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2006年09月27日

牛乳の栄養が見直されている

キーワード
食事療法
 牛乳はずっとからだに良い食品と考えられてきたが、最近「飲むのを控えたほうがよい」という内容の書籍が話題になった。こうした話に根拠はあるのだろうか。

 牛乳は、糖尿病の食事療法では、1日コップ1杯程度を飲むことが勧められている。間食に利用するのも良い。

 牛乳は蛋白質が豊富に含まれているだけでなく、ビタミンやミネラルを多く含んでおり、特に吸収されやすいカルシウムを多量含んでいる。日本人に不足しがちなカルシウム供給源として重要な食品とされている。

 牛乳は同時に脂肪(飽和脂肪酸)も多い。脂肪やコレステロールが増えると心臓病や脳梗塞などを起こしやすくなる。

食事療法のポイントは栄養バランスのとれた食事を続けること

日本人のカルシウムの所要量は
1日600ミリグラム(成人)
牛乳や乳製品の目標摂取量は1日130g以上とされているが、2003年度の調査では平均97gに留まっている(健康日本21)。
 肉類や乳製品などから飽和脂肪酸をとりすぎると、動脈硬化が引き起こされ、心疾患や高血圧症、脳血管障害などの病気にかかりやすくなる。米国では、病気による死亡者の7割が動物性の脂肪のとりすぎが要因と考えられており、また日本でも、糖尿病患者が増えた要因として、脂肪の摂取が増えたことが挙げられている。

 しかし、飽和脂肪酸は少なすぎても良くない。日本人を対象とした研究で、飽和脂肪酸の摂取量が特に少ない人では逆に心疾患や脳卒中にかかる割合が高くなることが確かめられた。

 また、牛乳などに含まれるカルシウムを毎日とると、大腸がんになる危険性が低下するという研究報告がある。別の研究では、70歳を超える長寿者の食生活を調査したところ、牛乳を毎日飲んでいた人が特に長寿だった。

 糖尿病の食事療法の基本は、必要なエネルギーを適切に摂取し、栄養素をバランスよく摂取するよう努めること。特定の食品が病気や健康に与える影響を過大に信じ込んだり不信感を抱かないで、量やバランスを考えながら利用するのが正しいやり方のようだ。

牛乳についてのQ&A
Q. 日本人より牛乳を多く飲む北欧諸国で骨折率が高いが、牛乳を飲むと本当に骨粗鬆症の予防になるのか?
A. 牛乳や乳製品からのカルシウム摂取が多いと、骨量の上昇と骨粗鬆症の発症を遅らせることを確かめた研究結果が国内外に多数ある。欧米人で骨折が多いのは、欧米では肉類を多く食べることや、日本人より強度の肥満が多いなど体格の違いによるものと考えられる。

Q. 高温殺菌牛乳であると、加熱することで栄養成分に影響がでるのでは?
A. 牛乳を加熱すると蛋白質は変性を起こすが、加熱温度による栄養面での差はみられない。むしろ加熱変性によって消化・吸収が高まる。低温殺菌であっても牛乳中の蛋白質はある程度変性する。

Q. 乳を搾るための牛はホルモンなどが投与されているのでは?
A. 国内では、搾乳される牛に対して抗生物質、成長ホルモンなどの薬物投与は禁止されている。衛生検査が酪農家から牛乳が出荷される時と、工場で受け入れられる時に行われており、失格になった場合は廃棄される。

Q. そもそも人間と牛は違う生物だから、牛の乳を飲むこと自体が変ではないか?
A. 合理的な考え方とはいえない。確かに牛乳はヒトの母乳とは成分が異なるが、ヒトが消化できる栄養素を含んでおり、ヒトは牛乳以外にも多様な動物性の食品を食べている。
(社)日本乳業協会資料を参考に作成

(社)日本乳業協会
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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