第1章 基礎講座編
2. あなたと私のための糖尿病基礎講座
(4)いつもの検査…これってどういう意味?〜そこがわかれば自分の体がもっとわかる〜

糖尿病と女性のライフサポートネットワーク
桜庭 咲子
(弘前大学医学部附属病院
糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士)

いつもの検査…これって何を調べているのですか?
 糖尿病治療で通院の際に、いつも色々な検査を受けていると思います。
 検査にも、受診の度に行う検査や間隔を空けて定期的に行う検査、必要時に行う検査など 様々な検査があります。それぞれの検査では何を調べているのかがわかると、自分の体が どんな状態なのかが把握でき、自分でコントロールする際の役にも立つのではないかと思います。
 一つずつ何を調べる検査なのか、どれくらいの間隔で調べているのかをみてみましょう。

*血糖値:糖尿病の診断・治療(血糖管理)のために血液の中のブドウ糖濃度を調べています。
検査の間隔は、通院時は毎回または必要時、血糖自己測定では一日のうち指示された回数を自分で測定します。

*持続血糖モニター(CGM):皮下組織間質液(皮膚の下にある細胞にあるリンパ液や血液など)にあるブドウ糖濃度を連続してみていきます。これは、血糖変動が大きいと血管の内側が傷つきやすくなる「血管内皮障害」を起こしてしまうと動脈硬化が進行するためで、1日の血糖変動を最長で7日間みていきます。血糖コントロール改善を目指すために、随時行っている血糖測定時以外の一日の血糖変動状態を知りたい時に実施します。

*インスリン:診断、病態把握、治療法の選択のために血液中のインスリン濃度をみています。ただし、インスリン療法中の方では使用中のインスリンも測定されるため、用いないことが多いです。空腹で検査することで、基礎分泌(一日をとおして少しずつ出ているインスリン)やインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなっていないか)を評価します。

*Cペプチド:膵臓からのインスリン分泌時にインスリンと同量の分泌があります。血液・尿中のCペプチドを調べることで今のからだの中のインスリン濃度を知ることができます。インスリン療法中の方にも用いることができます。

*HbA1c:過去1〜2か月間の平均血糖値をみています。月に1回測定ができる検査のため、受診の度に調べることが多いです。ヘモグロビン(血液中の赤血球の中にあるたんぱく質の一種)にグルコースが付いた糖化ヘモグロビンを調べています。貧血の方は、ヘモグロビンが少ない場合があるため、正確な値とならないことが多いです。

*グリコアルブミン:過去2週間の平均血糖値をみています。アルブミンはからだの中にあるたんぱく質の一種ですが、これがグルコースとの結合性が高い特徴から、血糖変動の激しい1型糖尿病や不安定型糖尿病、急速に悪化あるいは改善した糖尿病などの血糖コントロール指標に適しています。貧血のある方にも用いられます。

*1,5-AG:血糖コントロールの状態をみることができます。高血糖時に血清1,5-AGは低下します、随時に測定した血糖値が低下していても1,5-AGの上昇はごくわずかのため高血糖状態があったことを知ることができます。

*クレアチニン、シスタチンC、推算糸球体濾過値(eGFR):腎臓の機能を調べる検査です。合併症の糖尿病性腎症の状態の診断、腎臓で排泄されるお薬が使用可能か、薬の用量調節が必要かを判断するために調べます。

*血清脂質・リポ蛋白:動脈硬化に影響する血清脂質(血液の中の脂肪分)は、疎水性(水に溶けにくい性質がある)があり血液中に溶けないため、脂質運搬の役割を担うためにリポ蛋白という構造をとっています。脂質異常症は、リポ蛋白の異常により起こるため、動脈硬化の状況を経過をみながら評価していくのに必要な項目です。

*ケトン体(血液・尿):インスリン濃度が低下して、体内に必要なグルコースを取り込めなくなると、グルコースに代わるエネルギーとして脂肪組織を使います。その際に中性脂肪が分解されることとなり、その結果肝臓でケトン体が産生されます。ケトン体を調べることで、インスリン作用不足を知ることができます。ケトン体の増加は、体を酸化させ意識障害を起こす原因になります。

*尿糖:血糖値が160〜180mg/dlになると尿糖が出現するとされています。尿糖が認められるのは、血糖が高値の場合、腎臓で老廃物を濾過(ろか)する量が増加している場合、腎臓で濾過されたブドウ糖の再吸収量が低下している場合です。

*尿蛋白:糖尿病性腎症がどの程度であるかという病期分類に用いられます。尿クレアチニン(腎臓が老廃物を濾過(ろか)する機能を見る検査)と同時に測定することで1日に尿中に排泄されている蛋白量を知ることができます。より正確な検査のためには、新鮮尿(検査の時に採尿する)や中間尿(尿を出しながら途中の尿)を採る必要があります。

*尿中アルブミン:尿中のタンパクを調べる検査で、糖尿病性腎症の早期(腎症2期)の診断に用いられます。早期の診断のためにも3か月〜6か月に1回の検査が重要となります。尿中アルブミンの低下は、狭心症や心筋梗塞、腎不全の予防につながると言われています。

*尿沈渣:糖尿病性腎症以外の他の腎臓の病気の鑑別のために用いられます。

*便検査:糖尿病の方は、がんになる確率が糖尿病でない方より高いため、消化管の病気の早期発見のために便潜血検査(便に血液が混じっていないか)が行われます。最低1年に1回は実施します。

*心電図:心臓の機能を調べます。動脈硬化による影響が出ていないか、運動療法が可能かどうか、糖尿病性神経障害の有無を知ることができます。必要時や最低でも1年に1回は実施します。

*胸部エックス線撮影:肺に異常がないかや心肥大(心臓が大きくなっていないか)を調べます。必要時や最低でも1年に1回は実施します。妊娠の可能性のある場合は、医師にそのことを伝え撮影を避けるようにしましょう。

*生理学的検査 足関節上腕血圧比(ABI), 脈波速度(PWV):閉塞性動脈硬化症(血管の動脈が固くなって血液の流れが悪くなる)の診断や血管障害がどの程度重症化しているかを評価する検査です。動脈硬化の進行が予測される場合は、冠動脈疾患(心臓の筋肉を栄養している動脈の内側が狭くなり血流量が減少して起こる狭心症や、急に閉塞して血流が途絶える急性心筋梗塞)や脳血管疾患(脳の中の血管が破れる脳内出血や、血管が詰まる脳梗塞など)も同時に評価が必要となります。

*体組成、体脂肪率:脂肪量、水分量、筋量、骨量などで体の状況(体組成)を知り、肥満の評価、栄養や運動の管理に役立てられます。

*腹部エコー検査:消化器系の病気や婦人科系の癌などの病気がないかを調べるために行われます。原因不明な血糖の悪化があれば、その原因を検索するために実施します。

*心エコー検査:胸痛や胸が圧迫される感じがあるなどの症状がある場合は心不全疑い、その際に心電図に異常を認める場合に行われます。心筋障害(心臓を形作っている筋肉の障害)の有無を評価します。

*頸動脈エコー検査:動脈硬化になっていないかの程度を評価する検査です。狭心症や心筋梗塞を発症する危険性や脳梗塞を発症する危険性を予測できます。

*眼底検査:糖尿病性網膜症の状態を知るためや、運動療法が可能かどうかや、治療法を選択するために行います。網膜症がない場合は6か月〜1年に1回、単純網膜症では3〜6か月、増殖前網膜症は1〜2か月、増殖網膜症では2週間〜1か月で眼科受診が必要となります。

いつもの検査…これってどういう意味ですか?
これらの検査の結果の意味を知ることで自分の体がもっとわかると思います。以下の表1に 検査の結果の意味をまとめてみました。

表1 糖尿病に関する検査

検査 糖尿病治療のめやすや基準値 その他
血糖値(mg/dl) 合併症発症・進行予防:空腹時130未満、食後2時間値180未満
妊娠時:食前100未満、食後2時間120未満
空腹時血糖は、10時間以上絶食した後の血糖のこと
持続血糖モニター 低血糖や高血糖がなく、血糖変動が小さい状態  
インスリン 空腹時おおむね2〜10μU/ml  
Cペプチド 血清:空腹時ではおおむね1〜3ng/ml、
随時測定ではおおむね4ng/ml以上
尿中:おおむね40〜100μg/日
血清0.6ng/ml未満、尿中20μg/日以下は自分の体からのインスリン分泌が低下している状態
HbA1c 6.0%未満:血糖正常化を目指す際の目標値。食事や運動療法のみまたは薬物療法で低血糖などなく達成可能な場合
7.0%未満:合併症予防のための目標値
8.0%未満:治療効果が困難な際の目標値。低血糖などの副作用などで治療強化が難しい場合
急激な血糖値の変動はHbA1cでは把握しにくい。顕著な高血糖状態と頻回な低血糖が存在すると見せかけ上は平均血糖値としてのHbA1cはそれほど上昇しない
グリコアルブミン 11〜16%が基準値  
1,5-AG 14.0μg/ml以上(10μg/ml以上で良好な血糖コントロールと評価される) SGLT2阻害薬を使っていると低くでやすく、人参養栄湯、加味帰脾湯等の一部の漢方薬を使用していると高くなる
クレアチニン、シスタチンC、eGFR(mL/分/1.73m2 クレアチニン:男性0.8〜1.2mg/dl、女性0.6〜0.9mg/dl、
シスタチンC:0.9mg/L未満、
eGFR:60未満から注意が必要。30未満で腎症4期
クレアチニンは筋肉量に左右される
血清脂質・リポ蛋白 LDL-C(悪玉コレステロール):120mg/dl未満
HDL-C(善玉コレステロール):40mg/dl以上
中性脂肪:150mg/dl未満
心筋梗塞などになった経験がある場合は、LDL-Cは100mg/dl未満を目標とする
ケトン体 総ケトン体28〜120μMが基準  
尿糖 血糖値がおよそ160〜180mg/dlを超えると尿糖は陽性になる SGLT2阻害薬服用者は、血糖値が正常でも陽性となる
尿蛋白 持続性蛋白尿0.5g/gCr以上で腎症3期 一般的に150mg/日以上は病的とされる
尿中アルブミン
(mg/gCr)
正常アルブミン尿(30未満)で腎症1期、
微量アルブミン尿(30〜299)で腎症2期、
顕性アルブミン尿(300以上)で腎症3期
妊娠中・月経時・過度の運動時・過労・感冒時・血糖や血圧不良時は正確な値とならないため検査はさける
尿沈渣 硝子円柱は健常者でも認められる より正確な検査のために、検査の時に採尿する(新鮮尿)や尿を出しながら途中の尿(中間尿)を採る
生理学的検査ABI ABI:0.9以下で動脈閉塞の疑いがある。1.3以上は動脈石灰化がある。  

 糖尿病以外の病気の早期発見や体調管理のために、糖尿病に関するいつもの検査以外に、職場ややお住まいの地域で行う健康診断検査やがん検診を受けることをお勧めしています。
 糖尿病治療の目標は合併症を予防し、健康な人と変わらない日常生活を送ることです。患者さんご本人が病気のことをよく知り、自分の状態を理解され生活を振り返ることが最も大事です。医療スタッフは、そうした患者さんの自立した生活調整を支え、一緒に考えていく支援をします。

参考文献
  • 1)日本糖尿病学会編・著,糖尿病専門医研修ガイドブック改訂第6版,診断と治療社.2014
  • 2)門脇孝 真田弘美.すべてがわかる最新・糖尿病.照林社.2011
  • 3)日本糖尿病療養指導士認定機構編・著.糖尿病療養指導ガイドブック 2015.メディカルビュー社
(2016年04月 公開)
目 次
第1章 基礎講座編
1. 糖尿病と女性のからだ
2. あなたと私のための糖尿病基礎講座
第2章 子どもたちのこころとからだと糖尿病のある生活
1.糖尿病とともにある子どもたち―幼児―
2.糖尿病とともにある子どもたち―学童―
3.糖尿病とともに大人の女性への階段を登る―思春期―
番外編 明日からの糖代謝異常妊婦のケアを考えよう

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