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2011年10月31日

医師や看護師、保健師などのチーム医療 診療報酬で評価 厚労省が提案

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 厚生労働省は、10月26日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、医師や看護師、保健師など多職種のスタッフが協力して、糖尿病の外来患者に重点的な医学管理を行った場合に、診療報酬改定で評価することを提案した。
チーム医療による早期対応が糖尿病の重症化を防ぐ
 糖尿病が強く疑われる人と糖尿病の可能性が否定できない人の合計は、1997年からの2007年の10年間で1370万人から2210万人に増えた。糖尿病患者の割合は2002年は7人に1人だったのが、2007年は5人に1人に上昇した。

 糖尿病で通院治療を続けている患者数は約490万人。うち100万人を4000人の専門医が、390万人が非専門医が診療している。糖尿病を原疾患とする透析患者の数も急増している。透析導入患者の原疾患は、1998年以降は糖尿病性腎症がもっとも多くなっており、2010年は43.5%が糖尿病性腎症が原疾患となっている。

 患者数の増加に合わせて糖尿病の医療費も急増している。患者1人当たり年間医療費数百万円に上り、日本全体の糖尿病関連医療費は、あきらかなものだけで2兆円に上る。症状が進行して透析治療が必要になると、1人当たり年500万円規模の医療費がかかる。

 中医協総会では、多職種のチーム医療による早期からの対応により糖尿病の重症化を防ぐ取組みが、治療効果の改善と患者のQOL向上、医療費の抑制につながるとの意見が出された。今後、検討を重ねていく予定。

 意見交換では、「糖尿病患者の外来で、医師や看護師、保健師などが連携して重点的に支援を行うことで、長期的には体重、HbA1cなどが改善され、投薬量が減少または維持されている人の割合が大きくなることが見込まれる。また、透析への移行が減少する可能性がある」と述べられ、こうした取り組みへの評価に期待感が示された。

重点支援で検査値が改善 投薬量も減少
 治療中の者に対する保健指導の効果に関するワーキンググループは、国保直診施設10ヵ所で高血圧、脂質異常症、糖尿病で治療中でコントロール不良の患者を対象に、保健指導による健康状態の改善効果を調査した。

 重点支援群では、通常の診療に加え、事務局の指導プロトコールに基づき6ヵ月間の支援プログラムを実施、その後、3ヵ月に1回面接による支援を実施し、1.5年間支援が継続された。

 その結果、重点支援群の方が、投薬量が減少・維持されている患者の割合が大きく、検査値は改善または良好な値で維持されることがあきらかになった。

 医療費について、外来医療費及び調剤費の増加幅は、重点支援群の方が、通常支援群よりも低く抑えられるという結果になった。

 また、カレスサッポロ北光記念クリニックによる「生活習慣病改善プログラム」の取り組みでは、2007年1月〜2009年12月の3年間で生活習慣病改善プログラムに参加した患者141人に対し、医師、看護師・保健師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士が、3ヵ月の教育プログラムと4ヵ月目以降の継続プログラムを協議・共同して実施した(生活習慣病管理料算定)。

 糖尿病の判断基準となるHbA1cの値は、プログラムを終了した72人のうち61人(84.7%)で低下し、肥満度を示すBMI(体格指数)も89人中50人(56.2%)で下がった。総コレステロールや中性脂肪、LDLコレステロールなどの値にも改善が認められた。

 生活習慣管理では、指導対象となった患者の99%で「間食をやめる」、「3食を食べる」といった食習慣の改善が、95%で「毎日1万歩の歩行目標」「散歩の日課」といった運動習慣の改善が示された。

 協議会では、「糖尿病患者に対し、外来において、医師や看護師、保健師などが連携して重点的に支援を行うことで、長期的に体重、HbA1c等が改善され、投薬量が減少または維持されている患者の比率が上昇することが見込まれる。また、透析への移行が減少する可能性がある」と結論付けられた。

糖尿病に関する指導管理の主な評価

 診療報酬項目算定対象点数対象施設
投薬 特定疾患処方管理加算
(処方料、処方せん料の加算)
(プライマリ機能を担う地域のかかりけ医が総合的に病態分析を行い、それに基づく処方管理を評価したもの)
・ 糖尿病等の疾患をもつ入院中の患者以外の患者に対して処方を行った場合 65点/月
(28日間以上の処方)
又は
18点/月2回
診療所
病院
(200床未満)
医学管理等 特定疾患療養管理料
(プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したもの)
・ 治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合に、月に2回に限り算定 診療所 225点
病院(100床未満) 147点
病院(200床未満) 87点
診療所
病院
(200床未満)
生活習慣病管理料
※糖尿病合併症管理料以外の医学管理等、検査、投薬、注射、病理診断の費用は、生活習慣病管理料に含まれる。
・ 患者の同意を得て治療計画を策定し、当該治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定(入院中の患者を除く)
・ 治療計画を策定し、当該治療計画に基づき、服薬、運動、休養、栄養、喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合
(別途療養計画書有り)
処方せんを交付する場合 800点/月
処方せんを交付しない場合 1200点/月
診療所
病院
(200床未満)
糖尿病合併症管理料 ・ 糖尿病足病変ハイリスク要因を有し、医師が糖尿病足病変に関する指導の必要性があると認めた入院中の患者以外の患者に対して、医師又は医師の指示に基づき看護師が当該指導を行った場合に、月1回に限り算定する。 170点/月 診療所
病院
外来・入院栄養食事指導料 ・ 糖尿食等の特別食を必要とするものに対し、医師の指示に基づき管理栄養士が具体的な献立によって指導を行った場合に、月1回(入院中は2 回)に限り算定する。 130点 診療所
病院
※特定疾患:悪性新生物、糖尿病、高血圧性疾患、胃潰瘍等

第202回中央社会保険医療協議会総会(厚生労働省)
治療中の者に対する保健指導の効果に関するワーキンググループ報告書(厚生労働省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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