サプリメントには、食事で摂取しにくい栄養素を補えるというメリットがある。葉酸、ビタミンB6、B12などの補給できるビタミンB複合剤は、よく利用されているサプリメントだ。ビタミンBのサプリメントを服用すると、脳卒中の発症リスクが低下するという研究が発表された。
中国の鄭州大学のシュ― ユーミン氏(神経科学)らは、5万4,913人が参加した14件のランダム化臨床試験を分析した。参加者を、ビタミンBのサプリメントを服用する群、プラセボを服用する群、少ない量のBビタミンを服用する群に分け比較した。
6ヵ月以上の調査期間中に、2,471件の脳卒中が報告された。データ解析の結果、ビタミンBのサプリメントの服用していた人では、脳卒中の発症リスクは約7%低下していた。ただし、すでに脳卒中を発症している人では、改善効果は認められなかった。
ビタミンBが健康増進に有用とされるのは、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める「ホモシステイン」という物質が体内で増えるのを防ぐ作用があるからだ。ホモシステインは、メチオニンというアミノ酸が体内で変化して作られるアミノ酸で、酸化される過程で酸素ラジカルを生じ、動脈硬化が引き起こすことが分かっている。
ホモシステインは加齢に伴い血中濃度が高まるが、血中の葉酸、ビタミンB
6、B
12などのレベルを高めると、ホモシステインが体内にたまりにくくなる。
ホモシステインは、おもに腎臓で代謝される。腎臓に障害のある人ではホモシステインが高値になり、心臓血管病変の危険因子となる場合もあるので注意が必要だ。
葉酸は、アスパラガス、枝豆、オクラ、ブロッコリー、モロヘイヤなどの緑黄色野菜に多く含まれる。ビタミンB
6とB
12は魚介類や肉類に多く含まれる。
「果物、野菜、低脂肪の乳製品、全粒穀物などをバランスよく食べることで、食事のクオリティが室が高まり、食事だけで推奨される栄養量をとれるようになります。しかし、推奨量を摂取できていない人も多くみられます。そうした人には葉酸やビタミンBなどのサプリメントが勧められます」と、ユーミン氏は話す。
葉酸やビタミンBは水溶性ビタミンなので、多くは調理の過程で失われてしまう。また、消化吸収されるまでの代謝過程でさまざまな影響を受けるため、生体利用率は50%以下と推定されている。
サプリメントであれば安定性が高く、体内で吸収・活用できる量も多い。また、葉酸、ビタミンB
6、ビタミンB
12をそれぞれ単独で摂るよりも、組み合わせてとったほうがより効果的だ。これらの栄養素を組み合わせたサプリメントは容易に入手できる。
ただし、サプリメントにはひとつの栄養素をとりすぎてしまうというデメリットもある。例えば葉酸は、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、成人の上限量は1400μg/日とされている。通常の食品から摂取する場合と異なり、サプリメントを使いすぎると容易に上限量を超えることになる。
「注意しなければならないのは、これらの栄養素の大量摂取には、弊害もあることです。葉酸の過剰摂取はビタミンB
12欠乏症を診断しにくくすることも知られており、適切な量を摂取することが大切です」(ユーミン氏)。
「ベジタリアンや動物性食品を控えている人には、ビタミンBのサプリメントを飲むことをお勧めします。ただし、足りない栄養素を補うためサプリメントを利用するときには、1日の必要量の100%を補う必要はありません。足りない栄養素の量は少しです。サプリメントを利用するときには、医師に相談することをお勧めします」と、ユーミン氏はアドバイスしている。
Can Vitamin B Supplements Help Stave Off Stroke?(米国神経学会 2013年9月18日)
Diet high in B-vitamins lowers heart risks in Japanese study(米国心臓学会 2010年4月15日)
[ Terahata ]