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2010年09月10日
運動の恩恵:肥満の遺伝体質の人にも 英国で大規模調査
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肥満の遺伝的素因のある人でも、運動を習慣として行うことで約40%を打ち消すことができるとする研究が英国で発表された。肥満に遺伝因子が深くかかわっており、両親が肥満であったり肥満になりやすい家系であると、子供も肥満になりやすい一般的に考えられているが、生活習慣を改善することで肥満を予防 できることが示された。
この研究は、運動習慣が肥満の遺伝因子にもたらす影響を評価する目的で、英国で実施された地域住民を対象とした大規模コホート研究によるもので、医学雑誌「PLoS Medicine」に8月31日に発表され
運動を続けることで肥満遺伝子の影響を打ち消すことができる
ヒトの遺伝子情報(ゲノム)は、約30億の塩基対から構成されるが、個々人でわずかな違いがある。その塩基配列の違いのうちわずかの頻度で認められるのが遺伝子多型で、そのうち一塩基だけ異なっているのが一塩基多型(SNP)。
体格指数(BMI)や肥満に関連があるとみられている12のSNPを遺伝子マーカーとし、その数を「遺伝素因スコア」におきかえて、どれだけ肥満になりやすいかを予測した。さらに、肥満遺伝子の点数と、2型糖尿病や心臓病とも関連の深いBMIや肥満リスクなどに関連付けて解析した。
その結果、肥満遺伝子のスコアは、平均的には10〜13ぐらいだったのに対し、多い人では17、少ない人では6であることがわかった。興味深いことに、肥満遺伝子は体重やBMIと関係しており、例えば身長170cmの人の場合、肥満の遺伝子変異がひとつ増えるごとに、平均で体重が445g増加していたが、運動習慣のある人では379gに抑えられ、逆に運動をしていない人では592gに増えていた。
肥満遺伝子がひとつ増えると、肥満の確率は10%以上ずつ高くなる計算になるが、運動している人ではそうでない人に比べ、肥満の危険性は40%低下するという結果になった。
研究者らは、今回の研究について「運動の重要性がいっそうあきらかになった。肥満の遺伝的な要因のある人に積極的に生活指導を行うことで、肥満を効果的に予防できるPhysical activity attenuates the Genetic Predisposition to Obesity in 20,000 Men and Women from EPIC-Norfolk Prospective Population Study
August 2010 Issue of PLoS Medicine
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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