座って過ごす時間が長いことは、60歳以上の人にとりわけ危険だ。「座っている時間が長い高齢者では、身体障害のリスクが増加する」という調査結果が発表された。「座ったまま過ごす時間を少しでも減らす工夫が必要です」と、研究者は指摘している。
座ったまま過ごす時間を減らす工夫が必要
もしもあなたが60歳以上であれば、座っている時間が長いことが、障害リスクに結びつくことを知っておいた方がよい。1日の中で座ったままの時間が1時間増えただけで、障害リスクは2倍に上昇するという。「立ち上がって体を動かす時間を少しでも増やす工夫をするべきです」と、研究者はアドバイスしている。
この研究は、米ノースウェスタン大学の研究者によるもので、米全国健康・栄養調査(NHANES)に参加した60歳以上の男女2,286人から集めたデータに基づいている。調査の参加者に2002~2005年に、活動量計を身に付けてもらい、1日の身体活動を記録した。
その結果、平均して1日に9時間を座ったまま過ごしており、3.6%が身体障害をもっていることが分かった。座ったまま過ごす時間が長いと、身体障害が増えることが判明した。
ここに65歳の女性が2人いたとする。統計的には、座ったままの時間が1日13時間の女性は、12時間の女性に比べ、身体障害のリスクが50%高くなる計算になるという。
現代生活は、座ったまま過ごす時間が長く、立ったまま過ごす時間が短い。「高齢者の生活では座りがちになりますが、テレビを見る時間や、コンピュータを使うなど、座ったままの時間を少しでも減らす工夫が必要です」と、ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のドロシー ダンロップ教授(公衆衛生学)は話す。
座ったまま過ごす時間を減らすために、ダンロップ教授は以下のことを提案している。
1. 電話や仕事のミーティングなどで人と話すときは、立ったまま行う。
2. スーパーマーケットに買い物に行くときや、歩いて行ける一番遠い場所に駐車する。
3. 朝起きたときや仕事中に休憩して水を飲むときに、ついでに歩く。家やオフィスの周りを歩くことを習慣にする。
4. ちょっとした用事があるときは、車でなく徒歩で行く。
5. エレベーターやエスカレータを使わず、階段を使う(ただし、無理しすぎない)。
6. スマートフォンのアプリや歩数計などを活用して身体活動量を測定すると、立位時間を増やすための動機付けになる。インターネットを利用し仲間を作り、互いに励まし合うと効果的だ。
運動習慣があっても座位時間が長いと障害リスクは上昇
高齢化が進む米国では、食事や入浴、就寝といった日常の基本的な活動に支障が出る「ADL障害」をもつ人が増えている。こうした障害は医療コストを4倍に高め、5,600万人の生活に影響していると推定されている。
たとえ運動をする習慣をもっていたとしても、座位時間が長いと障害リスクは上昇するという。
「日常で体を動かす時間が少ないことと、運動不足は、同じことではありません。たとえ運動を習慣として続けていても、座ったまま過ごす時間が長いと、障害リスクは上昇するのです」と、ダンロップ教授は話す。
もちろん今回の研究は一時点でのデータを調べたものであり、運動不足や座位時間が長いことが直接的に身体障害につながるわけではない。
しかし、テレビを見る時間が1日6時間の人は、まったく見ない人に比べ、健康寿命が5年短くなるという調査結果も発表されている。「座ったまま過ごす時間が長いことが潜在的に障害につながることに注意するべきです」と、ダンロップ教授は強調している。
New Sitting Risk: Disability After 60(ノースウェスタン大学 2014年2月19日)
[ Terahata ]