糖尿病Q&A1000

Q.966 41歳女性、主婦です。2005年10月に HbA1cが12%と診断を受け総合病院へ教育入院しました。入院中にインスリン注射の指導を受け、入院4日目から注射を始めています。途端に体重が2kg増えました。退院後もさらに2kg太りました。一番最近の HbA1Cは2006年1月に6.5%でした。血糖値は順調です。入院してから今日まで間食は一切摂っていません。酒、タバコもしません。自分で食事を作るので、かなり気をつけて、野菜中心の食事を心がけています。ごはんも毎回秤に乗せて食べています。

 お二人から、低血糖を起こすことの弊害について質問がありました。
 幼少期に重度の低血糖を繰り返すと発達に影響があるのではないかとする意見はありますが、成長期を過ぎた後に低血糖を繰り返した場合はどうかについては、わかっていません。わかっていない理由は、1型糖尿病の患者さんが血糖値をしっかりコントロールし糖尿病でない人と同じような寿命を全うできるようになったのは最近のことで、両者で比較するにも統計的に難しいことが挙げられます。また、インスリン製剤の種類が増え、簡便な血糖自己測定が普及し治療のレベルが向上したことで、障害が心配されるほどの重度の低血糖をたびたび起こすということが減りつつあるという現状もあります。
 現在の医学的な考え方としては、軽い低血糖、ご自身で対処できるくらいの低血糖であれば問題ないとするのが、コンセンサスと言って良いと思います。少なくとも最初の方のご質問の「高血糖によって眼底出血や糖尿病性腎症になる割合に比べて多いか?」については、はっきり「そうでない」と否定できます。
 もし、昏睡に至るような低血糖をたびたび起こすとしたら、痴呆の頻度を増やすかどうかという問題の前に、糖尿病の治療として問題があります。重症低血糖には必ずなにか原因があるのですから、それを見つけてきちんと対処することが第一です。
 最初の方はご質問の中で「自分でも低血糖により脳の働きが悪くなりやすいのはたびたび感じていた」とも書かれていますが、これは脳の細胞へのブドウ糖供給が不足しているときの一時的な症状ですから、痴呆とは別です。
 お二人のご質問とは関係ありませんが、一部の民間療法の宣伝文句で、インスリン注射の副作用を強調するために低血糖の怖さを過剰に表現したものがあることも知っておいてください。また、痴呆のタイプの一つに脳血管性痴呆というタイプがあり、この脳血管性痴呆の危険因子は動脈硬化の危険因子と重なり、糖尿病(長年の高血糖)も関わってくる可能性があります。
 なお、ここではご質問の流れから「痴呆症」という用語をそのまま用いましたが、現在では「認知症」または「認知機能障害」というようになりました。
2006年05月24日

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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