糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2006年11月01日

2. 糖尿病で性機能障害になる人、ならない人

E. 糖尿病の患者さんにEDが起こる、その他の原因

 糖尿病患者さんのEDの二大原因は血管障害と神経障害であることは、すでにご理解いただいたと思いますが、この二つ以外にも、EDの原因がいくつかあります。これらが単独で、または複数の原因が重なって、EDを引き起こしたり、症状を悪化させます。

a. 男性ホルモンの分泌量の減少

 EDが起きる直接的な原因は、血管障害と神経障害によって、陰茎海綿体に血液を溜める機能が衰えることですが、そうした勃起現象が起こる一つ手前の段階に、原因があるケースもあります。わかりやすく言えば、性欲の低下です。性欲が起こらなければ、性的な刺激が脳から陰茎に伝わることもなく、勃起は起こりません。

 では、どんなときに性欲が低下するのかというと、それにもいろいろ原因があるのですが、糖尿病の患者さんに限ってみた場合、男性ホルモンの一つ「テストステロン」の分泌量の低下が関係していることがよくあります。

 糖尿病でなぜテストステロンの分泌が低下するのか、その理由はよくわかっていません。しかし、血糖値が高い状態のときにテストステロンの分泌量が減ることが、示されています。また近年、医学的かつ社会的にも注目されているメタボリックシンドロームの基盤といえる、内臓脂肪型肥満(おなかがぽっこり出っ張っている体型の肥満)でも、テストステロンの分泌量減少が指摘されています。糖尿病の患者さんは、メタボリックシンドロームに該当することが多く、それによるテストステロン分泌への影響も考えられます。

 男性ホルモンであるテストステロンが減少すると、当然、性欲が衰え勃起機能が低下します。また、テストステロンは、動脈血管の拡張にも関係していて、その分泌が減ると、動脈が拡張しにくく、つまり、陰茎の場合は海綿体に血液が溜まりにくい状況になることが、近年わかってきました。

※メタボリックシンドローム:内臓周辺に脂肪が過剰に溜まることが原因で、血糖値や血圧、血清脂質(中性脂肪やコレステロール)といった検査値が、複数同時に異常値を示す状態。それぞれの検査値は単独ではさほど悪くないものの、複数の異常が重なることで、動脈硬化の進行スピードが加速され、心筋梗塞や脳卒中になりやすくなります。

b. 心理的なこと

 EDの原因の一つに性欲の低下があり、性欲が低下する原因の一つが、前のページで述べた男性ホルモン(テストステロン)の減少なのですが、そのほかにも、性欲が低下する理由はあります。例えば、悩みごとや不安などの心理的なことから性欲が低下することがあります。

 糖尿病の患者さんは、日々の治療(食事療法や運動療法、薬物療法)継続の必要性、低血糖の不安、合併症の症状など、糖尿病でない人にはわからない、さまざまなな心理的な重荷を抱えています。そのために、うつの傾向がみられる患者さんも少なくありません。糖尿病患者さんの2〜3割にうつ傾向がみられる、という統計もあるくらいです。

 そのように、心にストレスを抱えていることも、EDを引き起こす原因となります。

c. 服用中の薬の影響(副作用)


ED治療には、現在服用中の薬の副作用のチェックも必要です

 糖尿病の患者さんは、高血圧や高脂血症の薬、心臓の薬など、複数の薬を処方されていることが少なくありません。そういった薬の中には、勃起機能を低下させる作用があるものもあります。つまり、薬の副作用によるEDです。

 少し前まで、どんな薬にEDの副作用があるのか、よくわかっていませんでした。ED治療の大切さが社会的に認知されていなかったため、患者さんが副作用でEDになっても、それを医師に伝えられず、副作用の情報が集まりにくい状況だったからです。

 しかし、EDの研究が進み、その治療が一般的になってきたことで、EDの副作用がある薬の種類が、次第に明らかになってきました。そして、今では、さきほど挙げましたような、高血圧など、処方される頻度の高い薬の中にも、EDになりやすくするものが結構あることがわかっています。

 薬の副作用によるEDの場合は、薬の種類の変更が可能であれば、それによって治る可能性が高いと言えます。ですからED治療を始める際には、現在服用中の薬のチェックも必要です。

[ DM-NET ]

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