第2章 子どもたちのこころとからだと糖尿病のある生活
1.糖尿病とともにある子どもたち―幼児―
(1)幼児期のこころとからだ

糖尿病と女性のライフサポートネットワーク
井出 薫
(埼玉県立小児医療センター 糖尿病看護認定看護師)

幼児  幼児期は、離乳が終了する1歳前後から就学前までの5〜6歳の時期をさします。からだのつくりや仕組みが成人に近い状態まで成長し、言葉や考える力なども発達していきます。この時期では、基本的生活習慣(食事・排泄・睡眠・清潔・衣服着脱など日常生活に必要な知識や技能)や社会的生活習慣(マナーやルールなど)、対人関係の能力の獲得を通して社会の一員として生きる基礎を作ります1)
 運動発達でみると、歩行は個人差がありますが、1歳3か月ころまでに歩けるようになります。親指と人差し指の指先でものをつまむような細かな動作もできるようになります。2〜3歳頃でジャンプやボール蹴り、3歳半〜4歳半頃で片足とびができるようになり、丸の模写ができるようになります。4歳半以降では、片足で立てる時間が長くなり、少し複雑な人物画を描いたり四角の模写もできるようになってきます1)
 心の発達をみてみると、1歳半頃には10個ほどの単語が言えるようになり、その後「ひとりでやりたい」という欲求が高まってきます。2歳を過ぎると好奇心が広がり自己主張が強くなり始めます。2〜4歳頃に第一次反抗期がみられるのが特徴です。甘えと反抗を繰り返しながら自分の世界を広げ、自我が発達していきます。うそを言い始めるのは3歳頃からで、わざと反対のことを言うこともあります。4歳になると単なる模倣から学習へ変化し、5歳になると自分中心の世界から他者との関係を理解し始め、思いやりの心が芽生え共感できるようになります。遊びでみてみると、3歳頃までは、めいめいで遊び道具を共有しない遊びが中心ですが、4歳頃では周囲に関心が向けられ道具の貸し借りをして一緒に遊ぶようになります。5〜6歳頃では少人数のグループでルールに則った遊びをするようになります1)
 糖尿病を持つこの時期のお子さんは、生活習慣を習得しながら療養行動も習得していきます。1〜2歳では、インスリン注射や血糖測定で泣くことも多く、療養行動全てがご家族に委ねられますが、3歳ぐらいでは、血糖測定を「ぱっちんする」注射を「ちっくん」と表現しながら道具を持って来てお母さんに渡したり、ゴミを捨てたりすることができます。そして個人差はありますが、4〜5歳では血糖測定、5〜6歳で自己注射も可能になります。特に、同年代の子ども同士が集まる場面で血糖測定や注射を行っているのを見ると、今まで全く興味が無かったのに急に自分で始めているということもあります。これは、模倣をしながら学習し、「できたことに対し褒めてもらいたい」「褒めてもらってうれしい。もっとやろう」とするこの時期の特徴となります。
 注射をやらなければいけないことは理解しているのに、「やだ!やらない!」と言い始めたり、「おやつを食べる」と言って注射をしたら思いのほか食べなくて低血糖に気をやんだりなど、この年齢に特徴的な自我の発達と言えるでしょう。また、素直に注射や血糖測定を行えていた児が急に「なんで○○ちゃんは、ちっくんやらないの?」と尋ねてくることがあります。それは、自分中心の世界から外へ関心が向けられ、自分との違いを意識し始めていると思われます。

引用・参考文献
  • 1)中野綾美編:小児看護学―小児の発達と看護.メディカ出版.大阪.P83-85.
(2016年01月 公開)
目 次
第1章 基礎講座編
1. 糖尿病と女性のからだ
2. あなたと私のための糖尿病基礎講座
第2章 子どもたちのこころとからだと糖尿病のある生活
1.糖尿病とともにある子どもたち―幼児―
2.糖尿病とともにある子どもたち―学童―
3.糖尿病とともに大人の女性への階段を登る―思春期―
第3章 大人の女性として(青年期)“女性が知っておいた方がいいことって?”
第4章 女性が生命を繋ぐその瞬間(とき)に〜妊娠・出産編
第5章 大変だけど、楽しい。子育てまっ最中の時に
第6章 次の世代を見守りながら育む時を(どう)過ごすか
第7章 看護職の方々へ
1. さあ、看護職者の出番です!
番外編 明日からの糖代謝異常妊婦のケアを考えよう

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