尿糖チェックで糖尿病コントロール

2013年10月30日

はじめに:この研究について

尿糖の出る仕組みを少し知れば、
尿糖自己測定を糖尿病のコントロールに生かせます!

 糖尿病は高血糖状態が継続する病気です。高血糖状態を改善するためには食事・運動療法、薬物療法を行う必要がありますが、これらをやみくもに行うのではなく、自分の血糖値の状態を把握しながら行うことが極めて重要となります。

 血糖値をチェックするには、血糖測定器を使用した血糖自己測定(以下略・SMBG)を行いますが、保険適用されているのは原則インスリンなどの糖尿病注射薬を行っている人のみ。それ以外の非注射療法患者さんで血糖測定器を自費購入しSMBGを行っている人は約20万人(テルモ調べ)で、ほとんどの方がSMBGを行っておらず、月々の通院時に測定するHbA1cなどを指標としているのが一般的です。

 確かにSMBGは極めて重要であることは間違いありません。当院でインスリンを使用している患者さんを無作為に2群に分けて検討してみたところ、SMBGの血糖変動を記入しグラフ化していくことで、HbA1cの改善に有効であることが証明されています。(N.Kato, M.Kato Journal of Diabetes Investigation 4:450-453,2013)しかし、一般には血糖測定を体系的に行っていない場合も多く、なかなか血糖の動きが見えないのが現状です。血糖測定システムは最近では保険薬局などで購入できるようになりましたが高価であり、採血による痛みなどもハードルとなっています。

 一方で、血糖値がある一定以上上昇すると尿に排出される尿糖出現の有無で食後高血糖を間接的に確認できる「尿糖自己測定」は、一般に市販されている試験紙を購入し、食後に尿検査をするだけという簡便さで注目されています。特に食後高血糖の把握に適していると言われています。しかし、尿糖自己測定は性質上数値が非定量的であること、尿糖がではじめる血糖の閾値は人によって異なること、血糖との相関についての研究が少ないことなどがあり、療養手段としてあまり利用されていないのが現状です。

 このようなことから今回、「尿糖自己測定」は実際どうなのか?を検証する研究を行いました。日常生活の中で患者さんに、さまざまな機器で検査を行ってもらい、食事内容や運動の有無によって血糖値はどう変動するのか、そして血糖値と尿糖値の相関はどう表れるかをみてみたのです。

 本研究の結果をご覧になるとわかりますが、尿糖検査はやはり食後の高血糖の有無を見るのに適した検査法でした。特に境界型糖尿病例や、経口血糖降下薬を服用中の比較的コントロールが悪くない患者さんに有用性が高いと言えます。しかし、実際に尿糖がでる「閾値」というものを分かってから行わないと、尿糖測定結果を有効に生かせません。

 これから3回にわたり、本研究の結果を紹介しながら尿糖自己測定の効果的な活用法について考察していきたいと思います。尿糖検査の有用性が広く理解され、より良い血糖コントロールにご活用いただけることを願っています。

主任研究者:加藤光敏(加藤内科クリニック院長)

研究者プロフィール

加藤光敏 先生 加藤 光敏 先生

加藤内科クリニック院長
加藤内科クリニックホームページ

略 歴

昭和56年3月 東京慈恵会医科大学卒業
昭和60年3月 慈恵医大・大学院博士課程卒業、慈恵医大内科助手
5月 医学博士号授与(糖尿病・高血圧合併ラットの心筋代謝研究)
10月 カナダ・オタワ大学医学部 留学
昭和62年11月 2年留学の後 カナダより帰国
平成4年5月 北京大学にて招待講演
9月 ドイツ・マールブルグ大学にて招待講演
平成5年3月 東京慈恵会医科大学・内科講師
平成6年5月 カナダにて学会招待座長
平成8年11月 加藤内科クリニック開院・院長
平成20年〜2年間 日本糖尿病療養指導士認定機構広報委員長
平成24年5月 東京都糖尿病協会副会長

資格等

日本糖尿病学会専門医・指導医・評議員、日本循環器学会認定専門医、日本循環器学会地方会・評議員、日本適応医学会・評議員、葛飾糖尿病医会会長、ヨーロッパ糖尿病学会員、日本内科学会認定医、日本医師会認定スポーツ医、日本病態栄養学会・評議員、前Human and Experimental TOXICOLOGY編集委員、日本温泉気候物理医学会・専門医、等

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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