ネットワークアンケート
糖尿病治療におけるPHRアプリの利用と活用について
血糖値、血圧、体重や治療・服薬情報などを個人で記録するためのPHR(パーソナルヘルスレコード)アプリは、患者さんの自己管理に役立ち、またデータを医療機関と共有することで、糖尿病の治療の質の向上が期待されています。しかし、スマホを使った新しい技術でもあり、高齢者には使いにくいといったことや規格が異なる様々な種類が存在していることで、有効な活用方法はまだ手探り状態といえるようです。今回は、PHRアプリの利用実態について患者さんと医療者にアンケートを実施しました。
今回のアンケートは、413名(患者さん307名、医療者106名)にご回答いただきました。糖尿病ネットワークより、国際糖尿病支援基金にお一人50円分、合計20.650円の寄付をおこないましたのでご報告申し上げます。ご協力ありがとうございました。
患者さん・ご家族に聞きました
PHRアプリの利用率は高くなく、利用していない理由は「PHRアプリを知らない」が約9割
最初に、患者さんのPHRアプリ利用率を調査した結果、「利用している」が15.3%と利用率はそれほど高くなく、PHRアプリを利用していない理由は、約9割が「PHRアプリを知らない」という回答でした。なお、年齢別のPHRアプリ利用率は、70歳代以上10.8%%、60歳代14.0%、40~50歳代20.8%、30歳未満12.5%という結果でした。また、糖尿病のタイプ別利用率では、1型の患者さん25.0%、2型の患者さん10.2%という結果でした。
PHRアプリを利用したことがありますか?
- 利用している
- 過去に利用していた
- 利用したことはないが、興味はある
- 利用していない
PHRアプリを利用していない理由を教えてください。(複数回答) n=253
PHRアプリを知らない
使い方がわからない
データ入力などが面倒くさい
PHRアプリの利用に不安がある
アプリのダウンロード方法がわからない
PHRアプリの利用に興味がない
スマートフォンを所持していない
その他
利用目的で最も多いのは「血糖管理」、次いで「体重管理」「食事記録」
次に、PHRアプリの利用目的を聞いてみました。患者さんの回答の1位は血糖管理、2位は体重管理、3位は食事記録という結果でした。 また、PHRアプリを利用するメリットを聞いたところ、1位「生活習慣や服薬状況、検査値の記録が簡単に行える」、2位「生活習慣や服薬状況、検査値が確認できる」、3位「医療機関と情報を共有できる」という結果でした。
PHRアプリをどのような目的で利用していますか?(複数回答) n=54
血糖管理
体重管理
食事管理
血圧管理
運動管理
医療機関で検査した検査値の管理
服薬管理
その他
PHRアプリを利用していてメリットだと感じていることを教えてください。(複数回答) n=54
生活習慣や服薬状況、検査値の記録が簡単に行える
生活習慣や服薬状況、検査値が確認できる
医療機関と情報を共有できる
治療のモチベーションが上がる
メリットは特に感じない
家族と情報を共有できる
その他
血糖管理におけるPHRアプリ利用のメリットの第1位は「血糖変動」の可視化
続いて、PHRアプリの利用目的で「血糖管理」と回答した患者さんに、血糖管理においてPHRアプリを利用することのメリットを聞いてみたところ、「血糖変動が確認できる」がトップで、次いで、「血糖値の記録が簡単に行える」「医療機関と情報を共有できる」という結果でした。
血糖管理においてPHRアプリを利用するメリットを教えてください。(複数回答) n=42
血糖変動が確認できる
血糖値の記録が簡単に行える
医療機関と情報を共有できる
食事・体重・服薬と照らし合わせて振り返りができる
その他
現在PHRアプリを利用してない回答者の9割は、利用に前向き
現在PHRアプリを利用していない患者さんに、「かかりつけ医療機関でPHRアプリの利用を勧められた場合、利用したいですか?」と聞いたところ、約9割が「利用したい」との回答で、PHRアプリ利用に前向きな人が多いという結果でした。
かかりつけ医療機関でPHRアプリの利用を勧められた場合、利用したいですか? n=253
得られたデータを診療等で活用するなら利用したい
利用したい
スマートフォンの操作等のサポートがあるなら利用したい
利用したくない
その他
今回の調査では、PHRアプリの利用率がそれほど高くはありませんでしたが、利用者は、「記録が簡単」「データの可視化」「医療機関と情報共有」などのメリットを感じているという結果でした。また、現在利用していない患者さんも、約9割が利用には前向きなことがわかりました。PHRアプリについてご興味がある方は一度、医師や医療スタッフに聞いてみてはいかがでしょうか?
実施時期:2023年 10月
調査方法:インターネット調査
対 象:「糖尿病ネットワーク」「糖尿病リソースガイド」メールマガジン会員
協 力:株式会社三和化学研究所
<回答者の属性>
患者さんやその家族 307名(1型糖尿病112名、2型糖尿病186名、その他の糖尿病5名、わからない4名)
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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