薬で治療を行っていても、薬と健康食品などの相互作用について正しい知識をもっていない人が多く、「健康食品には副作用がない」という先入観から健康被害が起こるおそれがあることが、三重県薬剤師会のアンケート調査で分かった。
この調査は、三重県が行っている「メディカルバレー構想」の一環として、三重県薬剤師会が県から委託を受け2004年度に行ったもの。三重県の保険薬局を訪れた顧客のうち、サプリメントや健康食品を使用している人を対象に、調査用紙による聞き取りまたは用紙の直接記入により実施した。有効回答数は5,212件。
糖尿病患者が利用している 健康食品やサプリメント
(n=347)
ビタミンE | 15.0% |
ビタミンC | 13.8% |
クロレラ | 11.8% |
ウコン | 8.6% |
カルシウム、マグネシウム | 7.5% |
コンドロイチン | 6.9% |
ローヤルゼリー | 6.1% |
アガリクス | 6.6% |
グルコサミン | 5.2% |
イチョウ葉 | 4.9% |
コエンザイムQ10 | 4.6% |
コラーゲン、セラミド | 4.0% |
納豆菌類 | 3.2% |
DHA・EPA | 2.9% |
プロポリス | 2.9% |
亜鉛 | 2.3% |
三重県薬剤師会調査
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サプリメントや健康食品の効果にどのような効果を期待しているかという質問について、全体では「健康維持」と答えた人が多く、「美肌」「栄養補助」「疲労回復」と続く。最も多かったのは「わからない」という回答で36.5%だった。「期待していない」「安心感がある」「気休め」などの意見も多く、目的意識はないが飲んでいることで満足している人が多いことが示唆された。
糖尿病患者の5%以上が、医薬品と併用することで効果があると回答
薬と薬の飲み合わせによって、薬が効きすぎて副作用が出やすくなったり、逆に薬が効かなくなったりする「医薬品相互作用」が起こることがある。相互作用は薬と薬だけでなく、薬と食べ物や飲み物などでも起こり、薬の作用が強くなったり弱くなったりすることがある。
調査では、健康食品などの過剰摂取のリスクや副作用に加えて、医薬品との相互作用などについても調べられた。全体で4,039人が健康食品を医薬品と併用しており、うち14.2%が「医薬品と一緒に併用すると効果があるように思う」と回答しており、相互作用について詳しく認知していないことを示す結果となった。
糖尿病の治療薬を服用していると回答した347人に限ると、「サプリメントや健康食品に効果がある」と考えている人は39.2%で、「わからない」と回答した人は34.9%だった。さらに、「医薬品と併用すると効果があるように思う」人が5.8%いた。実際に利用している健康食品などは、
表のようにさまざまだった。
健康食品と糖尿病の治療薬との相互作用
厚生労働省が1998年に設置した「健康食品に係る制度のあり方に関する検討会」で、健康食品は大きく2つに分けられた。ひとつは厚労省が評価した特定保健用食品(トクホ)や栄養調整食品などの「保健機能食品」
。
トクホの中の「血糖値が気になり始めた方の食品」は、食後の糖の吸収をおだやかすることで、糖尿病などの生活習慣病の一次予防に役立つとされる食品で、科学的根拠があることが認めらている。“科学的根拠がある”とは、再現性のある実験を行い得られた結果が忠実に反映されることを確かめたということ。「血糖値」トクホで関与する成分は、難消化性デキストリンや、小麦アルブミン、グァバ茶ポリフェノールなどだ
。
それ以外で、糖尿病の人を対象に宣伝や販売されているのは「一般食品」(健康食品)と分類され、医薬部外品を含む医薬品からはっきりと分けられている。関与成分もさまざまだ。そうした健康食品がからだに対して有益な作用をもっているという情報が、テレビや雑誌などで数多く紹介されいるが、その中の多くは科学的根拠がまだ十分にないものもある。また、こうした健康食品と医薬品の相互作用について、まだ調査されていないものもある
。
糖尿病患者がこうした健康食品を利用する場合は、事前に関与成分について知識をもち、血糖コントロールに
十分な注意をすることが大切だ。
糖尿病の治療薬との併用による 相互作用への注意が必要なサプリメント・健康食品
- グルコサミン
- 糖の一種で、グルコースにアミノ基が付いたアミノ糖。「関節の動きをなめらかにする」、「関節の痛みを改善する」などと言われている。適度に摂取すればおそらく安全と思われているが、血糖値、血圧、血中コレステロール、中性脂肪値の上昇などの影響が報告されているので、糖尿病、高脂血症などの患者は注意して利用することが必要。
- イチョウ葉
- 中国原産で日本でも栽培されている落葉高木で、「血液の流れを良くする」などとして古くから漢方として利用されている。血糖降下作用を強めることがあるので、血糖降下薬を服用している人は注意が必要。品質が規格化されたイチョウ葉製剤は適切に使えばおそらく安全と思われているが、規格のない粗悪品も売られているので注意が必要。
- コエンザイムQ10
- 脂質の抗酸化作用があり、細胞膜を酸化から保護しビタミンEを節約する効果がある。「活性酸素の増加を抑える」などと言われている。適度に摂取すればおそらく安全と思われているが、糖尿病の薬との併用は薬の作用が強くなる可能性があるという報告があるので注意が必要。
- EPA
- イワシなどの青魚の脂肪に含まれる必須脂肪酸のひとつ。「動脈硬化や高脂血症などの予防や改善によい」などと言われている。EPAを含んだ魚油には、血液が固まりにくくなり、出血が止まりにくくなる作用がある。まれに血糖値コントロールに影響を与えることがあると報告されている。適度に利用すればおそらく安全と思われているが、大量に摂取するのは危険。
- 亜鉛
- 医薬品との相互作用は多く知られており、1型糖尿病の患者ではHbA1c値が高くなる可能性と、血中HDL(高比重リポ蛋白)値が低くなる可能性が指摘されている。
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詳細は三重県のサイトへ
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詳細は三重県薬剤師会のサイトへ
[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所