でインスリン療法(BOT)を行っている糖尿病のある方
- 主催
- :
- 糖尿病ネットワーク
- 回答者数
- :
- 111名
回答者属性
- 性別
- :
- 男性 82名、女性 29名
- 年齢
- :
- 20代 1名、30代 4名、40代 10名、50代 32名、60代 32名、70代 30名、80歳以上 2名
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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