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EDICEpidemiology of Diabetes Interventions and Complications (1)
DCCTにより、よい血糖コントロールが合併症の発症・進行の防止に役立つことが明らかになりましたが、この効果がその後も持続するかどうかを調べるために行なわれた研究です。
EDICはDCCT終了後に、従来療法群だった患者さんにも強化療法を開始するよう勧めて、その後の経過を長期間にわたり観察した研究です。ここでは4年目までの結果をまとめた報告について解説します。
解説:加藤 昌之  財団法人 国際協力医学研究振興財団 室長・主任研究員*
    *執筆当時(現在の所属:一般財団法人 東京社会保健協会 フィオーレ健診クリニック)
監修:野田 光彦  国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部長*
    *執筆当時(現在の所属:埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科 教授)
2006年09月
研究目的
 よい血糖コントロールによる合併症の発症・進行抑制効果が、その後も持続するかどうかを調べる。

研究の対象
 DCCT終了後、従来療法群だった患者さんにも強化療法を開始するよう勧めて、全患者さんは主治医のもとに戻りました。このうちDCCTで従来療法群だった患者さん688人と強化療法群だった患者さん687人の計1375人を対象として行なわれました。

研究の方法
 患者さんの経過を、DCCT終了時から引き続いて4年間観察し、合併症の現れ方や血糖コントロールの状態などを比較しました。

研究期間
 1994年〜。

結果の概要
 DCCT期間中についた両群間のHbA1cの差は、1年目で小さくなりその後もあまり差がない状態が続きました。しかし網膜症が悪化した患者さんや尿中アルブミンが増加した患者さんはDCCTで強化療法だった群で有意に抑制されていました。
 研究結果をもう少し細かくみてみましょう。

血糖コントロール
 4年目には強化療法群だった患者さんの95%と従来療法群だった患者さんの75%が強化療法を行なっていました。
 DCCT開始時点での患者さんのHbA1cは両群とも約9%でしたが、DCCT期間中に強化療法群は血糖コントロールが改善し、EDIC開始時(DCCT終了時)には両群のHbA1cの中央値は強化療法群で7.2%、従来療法群で9.1%でした。EDIC開始後両群の差は小さくなり、1年後には強化療法だった群で7.7%、従来療法だった群で8.1%となり、その後も統計的には有意ではあるもののあまり差のない状態が続きました。
 EDICの4年間で平均したHbA1cは強化療法だった群で7.9%、従来療法だった群で8.2%でした(図1)

図1 HbA1cの推移

箱は25〜75%点の範囲、横棒は中央値、+は平均値

網膜症
図2 網膜症が悪化した患者さんの割合

 EDIC 4年目に検査を受けた1208名を対象に、網膜症の進行状態をDCCTと同様に評価しました。
 EDIC 4年目ではDCCT開始時と比較して網膜症の悪化が見られた患者さんは従来療法だった群で49%、強化療法だった群で18%となり、DCCT終了時の網膜症の程度を調整すると強化療法だった群で75%のリスク低下が見られました。また増殖網膜症、黄斑浮腫、光凝固のいずれについても強化療法だった群で有意なリスク低下が見られました(図2)
 DCCTでの強化療法の、EDIC期間中の効果をよりはっきりと見るために、DCCT終了時からの網膜症の悪化で見たものが表1です。網膜症が悪化した患者さんは、従来療法だった群で581名中21%、強化療法だった群で596名中6%でした。DCCT終了時の網膜症の程度によらず、強化療法だった群でリスクの低下が認められ、DCCT終了時の網膜症の程度を調整すると全体では72%のリスク低下が見られました。
 1〜3年目までの検査を受けた患者さんを含めて、網膜症の悪化を1年ごとに見てみると、従来療法だった群と強化療法だった群の差は年ごとに開いていき、4年目では強化療法だった群で70%のリスク低下となっていました(図3)
 網膜症の悪化の内容を詳しく見たものが表2です。例えば重度の非増殖性網膜症以上に悪化した人は従来療法だった群で556名中10%、強化療法だった群で589名中2%であり、DCCT終了時の網膜症の程度を調整すると76%のリスク低下が見られました。
 EDICの4年間でレーザー治療が必要になったのは従来療法だった群で6%だったのに対して、強化療法だった群ではわずか1%でした。

表1 DCCT終了時からEDIC開始4年目までの網膜症の進行
(DCCT終了時の網膜症の病期別)

DCCT 終了時の網膜症の病期患者数※1網膜症の進行した患者
さんの割合(%)※2
リスクの減少(%)※3
(95%信頼区間)
全病期75(64〜83) p<0.001*
 従来療法群58121 
強化療法群596 6
網膜症なし66(26〜84) p=0.006
 従来療法群10916 
強化療法群173 6
毛細血管瘤のみ76(49〜88) p<0.001
 従来療法群18414 
強化療法群233 4
軽度の非増殖性網膜症83(60〜93) p<0.001
 従来療法群17819 
強化療法群132 4
中等度以上の非増殖性網膜症60(18〜80) p=0.012
 従来療法群11042 
強化療法群 5822
調整後※472(59〜81) p<0.001

※1DCCT期間中にレーザー治療を受けた患者は除外した
※2DCCT終了時からEDIC4年目までに、3段階以上進行した場合に‘網膜症の進行’と判定した
※3従来療法群に対する強化療法群のリスク減少率
※4DCCT終了時の網膜症の重症度を調整

表2 DCCT終了時からEDIC開始4年目までの網膜症の進行
(網膜症の各病期への進行)

網膜症の病期患者数各病期へ進行した  
患者さんの割合(%)
リスクの減少(%)
(95%信頼区間)
重度の非増殖性網膜症76(52〜88) p<0.001
 従来療法群55610 
強化療法群589 2
増殖性網膜症74(46〜87) p<0.006
 従来療法群564 9 
強化療法群590 2
臨床的に有意な黄斑浮腫77(52〜89) p<0.001
 従来療法群564 8 
強化療法群582 2
レーザー治療77(45〜91) p=0.002
 従来療法群544 6 
強化療法群575 1

DCCT終了時点での網膜症の重症度を調整した、従来療法群に対する強化療法群のリスク減少率

図3 DCCT終了時からの網膜症の累積進行率

腎症
 EDIC3〜4年目に検査を受けた1302名を対象に、尿中アルブミンとクレアチニンクリアランスを評価しました。
 微量アルブミン尿(1日の尿中アルブミン排泄量が40mg以上〈毎分28μg以上〉)に進行した患者さんは、従来療法だった群で573名中11%、強化療法だった群で601名中5%となり、53%のリスクの低下を認めました。
 アルブミン尿(1日の尿中アルブミン排泄量が300mg以上〈毎分208μg以上〉)の発症も、強化療法だった群で86%のリスクの低下を認め、DCCT終了時に正常アルブミン排泄(1日の尿中アルブミン排泄量が40mg未満)だった患者さんと微量アルブミン尿だった患者さんで同様の結果でした。クレアチニンクリアランスが低下した患者さんは両群ともほとんどいませんでした。(表3)

網膜症悪化と血糖コントロールとの関係
 両群ともEDIC期間中の網膜症の悪化はDCCTとEDIC期間中のHbA1cと関係していました。網膜症悪化のリスクはHbA1cが1%上がるごとに、従来療法だった群では2.8倍ずつ、強化療法だった群では2.6倍ずつ上昇していました。

表3 DCCT終了時からEDIC開始4年目までの腎症の進行

腎臓の病期※1患者数各状態へ進行した患者さんの割合(%)リスクの減少(%)※2
(95%信頼区間)
微量アルブミン尿
(尿中アルブミン排泄率>28μg/分)
53(26〜70) p=0.002
 従来療法群57311 
強化療法群601 5
アルブミン尿
(尿中アルブミン排泄率>208μg/分)
86(60〜95) p<0.001
 全患者
 従来療法群637 5 
強化療法群639 1
DCCT終了時に尿中アルブミン排泄率が28μg/分未満92(39〜99) p<0.001
 従来療法群573 2 
強化療法群601 0
DCCT終了時に尿中アルブミン排泄率が29〜208μg/分80(27〜95) p=0.006
 従来療法群64 31 
強化療法群38 8

※1測定はEDIC開始3年目と4年目に実施(各年それぞれ患者数の約50%ずつを測定)
※2DCCT終了時点での尿中アルブミン排泄率で調整した旧従来療法群に対する旧強化療法群のリスク減少率

研究結果がもたらしたもの
 DCCTで従来療法だった群と強化療法だった群の血糖コントロールは、EDICの期間中はあまり差がありませんでした。DCCTでは強化療法群で著明な合併症抑制が見られましたが、合併症抑制の程度は血糖コントロールと関係していたため、血糖コントロールにあまり差がなかったEDICでは合併症発症の差も小さくなることが予想されました。しかし、予想に反して、DCCTで強化療法だった群ではその後のEDIC期間中も合併症が少ない状態が続きました。強化療法群ではDCCT終了時に7.2%だったHbA1cが7.9%に上昇してしまいましたが、合併症抑制効果はDCCT期間中と同様に維持されていました。一方従来療法群ではHbA1cが9.1%から8.2%に改善したにもかかわらず、DCCT期間中と比べて合併症の発症は抑制されませんでした。(図2, 図3およびDCCTの網膜症発症のグラフを参照)
 DCCTでは強化療法群の合併症抑制効果は研究開始後3〜4年の間ははっきりしませんでした。今回の研究ではDCCTでの強化療法群の合併症抑制効果は、HbA1cが上昇してしまったにもかかわらず少なくとも4年間は維持されることが示されました。
 これらの研究は、血糖コントロールの結果はすぐに目に見える形で明らかにはならないが、よい血糖コントロールを続けていれば次第に効果が現れ、またその結果は長く続くことを示しています。

文献
The Diabetes Control and Complications Trial/Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications Research Group. Retinopathy and nephropathy in patients with type 1 diabetes four years after a trial of intensive therapy. The New England Journal of Medicine. 2000;342:381-389.Abstract(PubMed)

※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。

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