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2007年08月01日
海外旅行での血糖コントロールは大丈夫?
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7月から8月にかけて海外旅行に出かける日本人は250万人を超えるという。糖尿病の療養を続けながら、仕事や観光で海外に行くという人も多い。
糖尿病であっても適切な対処を施せば、健康な人と同じように旅行ができる。しかし旅行中は、時差や気候の違い、長時間の飛行機移動、過密日程など、血糖コントロールを乱す要因が多い。また、疲労が重なるので、糖尿病以外の病気にかかりやすくなっている。
旅行前の準備は?
せっかくの海外旅行。事前に対策し旅行中にも注意をしっかり行い、楽しい時間を過ごしたい。
血糖コントロール旅行中はどうしても血糖コントロールが乱れがちになる。出発前にコントロールを良好にしておくことが必要。重症の低血糖が起きていないことも確認。 メディカルチェック
糖尿病合併症があるから旅行ができないということはないが、検査を受けて状況を把握しておく必要がある。 英文カードなど
糖尿病であることを示す英文カード*、英文で書かれた医師による病状や治療について記載した書類を準備しておくといい。具体的には主治医に相談しよう。 テロ対策で空港の手荷物検査のチェックが厳しくなっている。インスリンや医師の処方に基づく薬の持ち込みは認められるが、インスリン療法を行っている人は、医師による治療についての英文の説明書があったほうが良い。 インスリン製剤は、プレフィルド/キット製剤、カートリッジ製剤のどれであるかに関わらず、中身がインスリンであることがわかるように製薬会社の表示があることを確認。 インスリン注入器、注射針、血糖測定器、低血糖対策のブドウ糖などは、すぐに取り出せるように手元に置いておく。海外でインスリンが入手しにくい場合を考え、手荷物以外にも入れておく。
* | 社団法人日本糖尿病協会が発行する患者向けカードです。主治医もしくは糖尿病協会へお問い合わせください。 |
旅行中は無理をしない
大きな荷物は空港の宅配サービスを利用するなど、旅先での疲労を軽減する工夫を。「せっかくだから観光地をなるべく廻りたい」、「食事を残すのがもったいない」といった考え方をしないこと。
予防接種
できるだけ早めに予防接種を済ませておく。接種後に発熱などによって一時的に血糖値が乱れることもあるので注意。あらかじめ現地の衛生環境などの情報も調べよう。
米国疾病対策予防センター(CDC)はさきほど、旅行者向けの健康ガイド(イエロー・ブック)の最新版を公表した。それによると、旅先のトラブルでもっとも多いのは交通事故、次いで多いのは下痢。水が悪い地域では、食中毒、赤痢やコレラなどの感染症もある。
渡航先別の感染症の状況は、「海外感染症情報ホームページ」(厚生労働省検疫所)で公開されている。基本は、生水と生ものは避けること。料理は火を通してあるものを食べる。意外と気付きにくいが、氷、生野菜のサラダ、果物などにも注意。ミネラルウオーターは有名ブランドのものを選ぶこと。途上国では、水道水をビンやペットボトルに入れて売っていることがあるので安心はできない。
海外での病院のかかり方をあらかじめ調べておく
先進国の場合は、救急電話の番号は「外務省 海外安全ホームページ」で公開されている。途上国の場合、救急医療体制が十分に整備されていないことが多い。事前に医療機関について調べておきたい。
例えばインドの場合、大学病院、国公立病院、私立の病院・診療所などの医療機関がある。私立の病院には清潔で設備の整ったものもあるが、医療費が高い。日本出発前に海外旅行傷害保険に加入するなどの対策が望まれる。
海外旅行保険に入る際は、傷病保険の有無など適用範囲を確かめることが大切。糖尿病など旅行出発前からある病気の悪化などは適用されない場合がある。
機内食のとり方
機内の空気は乾燥しているので、脱水状態になりやすい。水は十分に補給したい。また、ふだんより酒に酔いやすいので、アルコール飲料は控えめに。
機内食は比較的、高エネルギーのものが多い。飛行時間が長くなると機内食の回数が多くなるのも心配だ。最近は糖尿病食を用意している航空会社が増えたが、利用するために24時間前までの予約が必要なことが多い。航空会社の飛行機の中の過ごし方
飛行中に特に注意したいのが、いわゆる「エコノミークラス症候群」(血栓塞栓症)だ。足のふくらはぎの静脈内に血のかたまり(血栓)ができ、肺の血管を詰まらせるというもので、機内の乾燥によるからだの脱水と、長時間動かないことが要因となる。
予防するために、水分をとることと、血行を良くする対策として、つま先の上下運動を行ったり、2〜3時間毎に歩くなどの工夫が役立つ。
糖尿病患者の旅行や、インスリン注射の調整について、下記で解説している。●糖尿病Q&A1000 - 旅行について
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所