尿糖チェックで糖尿病コントロール
2011年07月04日
2.発表者インタビュー 4)測定データを指導に活かすには?
――尿糖測定データを見ながら、どのような指導を行っていますか?
小野澤さん:
そうですね、尿糖管理ツールがあるのですが、まずは2週間分の(尿糖チェックの)データを入れてもらいます。すると、その方の波(パターン)が見えてきます。 そして、ピークの原因を振り返っていただきます。併せて、食事や運動について記録していただいているので、その時はこうだった、だったらピークのときに少し運動を取り入れてみると、もっと下がるのでは?と、様子を聞きながら提案を交えてお話ししていきます。 安部先生:
1日の食後2時間値を見ていくと、朝、血糖が高い人、お昼に高い人、夕方が高い人と、その人によって高い時間帯が違うことがわかります。ですから、食事を基準にして1日3回の時間帯に分け、コントロールを考えていくと、どの時間帯に気をつければいいのかが見えてくるのです。 そして、血糖値が高くなる時間帯に合わせた"ワンポイントアドバイス"をすることが必要だと思います。ワンポイントでお伝えすると、「ああそうか、この時間帯を私は気をつけていればいいんだ」と納得してもらいやすい。 例えば、「夕食の時間帯の血糖コントロールがよくないなら、夕食後に歩いてみたらどうですか?」と、アドバイスする。「私は午前中が高いんだ、それなら朝食を考えて調整してみるか」、「午前中に運動してみようか」、などと改善点が具体的に見えてくる。実際、そういう経緯で朝食後に散歩を取り入れたら、血糖コントロールが大きく改善したという事例もあります。 いわゆる教科書的な生活指導だと、患者さんは嫌悪感を感じることがありますから、単に食生活に気をつけましょうという指導よりは、具体的にポイントを絞った指導の方が患者さんは理解しやすく、取り組みやすいと思います。 小野澤さん:
先生はいま運動を例に挙げましたが、一方の食事指導の場面では、食事記録で、その方の食事のパターンが見えてくるんですね。低炭水化物食を勧めているわけではないのですが、過剰な炭水化物の摂取は少し是正してあげる、というだけでも違います。特に群馬県は土地柄か、うどんやそばなどを食べる機会が多いので、副菜の組み合わせや調理法をアドバイスしています。 ――尿糖も血糖も、患者さんが測定したデータを見て、医師や医療スタッフがどのように分析し、指導に活かしていくかということがポイントですね。データの読み取りにあまり慣れていない医療スタッフは、どのように指導すればよいですか?
小野澤さん:
最初は私も、尿糖測定がどういうものかがわかりませんでした。でも、患者さんの感想を拾いあげて、それをまた次の患者さんへと、リレーのような形で広めていったというのが正直なところです。患者さんの方から、いろいろなことを教えてくれますし、改善した喜びだとか、どうして?というような疑問なども投げかけてくれますので、患者さんとともに歩んできたような感じがします。 安部先生:
いまのお話は大切だと思います。つまり、使い方がわからない人は指導に使えないわけではなくて、患者さんのデータを見て、「あれ、ここは(血糖が)上がっていますね。何かありましたか?」と訊ねるための情報源と考えてください。 ――指導のきっかけになるわけですね 安部先生:
そうです。「思い当たることはないですか?」という話ができますよね。患者さんと一緒に1週間分のデータを検討してみると、そういった疑問が出てきます。患者さんが「なんで上がっているんだろう?」と考え始めれば、もうその患者さんは次に行けるのです。 指導者側が、こうするべき、ああするべきと言う前に、「もしかしたら、あれのせいかもしれない」と思い当たることが出てくるきっかけになります。「そういうときは、いつも果物食べてしまうからかな」、「このときは、孫が来ていて、ケーキ食べたから」ということがわかってしまえば、それで(血糖値が)上がるんだと理解できるわけです。 ですから、医療スタッフに知っていて欲しいのは、尿糖測定器の使い方・見方を勉強し、先に活用のしかたなどマスターしておかなければ使えないというものではないのです。まずは、患者さんと尿糖測定にチャレンジしてみて、そこで患者さんたちが持ってきた数値を一緒に眺めてみるだけでいいんです。そうすると、自然に話が進んでいきますから。そういうことの積み重ねが蓄積され、指導に活かされていきます。
そうですね、尿糖管理ツールがあるのですが、まずは2週間分の(尿糖チェックの)データを入れてもらいます。すると、その方の波(パターン)が見えてきます。 そして、ピークの原因を振り返っていただきます。併せて、食事や運動について記録していただいているので、その時はこうだった、だったらピークのときに少し運動を取り入れてみると、もっと下がるのでは?と、様子を聞きながら提案を交えてお話ししていきます。 安部先生:
1日の食後2時間値を見ていくと、朝、血糖が高い人、お昼に高い人、夕方が高い人と、その人によって高い時間帯が違うことがわかります。ですから、食事を基準にして1日3回の時間帯に分け、コントロールを考えていくと、どの時間帯に気をつければいいのかが見えてくるのです。 そして、血糖値が高くなる時間帯に合わせた"ワンポイントアドバイス"をすることが必要だと思います。ワンポイントでお伝えすると、「ああそうか、この時間帯を私は気をつけていればいいんだ」と納得してもらいやすい。 例えば、「夕食の時間帯の血糖コントロールがよくないなら、夕食後に歩いてみたらどうですか?」と、アドバイスする。「私は午前中が高いんだ、それなら朝食を考えて調整してみるか」、「午前中に運動してみようか」、などと改善点が具体的に見えてくる。実際、そういう経緯で朝食後に散歩を取り入れたら、血糖コントロールが大きく改善したという事例もあります。 いわゆる教科書的な生活指導だと、患者さんは嫌悪感を感じることがありますから、単に食生活に気をつけましょうという指導よりは、具体的にポイントを絞った指導の方が患者さんは理解しやすく、取り組みやすいと思います。 小野澤さん:
先生はいま運動を例に挙げましたが、一方の食事指導の場面では、食事記録で、その方の食事のパターンが見えてくるんですね。低炭水化物食を勧めているわけではないのですが、過剰な炭水化物の摂取は少し是正してあげる、というだけでも違います。特に群馬県は土地柄か、うどんやそばなどを食べる機会が多いので、副菜の組み合わせや調理法をアドバイスしています。 ――尿糖も血糖も、患者さんが測定したデータを見て、医師や医療スタッフがどのように分析し、指導に活かしていくかということがポイントですね。データの読み取りにあまり慣れていない医療スタッフは、どのように指導すればよいですか?
最初は私も、尿糖測定がどういうものかがわかりませんでした。でも、患者さんの感想を拾いあげて、それをまた次の患者さんへと、リレーのような形で広めていったというのが正直なところです。患者さんの方から、いろいろなことを教えてくれますし、改善した喜びだとか、どうして?というような疑問なども投げかけてくれますので、患者さんとともに歩んできたような感じがします。 安部先生:
いまのお話は大切だと思います。つまり、使い方がわからない人は指導に使えないわけではなくて、患者さんのデータを見て、「あれ、ここは(血糖が)上がっていますね。何かありましたか?」と訊ねるための情報源と考えてください。 ――指導のきっかけになるわけですね 安部先生:
そうです。「思い当たることはないですか?」という話ができますよね。患者さんと一緒に1週間分のデータを検討してみると、そういった疑問が出てきます。患者さんが「なんで上がっているんだろう?」と考え始めれば、もうその患者さんは次に行けるのです。 指導者側が、こうするべき、ああするべきと言う前に、「もしかしたら、あれのせいかもしれない」と思い当たることが出てくるきっかけになります。「そういうときは、いつも果物食べてしまうからかな」、「このときは、孫が来ていて、ケーキ食べたから」ということがわかってしまえば、それで(血糖値が)上がるんだと理解できるわけです。 ですから、医療スタッフに知っていて欲しいのは、尿糖測定器の使い方・見方を勉強し、先に活用のしかたなどマスターしておかなければ使えないというものではないのです。まずは、患者さんと尿糖測定にチャレンジしてみて、そこで患者さんたちが持ってきた数値を一緒に眺めてみるだけでいいんです。そうすると、自然に話が進んでいきますから。そういうことの積み重ねが蓄積され、指導に活かされていきます。
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※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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