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2012年05月15日

「どこでもMY病院」実証事業で報告書 経産省

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 経済産業省はこのほど、「どこでもMY病院」構想などの実証事業について、成果報告書を公表した。同事業は、個人の医療・健康情報を一元化し複数の医療機関で共有し効率化をはかり、生活習慣病などの予防や医療費削減につなげようというもの。
IT技術で患者の医療情報を一元管理・効率化
 PHR(パーソナルヘルスレコード)は、カルテや投薬記録、日々の健康状態などの総括的な医療情報をITによって一元化し、医療機関と個人をネットワーク化していこうというサービス。

 「どこでもMY病院」構想では、PHRを活用して、個人が自らの医療・健康情報を医療機関や薬局から電子的に受け取り、情報を管理する事業者に情報を預け、必要な時に必要な相手に対して開示できる仕組みづくりと運用にむけた環境を整備することが掲げられている。

 事業によって、参加者がさまざまな医療機関で得た自身の「医療・健康情報」を総合的に管理活用し、個人の健康意識への気づきや動機付け及び医療機関からの適切なプライマリケア・疾病予防、生活習慣病などの指導が可能になり、その結果、健康意識の向上と行動による医療費抑制につながると期待されている。

 実証事業は同省の「2010年度医療情報化促進事業」として実施。「どこでもMY病院」事業には4団体が採択され、11年4月から1年ほど実証事業を行った。

 事業で実証をしたサービスは、まず基本となるシステムを構築、実運用のなかで実用性の検証や、参加者の理解および意識向上に何が有効で関係するか、どのような情報が役に立つかの検証を行い、課題抽出および有効性を評価した。そのなかで、診療明細情報、調剤情報と健康保険組合・個人健診情報、家で計測される個人バイタル情報の共通IDで一元管理し、医療従事者が「診療」や「保健指導」などに、より効果的に使えるシステム・環境開発、検証を行った。

 PHRの目的の1つは、健康状態の可視化。自分の健康情報が手軽に見られるようになると健康への意識が高まり、医療機関や健康サービスとの日常的なつながりは慢性疾病や生活習慣病の自己予防・ケアを支援すると考えられる。家族の健康状態を知りたい場合やセカンドオピニオンを受診する場合にも、PHRは有効となる。

 事業の成果は、病院、診療所、薬局、健康管理センター、個人の間で、診療明細情報や調剤情報、健診情報および個人のバイタル情報(体重、血圧、歩数)を個人の承認のもと、入力・参照できる仕組みとデータベースを構築したこと。

 病院・診療所では、個人が病院・診療所を受診したとき、会計窓口に設置した端末を通じて診療明細の電子化情報を「MY病院サーバ」に送ることを可能とした。医療機関は患者の診療歴、薬歴、定期健診での状態を把握し、診療に役立てることができ、その結果慢性疾患患者の継続的指導や継続フォローアップのほか、地域医療でのデータ連携も期待できる。

 薬局に参加者が来局したときは、受付端末を通じてお薬手帳相当の調剤情報を「MY病院サーバ」に送ることができる。薬局にある専用端末に参加者カードをかざして暗証番号を入れることで個人認証ならびに参加者の同意を得たと判断し、タッチパネルで操作して送信する。

 健康保険組合組合では、過去数年間の各種健康診断情報を参照できるようにした。健康管理センターで人間ドックを受けている場合はその情報の参照も可能となる。個人が健康情報をいつでも参照でき、経年変化も含めて理解、気づきを得ることで健康意識の向上につながると考えられる。

 「どこでもMY病院」事業が普及していく上で課題として挙げられたのは、採算性の確保、個人情報保護やセキュリティなど。

 今後、PHRシステムをさらに有効なものにしていくためには、健康情報の発信元である、医療機関、健診機関、医療機器産業などの理解と協力が必要不可欠となる。個人情報保護等の課題を適切に対応し不安を払拭していくことが前提だが、積極的な参加を得られるよう、各種団体等を通じて、協力を求めていく必要があるとしている。

成長戦略の実現に向けた経済産業省の取組(進捗と今後の課題)(経済産業省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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