3. 運動療法のコツ(1) [基礎]

1997年5月 改訂

まずメディカルチェックを受けます

 運動はよいことばかりではなく、やり方によっては逆効果になる場合があることはすでに述べました。従って、運動を始めたいと思ったら、まず、メディカルチェックを受けて、隠れた合併症はないか、運動で注意すべきことがないかを、主治医にくわしくチェックしてもらうことが大切です。チェックは、血糖、肺機能、心電図、眼底検査、尿たんぱくや関節障害の有無など(右のイラスト参照)が中心ですが、問題がある場合、その分野の専門家の診断も必要です。このほか、しびれや痛みなど、気になる症状があればそのことを話して、病状に合った適切な運動を処方してもらいます。

どんな種類の運動が効果的ですか?

有酸素運動(エアロビクス)
 酸素を十分に取り入れることを目的とした全身運動で、治療としてもっともふさわしい運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など)。

無酸素運動(アネロビクス)
 動作を一気に行うタイプの運動のため、酸素の供給が追いつかず、治療としてはお勧めできない運動(短距離疾走など)。

 糖尿病の治療としてもっとも効果的な運動は、酸素を十分に取り入れて行う中程度の強さの運動、いわゆる有酸素運動(エアロビクス)です。エアロビクスは「酸素とともに」という意味で、酸素を十分に取り込み、血糖や脂肪を効率よく燃焼させることを目的とした、リズミカルな全身運動です。具体的にはウォーキング、ゆっくりめのジョギング、サイクリング、水泳などを、ある程度の強さを持続して行うものです。
 有酸素運動の状態を感覚的にいうと、たとえば多少息切れはするものの、人と話しながら続けられる程度の運動ということもできます。ハアハアと息切れして会話がほとんどできないのは、運動が強すぎて酸素が十分に取り込めない状態を示し、一方、歌がうたえるくらい余裕のある状態では、運動が弱すぎて治療効果が見込めません。人と会話ができる程度の運動を15分以上続けると、体の酸素消費量が増え、血糖だけでなく、脂肪もエネルギー源として使うようになるため、血糖を下げ、また、血液中の脂肪や体重も減るようになります。
 そうした運動で、とくに患者さんに人気のあるのは、手軽で道具を使わずに誰でもできる速歩、散歩、体操などです(下表参照)。なお、運動の前後は、準備運動、整理体操も忘れずにしてください。
*参考文献:糖尿病教育(三村悟郎・福満昭二 監訳)
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太田西ノ内病院糖尿病センター内科での調査
 

どの程度やるのが効果的ですか?

 結論からいうと、先にあげた速歩やジョギングなど中程度の強さの運動を、1日に15〜60分程度、食後1〜2時間以内に、週3〜5回するというのが、療法としてはベストな方法です。
 食後1〜2時間が最適というのは、血糖がもっとも高くなる時間帯だからですが、この時間でなくても、早朝や深夜、また食直後などを避ければ、いつやっても問題はありません。しかし、インスリン注射をしている人や、血糖降下薬を飲んでいる人の場合の食前の運動は、低血糖の危険があり、注意が必要です。
 また、運動の効果は翌日くらいまで持続するので、毎日続ける必要はなく、体調や天候の悪い時は休んだり1日おきにしても、インスリンの効き目を高める効果は持続します。無理して毎日続けるより、長く続けることのほうがはるかに重要です。
 運動を始めたら、最低15〜20分は続けることが、効果を高める秘訣です。これは、運動を始めて15分を境に、エネルギー消費の比率が、血糖中心から脂肪中心へと移行するためです。10分程度で中断する形の運動を繰り返すだけでは、たとえ1時間運動しても、エネルギー源として消費するのは血糖だけで、脂肪の消費にまでには至りません。従って、血糖は下がっても脂肪は減らないので、療法としての効果は半減します。
 その人にとって、もっとも効果的な運動の強さの目安は、すでに紹介した「話す、歌う、息切れする」の感覚で計る方法がありますが、もうひとつ脈拍で計る方法もあります。
インスリンや経口血糖降下薬などを使っている人は、
運動中の低血糖に注意

 胸痛、強い空腹感、ふるえ、動悸、冷汗、吐き気、目のかすみなどを感じたら、すぐに運動を中止。ブドウ糖や砂糖などをとり、十分に休養します。
 もっとも効果的な運動の強さは、その人の最大の運動強度の4〜6割といわれ、これは運動中の脈拍が1分間に 100〜(180−年齢)でおさまる範囲とされています。運動開始5分後の脈拍を10秒計り、それを6倍した数値が、先の範囲を超えた場合は、療法としての限度を超え、以下の場合は、療法としての効果が低いというように判定します。それぞれのテンポをアップダウンして、運動強度を調節します。

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