糖尿病と女性のライフサポートネットワーク
加藤 陽子
(久留米大学医学部看護学科 母性看護学・助産学 准教授)
女性のからだは一生の中で、大きな変化を3度迎えます。それは、女性のからだが「妊娠・出産が可能な状態になるとき(思春期)」、「妊娠・出産のとき」、「妊娠・出産の機能がなくなる時(更年期)」の3度です。
最初の変化は、思春期(8・9歳〜19歳ごろ)に起こります。この時期に女性のからだは、
妊娠・出産が可能な状態に近づきます。そのためにおこる大きなからだの変化は、月経の開始です。月経が始まることで、卵巣は排卵できるようになり、子宮はそのなかで赤ちゃんを育てることができる状態に近づきます1)。
月経のしくみについては、「1章 基礎講座編 (1)月経周期に合わせて血糖って変動するの?」に詳しく書いていますので、ご覧ください。
初めての月経(初経)が開始するのは、10〜14歳の間といわれていますが、個人差があります。初経の時に排卵があるのは極めてまれなことです。ほとんどの場合、排卵はしていないけれど、出血はあるという状態です。その後も排卵がない月経が続くことが多いです2)。これは、思春期の女性は、大人のからだへ変化し始めた時期なので、ホルモンバランスが不安定な状態であることが関係しています。月に1度の周期的な排卵があって、月経がくるようになるのは思春期中期以降(15〜17歳ごろ)からと言われています3)。
また、月経が始まったばかりの思春期の女性は、月経前症候群や月経困難症(「1章 基礎講座編 (2)月経と血糖のふか〜い関係って?」参照)などが起こることがあると言われています4)。思春期なったら月経に関することにも目を向けて頂き、何か気になることがあれば、早めに婦人科の受診をすることをお勧めします。
思春期には、エストロゲンという女性ホルモンが分泌されるようになり、その影響でからだが丸みを帯びてきます。そして、このからだの変化は、成長と共に順に現れてきて、まず、胸が膨らみ、陰毛が生え、そして月経がおこります。しかし、これには個人差もありますので、一概にみんな同じ順というわけではありません。(図1)
思春期の女性は、大人の女性らしいからだにどんどん変化していきます。
そのような変化は大人になる過程でおこる自然な発達と言えます。しかし、思春期にある女性は、このような劇的なからだの変化にとまどいや困難を感じる人も多いと言われています6)。他の人と比べてその違いに思い悩んだりすることもあります。
思春期の女性が自分のからだの変化をどのように捉えるかには、いろいろな事が関係しています。そして、その捉え方は一人一人違います。このような時期に、ご家族はまず、大人の階段を登り始めた思春期の女性の成長を一緒に喜ぶことが大切だと思われます。また、成長にとまどっている思春期の女性に対し、大人である自分たちもその時期には色々と思い悩んだことを伝えたり、ささいなことにも耳を傾け、必要であればアドバイスができること・・・、そのような関わりが思春期にある女性にとって大きな支えとなり、大人へのからだの変化を肯定的に受け入れられ、自分のからだとしっかり向き合えることに繋がるのではないかと思います。そのためにも、思春期の女性自身だけでなく、ご家族や周囲の人々も思春期の女性がどのように大人のからだに変化していくかを理解しておくことが大切です。
- 1)石原理:イメージするからだのしくみvol 9 第1版.メディックメディア.東京.P12.2007.
- 2)小川久貴子:第3章女性のライフステージとその特徴 1思春期.久米美代子,飯島治之編「ウーマンズヘルス女性とライフステージとヘルスケア」医歯薬出版株式会社.東京.P52.2007.
- 3)石原理:イメージするからだのしくみvol 9 第1版.メディックメディア.東京.P12.2007.
- 4)大森里美:パートⅢ女性のライフサイクル各期の健康問題と看護 Ⅷ思春期女性の健康問題と看護 1.月経前症候群・月経困難症とヘルスケア.高橋真理.村本淳子編「ウィメンズヘルスナーシング女性のライフサイクルとナーシングー女性の生涯発達と看護―第2版」ヌーヴェルヒロカワ.東京.P216.2013.
- 5)Tomoko ADACHI:E.婦人科疾患の診断・治療・管理.日産婦誌.Vol61(12).P643-656.2009.
- 6)金子一史:第1章女性のライフサイクルと女性のメンタルヘルスA思春期・青年期3.思春期とは.村瀬聡美.我部山キヨ子編「助産学講座4基礎助産学[4]母子の心理・社会学第4版」医学書院.東京.P4.2014.
- (1)月経周期に合わせて血糖って変動するの?
- (2)月経と血糖のふか〜い関係って?
- (3)えっ?月経不順と糖尿病って関係あるの?
- (4)知っておいてほしい月経の正常・異常
- (5)知ってた? 月経周期に合わせた血糖コントロールのコツ
- (6)女性の一生には特有の身体とこころの変化があるということ〜糖尿病患者と一括りにされるのではない、糖尿病と共にある「女性」なのです〜
- (7)「産む性」だからこそ考えなければならない、糖尿病とともに生きること
- (1)糖尿病ってどんな病気?
- (2)糖尿病の治療とわたしの生活 〜食事〜
- (3)うまい血糖コントロールは合併症を防ぐ!
- (4)いつもの検査…これってどういう意味?〜そこがわかれば自分の体がもっとわかる〜
- (5)身につけよう〜セルフモニタリング力〜Part1
- (6)身につけよう〜セルフモニタリング力〜Part2
- (7)身につけよう〜セルフモニタリング力〜Part3
- (1)「思春期って!どう関わったらいいの?って困ったこと、一度はありますよね!?
- (2)女性への階段を上る〜からだはどう変化していくのでしょうか?
- (3)女性への階段を上る〜こころはどう変化していくのでしょうか?
- (4)女性への階段を上る〜恋愛、学校、自分の将来…
- (5)どう支える?子どもたちの糖尿病のある生活―思春期―
- (1)糖尿病と妊娠の医療の狭間〜内科スタッフは妊娠・出産が苦手?
- (2)糖尿病と妊娠の医療の狭間〜産科スタッフは糖尿病が苦手?
- (3)糖尿病と妊娠に関連した様々なできごとは日々の日常生活の中で起こる〜これこそまさに看護職者の出番です
- 第34回糖尿病妊娠学会学術集会教育講演(PDF)
糖尿病看護認定看護師青木 美智子