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エクアドルのガブリエラさん

 南米エクアドルで糖尿病患者さんを支援する Fundacion aprendido Vivir con Diabetes(FUVIDA)より、現地の糖尿病患者さんのレポートが届きましたので、ご紹介します。

 国際糖尿病支援基金はFUVIDAの活動に賛同し、 インスリン・フォー・ライフ(IFL)を通じて支援しています。



 私はガブリエラです。息子の名前はアドリアンです。
アドリアンは約4年半前 8歳の時に1型糖尿病を発症しました。私は当時幼かった息子が糖尿病を患うなんて想像もしていませんでした。なぜなら、糖尿病は大人がかかる病気だと思っていたからです。

 糖尿病と診断される前、アドリアンにいろいろな異変が現れました。体重の減少、異常な空腹感、喉の渇き、甘い口臭などです。 それらの異変の原因が特定の病気によるものではないかと思い、インターネットで調べたところ、アドリアンの症状が糖尿病の典型的な症状と一致していたのです。私は大変なショックを受けました。 知らない間に糖尿病という名の黒い影が私たち家族に忍び寄り、私の大切な息子に襲いかかっていたのです。

 私はアドリアンをすぐにでも病院に連れて行き、検査を受けさせたほうがいいと思い、夫にアドリアンの症状を伝えました。 夫は最初とても驚きましたが、すぐに状況を理解し、私たちは糖尿病の疑いがある息子を抱えて病院に駆けつけました。

ガブリエラさんと息子のアドリアン君



  検査のあとでアドリアンがやはり糖尿病を発症していたことと、食後の血糖値を下げるためにその日から毎晩インスリンを注射する必要があることをお医者さまから告げられました。
私は現実を受け入れることができませんでした。お医者さまがインスリンの種類とそれぞれの作用について説明してくれているのも全く耳に入らず、ショックでただ泣き続けていました。 アドリアンはそのときまだ8歳でした。私にはアドリアンより年上の息子がもう1人いるのですが、その子は遺伝性の鎌状赤血球貧血症を持った状態で生まれました。 私はアドリアンの診断を告げられた診察室で涙を流しながらこう思いました。どうしてこんなにも神様は無慈悲なのだろうと。どうしてこのような人生を私にお与えになったのだろうと。 そして同時に私は身の内に怒りを覚え、神様を非難していました。

  当時の私にはわかりませんでしたが「人生で起きる全ての物事には目的があり、それらを理解するためには、心の目で見ることが大切である」と今では思うのです。

 病院を出て家に帰り、混乱と深い悲しみに押しつぶされるように私はベッドに倒れ込みました。そして腕に抱えたアドリアンに、もう二度とアドリアンの好きな食べ物を食べさせてあげることができないことと、その日から他の子どもたちとは違う生き方をしなければならないことを涙ながらに説明しました。

  その日を境に私の人生も大きく変わりました。 1年ものあいだ家からほとんど出ず、仕事も辞め、近所付き合いや地域社会との関係も一切なくなりました。 私は誰とも話をしたくなかったのです。

 そのような日々を送っていたある日、運命の出会いがあったのです。 いつものようにアドリアンを病院に連れて行くとお医者さまが診察室の外にいる女性について教えてくれたのです。その女性は小児糖尿病患者を支援する団体で活動しているということでした。 それを聞き、すぐに私はその女性に話しかけました。そしてアドリアンのことを説明しました。私の話を聞いたあとでその女性は団体の連絡先を教えてくれました。 それが私たちとFUVIDA、そしてFUVIDAの代表であるアラセリーさんとの出会いでした。

  その翌週、FUVIDAのオフィスを訪れましたが、アラセリーさんは旅行中で不在でした。オフィスの方が1型糖尿病に関する詳しい資料をくださったのですが、私は目の前の立ちはだかる現実を受け入れることが恐くてその資料を開くことができませんでした。

  それからFUVIDAを訪れることなく1年が過ぎたとき、夫と私はアドリアンの人生を変えるために再びFUVIDAを訪れました。 アドリアンには同じように糖尿病を抱えている子どもたちと共に時間を過ごすことが必要であると私たちは考えたのです。 その訪問は図らずも結果的に私たち夫婦の人生をも変えてくれました。

  FUVIDAは私たちの心の拠り所となりました。 以来、私たち夫婦は子どもたちが快適に過ごすことができるよう日々努力をしています。子どもたちが元気に、そして幸せに成長してくれることが今の私たちにとっての生き甲斐です。 私の考え方もポジティブになり、以前のように人と積極的に関わるようにもなりました。

 FUVIDAの代表、そして糖尿病教育者であり、私たち家族の心の支えでもあるアラセリーさん。彼女が私たちにしてくれたことへの感謝の気持ちを忘れることはありません。 アラセリーさんと出会えたことで私は新しい人生へと踏み出すことができたのです。

 現在、私たちはアドリアンの糖尿病を受け入れ、上手に付き合って生きていく方法を学んでいます。 健康で幸せな生活の基盤となるものは糖尿病教育を通して、糖尿病を理解することだと私は思うのです。

翻訳協力:鈴木 有 様



 エクアドルでは、糖尿病の患者さんへの支援が十分でないために、オーストラリアの「インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル」などの団体が定期的にFUVIDAへ、糖尿病療養に必要な物資を支援しています。

  【Spanish】
La historia#10 Gabriela
http://www.dm-net.co.jp/idaf/fuvida2015/lahistoria10.pdf

 国際糖尿病支援基金は、インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアを通じて、2008年よりFUVIDAの活動を支援しています。

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(2024年11月現在)

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