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2006年10月26日
糖尿病患者は血圧も要チェック 進む治療薬の研究
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![]() 糖尿病と血圧について、 こちらで詳しく解説している。 |
英国で2型糖尿病患者を対象に1980年代に行われた臨床調査「UKPDS」では、食事療法や薬物療法による血糖コントロールが合併症を抑制し、さらに血圧をコントロールすることで、さらにその効果が高くなることが確かめられた。
糖尿病患者では、拡張期血圧値を10mmHg低下することで、糖尿病のすべての合併症を12%、最小血管障害を13%、心筋梗塞を11%低下させることができたという。
日本の高血圧患者の9割以上は、原因を特定することができない「本態性高血圧症」。塩分の多い食習慣、肥満、ホルモン分泌の異常、遺伝的素因など、さまざまな要因が考えられる。
治療として日常の生活習慣の改善がかかせない。塩分摂取の減少、肥満の解消、禁煙、効果的な運動などが有効とされる。血圧が十分に下がらないときは、薬による治療が始められる。より高い治療効果の得られる治療法や治療薬を開発するために、世界中で研究や開発が進められている。
CASE-Jでは、日本人のリスクの高い高血圧患者を対象に、脳卒中、心筋梗塞、腎障害、末梢動脈閉塞症などをどれだけ抑えられたかを、高血圧症の治療薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と長時間作用型カルシウム拮抗薬)によって比較検討された。試験では両方で治療効果が得られることが確かめられたが、治療開始の18カ月以降は、ARBの方が発症と死亡率をより抑制する傾向がみられた。
武田薬品工業の「ブロプレス」(一般名:カンデサルタン シレキセチル)は高血圧症の治療薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)。ブロプレスをカルシウム拮抗薬と比べたところ、糖尿病の新規発症リスクがより低下したほか、特に肥満度の高い患者の死亡リスクが低下したという。リスクの低下率は、BMI(肥満指数)22以上の患者で41%、25以上の患者で48%、27.5以上の患者では63%だった。
塩野義製薬はこの試験で、長時間作用型の降圧薬(Ca拮抗薬)である「ランデル」(一般名:塩酸エホニジピン)による治療を2年間行い比較検討し、十分な治療効果を得られたと
糖尿病の合併症のひとつである糖尿病性腎症は現在、透析を新たに始めた患者の原疾患第1位で、全体の40%以上を占めている。透析を始める人は年々増え、20年前の年間1万人台から現在は3万人を突破した。
糖尿病性腎症は自覚症状のないまま、じわじわと進行していく。早期からの治療によって、腎障害の進展を抑えることが重要となる。腎症の進行を防ぐために、血糖コントロールに加え、蛋白質や食塩の摂取を控え腎臓の負担を少なくする治療が行われる。血圧コントロールも重要だ。
腎臓は糸球体とよばれる細小血管塊が集まった組織で、この糸球体の一つひとつで、血液中の老廃物が濾過される仕組みになっている。ニューロタンは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬と呼ばれる種類で、血圧を上昇させるホルモンの働きを妨げる作用がある。糸球体から濾過の終わった血液を送り出す輸出細動脈を広げるため、結果的に糸球体内の血圧を下げることができる。
臨床試験は28カ国の1,500人以上の患者が参加して実施された。日本人患者も全体の約6%に当たる96人が参加した。その結果、透析や腎臓移植が必要となる腎不全のにリスクが28%抑制され、腎症の進行を示す微量アルブミン尿の数値が35%減少し、心不全での入院を30%減らしたという。
●詳しくは武田薬品工業(株)のサイトへ(プレスリリース)
●詳しくはグラクソ・スミスクライン(株)のサイトへ(プレスリリース)
●詳しくは塩野義製薬(株)のサイトへ(プレスリリース/PDFファイル)
●詳しくは万有製薬(株)のサイトへ
関連情報
・高血圧は積極的に治療する (糖尿病「ねほり はほり」)
・糖尿病と高血圧 (糖尿病セミナー)
・糖尿病による腎臓の病気 (糖尿病セミナー)