菜食主義の食事スタイルによって血圧を下げられることが明らかになった。この研究は、日本の国立循環器病研究センターの横山葉子氏らによるもので、「米国医師会雑誌(JAMA)内科学」に発表された。
野菜をたっぷり食べると最高血圧と最低血圧が低下
高血圧の人が適切な治療を受けないでいると、脳卒中、心筋梗塞、腎臓病などを発症しやすくなる。これらの病気は、国民の平均寿命を縮め、医療費の上昇の原因となっている。高血圧の予防・対策はとりわけ重要だ。
研究チームは、1900年~2013年に発表された18ヵ国の39件(臨床試験 7件、疫学研究 32件)の、2万1,000人以上を対象とした信頼性の高い研究を、まとめて解析する手法(メタアナリシス解析)により調査した。
菜食主義(ベジタリアニズム)は、野菜や果物、豆類、大豆などの植物性食品を好んで食べ、動物性食品を控える食事スタイル。菜食主義が血圧値にどれだけ影響するかを、研究チームは調査した。
その結果、菜食主義食によって平均して、最高血圧(収縮期血圧)は6.9mmHg、最低血圧(拡張期血圧)は4.7mmHg、それぞれ低下することが判明した。
共同で研究を行った「医師による責任ある医療委員会」(Physicians Committee for Responsible Medicine)のニール バーナード博士は、「収縮期血圧を5mmHg下げただけでも、心筋梗塞では14%、脳卒中では9%、それぞれ発症を減らすことができます。菜食主義により薬物療法と同等の効果を得られることが判明したのはすばらしいことです」と述べている。
高血圧の要因は、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸や、塩分(ナトリウム)の摂り過ぎだ。加えて、運動不足や肥満、アルコールの過剰摂取、喫煙などの要因が重なると、高血圧を発症しやすくなる。
野菜と魚を食べる食事スタイルがもっとも健康的
米国では、米国国立衛生研究所が主導して開発された「DASHダイエット」が推奨されている。DASHダイエットでは、肉類や糖質の多い高カロリー・高脂肪の食事を控え、野菜や果物、ナッツ類、豆類、魚類、低脂肪乳製品、穀類(全粒粉のパン)などを中心とした食事が、血圧を下げる効果があると考えられている。
「DASHダイエットは菜食主義と異なりますが、心臓病や脳卒中の原因となる飽和脂肪酸や塩分を控えて、野菜をたっぷり食べてビタミンや食物繊維、抗酸化物質を十分にとれるという性質は似ています。とりわけ塩分の摂り過ぎは、高血圧の原因として大きいので、そうならないように食事に注意することが必要です」と、バーナード博士は話す。
バーナード博士は次のことも指摘している。「菜食主義にもさまざまなタイプがあります。どのタイプが、高血圧対策として効果的なのかを、今後の研究で詳しく調べる必要があります」。
ロマリンダ大学が昨年6月に発表したベジタリアンに関する調査研究でも、ベジタリアンでは心臓病などの発症が少ないことが確かめられた。この研究は、約7万3,000人を平均5.8年、追跡して調査したものだ。
心筋梗塞や脳卒中、がん、腎臓病などによる死亡率がもっとも少なかったのは、野菜に加え魚類を食べる「ペスコ・ベジタリアン」だった。次いであらゆる動物性食品を食べない「ビーガン・ベジタリアン」、乳製品や卵は食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」の順に死亡率は低下した。
「どのようなタイプであっても、野菜をたくさん食べる菜食主義は、多くの人に勧められる健康的な食事スタイルです。健康的な食事に運動の習慣化を加えることで、高血圧を予防し改善することができます」と、バーナード博士は強調している。
植物性の食品を中心とする食事が血圧降下に有効(国立循環器病研究センター 2014年2月25日)
Vegetarian? Yeah, Yeah, Yeah!(医師による責任ある医療委員会 2014年2月7日)
Vegetarian Diets and Blood PressureA Meta-analysis(JAMA内科学 2014年2月24日)
[ Terahata ]