第1章 基礎講座編
2. あなたと私のための糖尿病基礎講座
(6)身につけよう〜セルフモニタリング力〜 Part2

糖尿病と女性のライフサポートネットワーク
冨永 幸恵
(秋田大学医学部附属病院 糖尿病看護認定看護師)
青木美智子
(千葉中央メディカルセンター 糖尿病看護認定看護師)
岡部 夏季
(杏林大学医学付属病院 総合周産期母子医療センター 助産師)
田中 佳代
(久留米大学医学部看護学科 母性看護学・助産学 教授)

 セルフモニタリングについて、Part1では血糖について考えてきました。Part2では体重について考えてみましょう。 体重測定は身近なものですが、糖尿病と関係があるのですか?
体重は糖尿病をコントロールしていくうえで深く関係しています。セルフモニタリングしていくポイントをおさえてみましょう。

体重
 体重測定は、簡便で誰にでも気軽に始められます。肥満(とくに内臓脂肪型)や高血圧、高中性脂肪血症や低HDLコレステロール血症では、インスリン抵抗性(インスリン作用が効きにくい状態)を有する方が多いといわれています1)。つまり、肥満は血糖の上昇だけでなく、血圧高値や脂質代謝異常にも関連があります。これらは動脈硬化性疾患の発症の要因ともいわれています。適正体重を維持することは血糖コントロールの改善だけでなく、動脈硬化性疾患の予防にも繋がります。体重の変化とともに血糖、血圧、脂質も併せて考えられるといいですね。

体重を測る時のポイントは何ですか?

 目標となる体重は体格や年齢などを考慮するため個々に異なります。目標体重は医療者と共有しておくと良いですね。急激な体重の増減は血糖コントロールに悪影響をきたしますので、半年以上の長期的な目標として取り組むのが良いでしょう。使用している薬剤によっては体重が増える場合もありますので、薬剤の効能や副作用等はよく理解しておきましょう。
 体重は食事量や運動量によって常に変化しています。朝から夜にかけて体重は増え、夜から朝にかけて減るのが一般的です。1日で1kg近く体重は変化します。そのためいつ測定するか、条件を統一したほうが良いでしょう。体重測定のポイントを以下に示します。
ナース
◎体重測定のポイント
 ・起床時、入浴前(又は寝る前)に測定する
 ・食後や入浴後は避ける
 ・トイレを済ませた後に測定する
 ・毎日同じ時間帯に同じ条件(着衣等)で測定する

 測定は1日1回でも良いですし、より正確な変化を知るには1日2回(起床時・就寝時など)の測定をお勧めします。測定の頻度は、基本毎日測定します。そうすることで体重の変化やその要因が把握しやすくなります。測定した値は記録しておきましょう。振り返りがしやすくなり、モチベーションの維持にも繋がります。標準体重は計算式で求めることができます。「第1章 2.あなたと私のための糖尿病基礎講座(3) 表2 血糖値以外のコントロール指標」を参考にしてください。また体重計の他にも体脂肪が測定できる「体脂肪計」、基礎代謝や筋肉量なども計測可能な「体組成計」等があります。種類や価格も様々ですので、自分が何を計測したいかによって選択してみてはいかがでしょうか。
 体重とHbA1cも関連があります。1か月ごとの受診の際に、体重とHbA1cの値を一緒のグラフにしてみると、体重の低下に伴いHbA1cのグラフは少し遅れる形を示しつつ、改善することがわかります。逆に、体重が増加の曲線になるとHbA1cも少し遅れて上昇の傾向になることが長期的な変化として見えます。便秘や浮腫、食欲低下などの体調の変化は体重に大きく影響します。体重が増加傾向にある場合には食事療法、運動療法、薬物治療の状況(飲み忘れ、注射のうち忘れなど)を見直し要因を探ってみましょう。振り返りがしやすいように食事内容やイベント、体調などすぐに思い出せるように合わせて記録しておくと良いでしょう。

インスリン注射を打つと太るって本当?
ナース
 様々な情報から、インスリン注射をすると太ると思っている方もいるかもしれません。女性にとっては気になる事と思います。インスリンが不足して血液中にブドウ糖が増えると、そのブドウ糖を細胞に取り込めない状態になっています。インスリン注射をすると、細胞に取り込めなかったブドウ糖が細胞に取り込めるようになります。これは、身体がそれぞれの機能を発揮するために必要なことなのです。しかし、必要以上にブドウ糖がある場合には、脂肪として蓄えられるために体重は増加します。つまり、正常な代謝機能をからだが獲得するためにインスリン注射は必要ですので、気にしすぎず、食事・運動で体重を調整していきましょう。それでも不安な場合には医師や看護師に相談してみてはいかがでしょうか。
 その他、禁煙を始める場合にも注意が必要です。禁煙中はそのストレスや口さみしい感覚などにより、過食ぎみになり、結果として体重増加がみられる傾向にあります。これから禁煙を考えている場合には、このことを頭に入れながら事前に対策を考え、体重測定を継続していけると良いのではないでしょうか。

将来妊娠を希望するとき、体重も何か関係がありますか?
良い質問ですね。肥満は妊娠中や産まれてくる赤ちゃんにも色々な影響を与えるのですよ。
 標準体重の他にBMI(Body Mass Index)があります。これは体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数です。(第1章 2.あなたと私のための糖尿病基礎講座(3) 表2 血糖値以外のコントロール指標を参照してください。)BMI指数22を標準とし、25以上を肥満としています。肥満は妊娠後期から出産直後の周産期に多くの合併症を発症するリスクがあります。肥満妊婦の代表的な周産期合併症は大きく分類すると3つあります。①妊娠高血圧症候群とそれに伴う合併症、②耐糖能異常と、血糖コントロール状況に伴い児の体重が4000gを超える(巨大児)、大きい赤ちゃんの出産による難産(肩甲難産)、③微弱陣痛と、陣痛が弱いことで分娩が長引く(遷延分娩)、分娩後の子宮収縮が不十分で出血が多くなる(弛緩出血)等があります。このような状況では、新生児が仮死状態になる場合もあり、母児の安全を守るために帝王切開や吸引・鉗子分娩となることがあります2)3)
 肥満は糖尿病と関連が強く、妊娠中の耐糖能異常(妊娠中に診断された明らかな糖尿病、妊娠糖尿病)の最も強いリスクといわれています。肥満女性では、非肥満女性に比べてインスリン抵抗性(インスリン作用が効きにくい状態)が強く、妊娠時はそのインスリン抵抗性はさらに亢進します2)。また、肥満は血糖と独立して体重の重い赤ちゃん(heavy for date:HFD)となる可能性や、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症と関連します4)。肥満を合併している妊娠糖尿病の場合、体重の重い赤ちゃん(HFD)となる可能性は妊娠糖尿病と肥満の相加効果があることが報告されています5)
 平成18年に厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」6)では、非妊娠時のBMI(体格区分別)をもとに、妊娠全期間を通しての推奨体重増加量を表1のように示しています。妊娠前に肥満だった妊婦(BMI25以上)は、体重増加の目標はおよそ5kgを目安とし、著しく超える場合には個別に対応していくこととなっています。

表1 体格区分別 妊娠全期間を通しての推奨体重増加量
体格区分 推奨体重増加量
低体重(やせ):BMI18.5未満 9〜12kg
ふつう:BMI18.5以上25未満 7〜12kg
肥 満:BMI25以上 個別対応

 以上のことから、糖尿病をもち、妊娠を考える場合には、合併症のリスクを少しでも軽減できるよう、適正体重を保てるようにしてみてはいかがでしょうか。

引用・参考文献
  • 1)一般社団法人日本糖尿病学会編.糖尿病治療ガイド2016-2017.P12.2016
  • 2)難波光義他:「妊婦と糖尿病」母子管理のエッセンス P22.金芳堂.2013
  • 3)病気が見える10産科 第3版 P 76.メディックメディア2017
  • 4)日本糖尿病・妊娠学会編:妊婦の糖代謝異常 診療・管理マニュアル改訂第2版 P 137・138.メジカルビュー 2018
  • 5)HAPO Study Cooperative Research Group:Hyperglycemia and adverse pregnancy outcomes. N Engl J Med 2008;358:1991-2002.
  • 6)厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3a.html
(2019年05月 公開)
目 次
第1章 基礎講座編
1. 糖尿病と女性のからだ
2. あなたと私のための糖尿病基礎講座
第2章 子どもたちのこころとからだと糖尿病のある生活
1.糖尿病とともにある子どもたち―幼児―
2.糖尿病とともにある子どもたち―学童―
3.糖尿病とともに大人の女性への階段を登る―思春期―
番外編 明日からの糖代謝異常妊婦のケアを考えよう

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