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2008年08月29日

たばこの害 禁煙して動脈硬化と合併症を予防

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 7月から全国で、たばこ自販機用の成人識別カード「タスポ」が導入された。たばこ増税の議論も本格的に始まっている。

 喫煙は肺がんの重大な危険因子となるが、影響するのは肺だけでない。たばこにより体に入った有害物質は、血液などを通じて全身に運ばれ、煙は食道を通り胃にも運ばれる。たばこによりほぼすべての部位のがんの発症が増える。
腎症や合併症を引き起こす原因にも
 糖尿病の人にとって、たばこは最悪といっていい。たばこはがんの原因となるだけでなく、血管が収縮し血圧が上がる、心拍数が増える、酸素不足を引き起こすといったさまざまな弊害がある。

喫煙によって死亡リスクは高くなる
倍率は吸わない場合との比較

厚生労働省研究班調べ


医師48、看護師45、薬剤師31、管理栄養士・栄養士20、その他25、うち糖尿病療養指導士50
糖尿病ネットワーク調べ、2005年8月

 こうした要因がからみあい動脈硬化の進行がさらに早まる。呼吸器や血管の障害、それにより引き起こされる脳卒中や心筋梗塞、下肢動脈閉塞にもつながる。

 喫煙により糖尿病合併症の発症も増える。糖尿病腎症の発症リスクが約2倍に高まるという日本の調査結果が出ている。

禁煙はいまからでも遅くない
 たばこに含まれるおよそ4000種類の化学物質のうち、ニコチンはたばこをやめられない主な原因となる。中枢神経に作用しリラックスできるのは、この物質のせい。しかしニコチンには、心臓などの血管を急に収縮させる作用がある。循環器、消化器、呼吸器などにも悪影響を及ぼす。

 また、タールに含まれる化学物質のうち40種以上に発がん作用がある。たばこの煙に含まれる一酸化炭素は、ヘモグロビンによる酸素運搬を妨げ、酸素運搬する血液の機能を低下させ、組織の酸素欠乏をもたらす

 たばこによる直接の経済的損失も無視できない。20本300円のたばこを1日15本、10年にわたり吸い続けている人の、たばこ代は82万1,250円。たばこを吸わなければ、もっと有効な使い道があったかもしれない。

 禁煙外来などの取り組みをしている医療機関は増えている。「禁煙したいがどうしてもやめられない」という人は、主治医や医療スタッフに相談してみてはどうだろう。

たばこ1箱1000円なら7割以上が禁煙
 禁煙者の増加をはかろうと、各政党などはたばこ価格の欧米並み引き上げを議論している。たばこの価格が高くなれば、たばこを吸うのをやめるだろうという考えだ。

 人材派遣大手のパソナグループが、禁煙について街頭とインターネットを使いアンケート調査を行った。10代、20代を中心に男女計212人から回答を得た。

 それによると、「たばこ価格が1箱1000円になったら喫煙を続けるか」との質問に、喫煙者の4割以上は「すぐに禁煙する」と回答し、3割は「本数を減らし、いずれ禁煙する」と回答した。

 日本のたばこの価格は先進国でも目立って低い。海外では、たばこ消費を削減するために価格を引き上げた例が多い。例えば、英国は1970年代に、たばこの価格を2倍以上、日本の平均的な価格の約4倍にした。販売価格の7割以上はたばこ税や消費税などが占める。

Tobacco Free*Japan:ニッポンの「たばこ政策」
日本と米国の研究者が協力して作成した日本のたばこ政策への「勧告」。
関連情報
糖尿病でたばこを吸う人の腎症発症率は2倍に
受動喫煙は糖尿病にも悪い
たばこの害は深刻 WHO報告書「年間540万人が死亡」
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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