ハンバーガーやドーナツなど高カロリー・高脂肪の食品を食べすぎると、肥満や生活習慣病を発症しやすくなるだけでなく、メンタルヘルスの面でもうつ病が増えるなど悪影響が大きいことが明らかになった。
うつ病は世界的に増加しており、350万人が有病者だという。米国や英国では10人に1人以上がうつ病を発症しており、50〜54歳で発症する人が多いという調査結果がある。日本でもうつ病は急速に増えている。
野菜や果物、魚をよく食べる人でうつ病リスクが低下
加工肉や糖分の多い清涼飲料を大量に摂取している中高年の男性では、うつ病の発症が増える傾向があることが、東フィンランド大学の行った2件の研究で明らかになった。
「健康的な食事や運動によって、うつ病を予防できる可能性があることが、多くの研究者が指摘しています。今回の研究はそれを裏付けるものです」と、東フィンランド大学のアヌー ルースネン氏(栄養学)は言う。
過去の研究でも、うつ病を発症する人は食生活が不安定で、必要な栄養素を十分に摂取していない傾向があることが指摘されていた。今回の研究は、生活スタイルがメンタルヘルスに直接に影響することを示したものだ。
1件目の研究は、「クオピオ心臓病危険因子研究」に参加した2,000人以上の中高年の男性を対象に、13年追跡して行われた。研究チームは、参加者に食生活や食事についてアンケート調査を行い、食品頻度質問票を用いて食事内容を記録した。国立病院の退院登録よりうつ症例に関する情報も得た。
野菜、果物、ベリー類、全粒粉、魚、低脂肪チーズなどは、肥満や2型糖尿病などを予防・改善する健康的な食事とされている。こうした食事は、うつ病の予防にも効果的であることが明らかになった。
一方で、加工肉、ソーセージ、糖質の多い清涼飲料やデザート、ポテトチップなど高塩分のスナック類、高脂肪のジャンクフードをよく食べる人では、うつ病の発症が増えることが判明した。
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次は...健康的な食事や運動に取り組むとうつ病リスクが低下
健康的な食事や運動に取り組むとうつ病リスクが低下
2件目の研究は、「フィンランド糖尿病予防研究」に参加していた、過体重や肥満があり、うつ病の症状を示す中年の男女140人を対象に行われた。
被験者を無作為に抽出し、「生活介入群」と「対照群」に分けた。生活介入群には、健康的な食事をとり、運動を習慣として行ってもらい、体重減に取り組んでもらった。対照群には従来通りの生活を続けてもらった。
その結果、高カロリーのジャンクフードを食べる中高年の男性で、うつ病の発症リスクが上昇するという結果になった。
野菜や果物など多く食べる人では、特に葉酸の摂取を増やすことが、うつ病リスク減少と関連することが分かった。ホウレンソウ、ブロッコリ、アスパラガス、モロヘイヤなどの緑黄色野菜や、ナッツ類、ブルーベリーやアボカドなどの果物に葉酸は多く含まれる。
さらに、コーヒーの摂取量が多い人でも、うつ病リスクが低下する傾向がみられた。
研究の初期段階で関連が予想されていたビタミンB
12やn-3脂肪酸の摂取、n-3脂肪酸とn-6脂肪酸のバランス、コーヒーやお茶から摂取するカフェインなどは、うつ病の発症と関連がないことが示された。
うつ病と判断された場合には一般に抗うつ薬による治療が行なわれる。ただし、典型的なうつ病でも軽症の場合は薬の効果がそれほど期待できないこともある。
「今回の研究により、生活スタイルの改善というアプローチから、うつ病を改善できる可能性が示されました。食生活を健康的に変えていく取り組みは、誰でも参加でき、効果を得られやすいというメリットがあります」と、研究者は話している。
この研究は、英国栄養学会が発行する学術誌「Public Health Nutrition」や英国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetic Medicine」などに発表された。
Diet is associated with the risk of depression(2013年9月16日 東フィンランド大学)
[ Terahata ]