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2012年10月22日
運動・食事に取組むと善玉のコレステロールとアディポネクチンが増える

「Look AHEAD」は、体重コントロールがどれだけ心疾患の発症リスクに影響するかを調べた多施設ランダム化試験だ。対象となったのは、過体重や肥満の認められる2型糖尿病患者5,145人で、研究は10年間続けられた。研究チームは「Look AHEAD」の患者のデータを解析した。
「2型糖尿病の治療を受けていて体重が増えている人でも、運動を習慣化し活発に動き廻り、健康的な食事を続ければ、有益な効果を得られることがはっきりと分かった」とメソジスト心疾患予防センターセンター長のクリスティー バランタイン氏は話す。
「運動療法と食事療法を続けていれば、体の脂肪組織や心血管機能、筋肉の働きなどの機能は改善する。体重計で体重を量っただけでは、はっきりと分からないかもしれないが、体の中ではさまざまな有益な変化が起きている」としている。
アディポネクチンは、脂肪細胞が分泌する生理活性物質(アディポサイトカイン)の一種で、動脈硬化を防いだり、インスリンの働きを高める作用のある善玉物質として注目されている。
血中のHDLコレステロールとアディポネクチンの関連はすべてが解明されたわけではないが、肝臓でのHDLコレステロール合成をコントロールする経路で、アディポネクチンが大きく関わっていることが、最新の研究により分かってきた。「アディポネクチンは糖尿病患者においても、脂肪の燃焼や貯蓄に大きく関わっている」とバランタイン氏は話す。
研究では参加者を、「集中的ライフスタイル介在群」と「従来治療群」に分け比較した。ライフスタイル介在群は、積極的に運動を行い体を活発に動かし、食事療法に取り組み、カロリー摂取量を制限し、糖尿病教室に参加し療養指導の教育プログラムを受けたが、従来治療群は糖尿病教室に参加しただけだった。
研究チームは定期的に血液検査を行い、HDLコレステロールやアディポネクチンを含むさまざまなバイオマーカーの検査をしたほか、体力テストも行った。
試験開始1年後に両群を比べたところ、ライフスタイル介在群では血糖値、コレステロール値などの血清脂質、体脂肪率、体力などが平均的に大きく改善していた。悪玉されるLDLコレステロール値は変化がみられなかった一方で、アディポネクチン値およびHDLコレステロール値は改善していた。
ライフスタイル介在群では、脂肪細胞によって生産されたアディポネクチン値は約12%増加し、また、HDLコレステロールは10%増加していた。
HDLコレステロールは、増えすぎたコレステロールを回収し、また血管壁にたまったコレステロールを取り除いて、肝臓へもどす働きをする。増えすぎたLDLコレステロールが動脈硬化を促進するのとは反対に抑制する働きがあるので善玉コレステロールといわれる。
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