糖尿病セミナー

31. 痛風・高尿酸血症と糖尿病

2014年6月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
公益財団法人痛風財団理事長
鎌谷直之先生

痛風・高尿酸血症やプリン代謝について、このページの後半で詳しく解説しています。必要に応じて、そちらを先にお読みください。


痛風人口の増加と糖尿病との共通点

 戦前の日本では痛風は非常に稀な病気でしたが、戦後、社会が豊になり食糧事情の好転とともに、急に患者数が増えだしました。このために痛風のことを「ぜいたく病」とみる向きもありますが、実際には、遺伝的素因が基礎にあり、それに食習慣やストレスなどいくつかの要素が重なりあって発病する病気です。
 このあたりの事情は糖尿病とよく似ていて、現代社会では多くの人が痛風や糖尿病になります。現在、国内の痛風患者数は約30〜50万、痛風ではないものの尿酸値が高い「無症候性高尿酸血症(痛風備群)」の人は、約500万と推計されています。

高尿酸血症も合併症が怖い病気

 糖尿病は血液中のブドウ糖濃度「血糖値」が高い状態が続く病気ですが、痛風・高尿酸血症は血液中の尿酸という物質の濃度「尿酸値」が高い状態が続くのが特徴です。
 尿酸値が高い状態を「高尿酸血症」といいます。自覚症状は全くありませんが、治療せずにいると、痛風発作が起きたり、さまざまな合併症が発症・進行します。高尿酸血症は糖尿病と同じで、放置していた場合の合併症が怖い病気だということです。
 主な合併症に、腎臓障害、尿路結石、動脈硬化などがあります。糖尿病との関係では、とくに動脈硬化が問題となります。動脈硬化は、心臓病や脳血管障害などを起こして生命に危険に及ぼしたり、身体に障害を残す原因となる恐ろしい病気です。糖尿病も動脈硬化の大きな危険因子ですので、尿酸値と血糖値が高い人は、分な注意が必要です。
糖尿病と高尿酸血症の比較

高尿酸血症と糖尿病は併発しやすい

 高尿酸血症は、遺伝的に尿酸値が高くなりやすい体質があり、それにさまざまな生活習慣が加わることで発病します。尿酸値が上がりやすい生活習慣とは、過食やアルコールの飲みすぎ、運動不足、それによる肥満、精神的ストレスなどです。
 お気づきのように、これらは糖尿病を招く習慣と、ほぼ同じような内容です。事実、糖尿病の人は尿酸値が高い人が多く、また、高尿酸血症の人は糖尿病や耐糖障害になりやすいのです。逆にいえば、高尿酸血症を治療することは糖尿病の防・治療につながりますし、糖尿病の食事・運動療法は、尿酸値にも良い影響を与えます。
※耐糖障害
 糖尿病と診断されるほどの高血糖ではないものの、血糖変動が正常でない状態。糖尿病備群。ブドウ糖負荷試験の2時間値が140〜199mg/dLの場合をいいます。


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