日常生活でからだをよく動かしている人は、そうでない人に比べ死亡リスクが3割から4割低くなることが、厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の調査研究で分かった。
調査では、岩手から沖縄まで10都府県の45歳から74歳の男女計8万3,034人を対象に、身体活動量と死亡率との関係を調べた。1995年と98年にアンケート調査を行い、2005年まで追跡した。
1日の身体活動量(METs)と死亡との関連
身体活動量の最小群を「1」とした場合の比較
L:最小群 S:第2群 T:第3群 H:最大群
運動には次のような効果がある。
- インスリン抵抗性が改善する
- 減量効果がある
- 高血圧や脂質異常症の改善に有効
- 心肺機能が向上する
- 加齢や運動不足による筋力の衰えを改善する
- 運動することで爽快感を得られる
まず、仕事や日常での運動を含めた1日の平均的な身体活動時間を、(1)肉体労働や激しいスポーツの時間、(2)歩いたり立ったりする時間、(3)座っている時間、(4)睡眠時間に分け調べた。次に、「
MET」という運動強度を示す単位に置き換え、それに運動時間をかけた「
METs・時間」に換算して算定した。
運動量に応じて男女別に4グループに分け死亡率を比べたところ、男女とも身体活動量が多いほど死亡率が低かった。もっとも多い群はもっとも少ない群に比べ、男性で約3割、女性で約4割リスクが低下していた。
死因別に詳しくみると、男性ではがんの死亡率は約2割、心疾患は約3割低下した。女性では、がんの死亡率は約3割低下した。ただし、男性の脳血管疾患では、死亡リスクの低下はみられなかった。女性の心疾患と脳血管では、死亡リスクの低下傾向がみられたが、統計的有意性はなかった。
身体活動量の低いグループでは、もともと運動ができない理由のある人も含まれる。その影響を取り除くため、研究班は研究開始から3年以内の死亡者を除いて分析したが、男女ともに死亡率が低下する傾向は変わらなかった。
運動の種類によらず日常生活でよく動いている人で死亡リスクが低くなったことについて、研究班は「生活の中で可能な方法で、よく動く時間を増やしていくことが、早死の
予防につながると考えられる」と話している。
今回の研究は米医学誌「
Annals of Epidemiology」に発表された
。
厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所